毎年、交通事故死亡者数はとても多いです。
万が一、身近な人間が交通事故で亡くなってしまったらどうしよう・・・
そこで、交通事故による近親者死亡の場合の慰謝料についてご説明させていただきます。
ご参考になれば幸いです。
※この記事は2017年10月11日に加筆・修正しました。
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目次
1.交通事故で死亡した場合の慰謝料の金額は?
(1)そもそも慰謝料とは?
交通事故等の場合に生じる損害は、一般に「物質的損害」と「精神的損害」の二つに分類されます。
例えば、歩行中に車とぶつかってしまった場合に壊れてしまった時計の時価や治療費などは物質的損害です。
他方、怪我をしてしまったことによる精神的な苦痛は精神的損害になります。
慰謝料とは、こうした精神的苦痛などの形のない損害に対する賠償のことをいいます。
(2)親族が亡くなった際に生じる慰謝料
親族が死亡した際
- 亡くなった方へ対する慰謝料
- 親族が持つ固有の慰謝料
が生じます。
①亡くなった方へ対する慰謝料
交通事故では、死亡した本人が加害者に対する慰謝料請求権を取得すると考えられています。
「死んだ人が金銭を請求?」と考える読者もいらっしゃいますよね。
確かに、即死した事案などでは、精神的な苦痛など生じないとも思われます。
しかし、観念的には、事故時と死亡時の間に、時間的な間隔が(わずかであっても)あると言えます。
そこで、この時間的間隔の間に、被害者が精神的苦痛を被ったと考えるのです。
そして、死亡した本人の加害者に対する慰謝料請求権は相続人に相続されることになるので、被害者の相続人は本人に成り代わり、加害者に対して慰謝料を請求できるのです。
②親族が持つ固有の慰謝料
他方、身近な人間が亡くなれば、遺された側の人間も精神的苦痛を被ることになります。
上記に対する金銭を「近親者固有の慰謝料」と呼びます。
交通事故時の「近親者」とは、法律上父親や母親、配偶者、子供となっていますが、判例上、法律で規定された近親者に近しい関係にあると認定を受けた者(例えば関係が密接な兄弟姉妹)に関しても、固有の慰謝料請求権が認められています。
(3)慰謝料金額は?
それでは、遺された者は、慰謝料をいくら貰うことが出来るのでしょうか。
ここでまず覚えて頂きたいのが、交通事故慰謝料には、3つの基準があるということです。
①自賠責基準
法令上交通事故で受傷した被害者に対して最低限の補償を行います。
②任意保険基準
保険会社が定めている基準です。
③裁判基準
過去の判例を基に作られた基準です。
賠償額は、①から③の順に高くなると言われています。
そして、裁判基準によれば、近親者が死亡した際に生じる慰謝料(死亡者本人に対する慰謝料及び近親者固有の慰謝料の両方を含む)は、死亡した者の属性ごとに、以下のとおりになります(いわゆる「赤い本」による。なお、これは一応の目安であり、具体的な事情によって増減がある)。
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2400万円 |
その他 | 2000~2200万円 |
他方、自賠責基準の場合、死亡者本人に対する慰謝料が、属性に関わらず一律で350万円になります。
近親者固有の慰謝料に関しては、被害者の父親や母親、配偶者、子供だけに対して金銭を払います。
請求権者は人数によって異なります。
- 1人だと550万円
- 2人だと650万円
- 3人以上だと750万円
なお、被害者に扶養されている家族であった場合、これに200万円が加算されます。
(4)慰謝料の他に貰える費目
なお、近親者が死亡した場合、慰謝料の他に以下の費目についても加害者へ請求できるとされています。
①逸失利益
事故がなければ得られたであろう被害者の給与や収入等。
②葬儀費用
被害者の葬儀について支出した額の賠償を請求できます。
上記の裁判基準ですと、原則150万円です。
自賠責基準では60万円ですが、立証資料などで60万円を上回るのが確定の際は、100万円の枠内で実費です。
自賠責基準によれば、60万円とされているが、立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費になります。
2.慰謝料を受け取るまでの流れは?
一般的に、加害者は任意保険に加入していると思われるので、その場合、保険会社がやり取りや慰謝料を支払うことになっています(自賠責分も含め)。
そのため、遺族が、保険会社から提示された額で納得して支払いを受ければ、それで事件は解決になります。
しかし、上述したように、保険会社が提示する金額は裁判基準より低いことが大半です。
ですので、提示額に不満があるなら、さらに話し合いを続ける必要があります。
状況によっては訴訟を提起して裁判所に判断をしてもらいます。
他方、一般的ではありませんが加害者の方が任意保険に非加入の際は、加害者自身と直接話し合いが必要です。
こうした相手は、経験則上、交渉にすらならないこともあります。
その際は、速やかに弁護士に相談し訴訟提起を検討すべきです。
なお、人身事故の被害者は「被害者請求」が可能です。
被害者請求とは、人身事故で被害に遭った方が自賠責保険会社へ直接請求をすることができる権利です。
死亡事案で被害者請求をした場合、慰謝料のほか、逸失利益等も含め、最大で3000万円が、被害者遺族に賠償されます。
これを軍資金に、訴訟を起こすというのも一つの手です。
3.もし、相続人の間で慰謝料請求の方針がまとまらない場合は?
相続人の中で一人代表者を決めて、加害者自身か保険会社と示談の話し合いを行います。
ですが、相続人の中に非協力的な人がいたりそもそも音信不通の人がいたりした際は、そうもいきません。
その際は、相手方や保険会社と単独で支払って貰うよう交渉しましょう。
なぜなら、法律上、死亡者本人の慰謝料請求権は、本人の死亡と共に各相続人に分割して相続されますし、近親者固有の慰謝料請求権はその人固有の権利なのですから、単独でも慰謝料を請求することが出来るからです(要するに、相続人全員の合意は法律上必要ない)。
とはいえ、保険会社は単独での交渉を嫌がる傾向にあります(後で相続人間の争いに巻き込まれないようにするため)。
その際は、弁護士に依頼する等して、訴訟提起も検討するのがよいでしょう。
4.死亡事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットとデメリット
それでは、近親者が死亡した際の交通事故を弁護士に依頼する場合のメリットとデメリットは何かをご説明いたします。
(1)メリット
①慰謝料額の増額が見込める
上述したように、慰謝料額には3つの基準が存在します。
そこで、加害者又はその保険会社に対し出来る限り最も高額な裁判基準で支払うよう求めるのが、交渉のセオリーとなるのだが、法律の素人がいくら「裁判基準で」と主張しても、足元を見られてしまうことが多いです。
他方、弁護士に相談すれば、ほぼ間違いなく裁判基準によることが可能になります。
このように、目に見えるメリットがある点で、交通事故は様々な法的トラブルの中でも、弁護士に依頼するメリットが大きい部類と言えるでしょう。
②面倒な手続きを代行してもらえる
基本的に面倒な手続きや交渉は弁護士を雇うことで代行してもらえます。
さらに、専門知識を基に示談の話し合いを行って貰えるのです。
③早い段階で解決できる可能性が高い
示談の話し合いの際に弁護士が間に入ると相手の態度が変わることがほとんどですので、早い段階で解決できる可能性が高いです。
④より多くの慰謝料を獲得するため、いざとなれば訴訟も可能
示談交渉で解決が困難な場合には、弁護士であれば裁判所に訴訟を提起することも可能です。
これは示談交渉において1つの武器にもなります。
⑤専門知識を活かしてくれること
弁護士に依頼すれば、慰謝料額以外にも、専門知識を活かし過失割合を自身に有利とするよう交渉してくれたりします。
(2)デメリット
弁護士を雇う際は金銭が必要です。
とはいえ、現在入っている保険に弁護士費用特約がある場合は保険会社が金銭を持ってくれるので、デメリットはほとんど生じません。
他方、弁護士費用特約が使えない場合は、弁護士費用が発生します。
現在でもよく参考にされるのが弁護士会の「旧報酬規定」です。
下記のとおりです。
経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下の部分 | 8% | 16% |
300万円~3000万円の部分 | 5% | 10% |
3000万円~3億円の部分 | 3% | 6% |
3億円を超える部分 | 2% | 4% |
たとえば2000万円の慰謝料請求を依頼するとしましょう。
上記の基準ですと、3000万円未満の訴訟事件着手金(依頼時に支払う金額)は請求額の5%、報酬金(事件解決時に支払う金額)は得られた額の10%だから、着手金が150万円、報酬金が300万円になります(いずれも税抜)。
合計450万円です。
ですが、現在は料金体系が自由化になっているので、弁護士よって報酬学は前後します。
近頃、着手金が無料で完全成功報酬の事務所があります。
相談だけなら無料ということもあります。
まずは、見積もりも含めて相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
身近な人が亡くなってしまった場合の悲しみは大きいです。
今回の記事が、こうした悲しみを減らすことの一助になれば幸いです。