最近、会社員が仕事をしていてうつ病にかかるケースが増えています。
うつ病が悪化すると仕事を続けられなくなることもありますし最悪の場合、自殺してしまう例もあります。
業務によってうつ病などの精神疾患にかかってしまった場合でも、労災認定を受けられます。
今回は、うつ病やメンタルヘルスなどの精神障害で労災認定を受けるためにすべきことを解説していきます。
- 交通事故
- 過払い
- 離婚問題
- 刑事事件
- 企業法務
- 遺産相続
- 労働問題
- B型肝炎
ホウツウがオススメする法律事務所が安心!
目次
1.うつ病などの精神障害でも、労災認定を受けられる
会社員は、労災保険に加入しているものです。
労災保険とは、労働災害が発生したときに生活費や逸失利益などのさまざまな補償を受けることができる保険です。
労働者は、労災の保険料を支払っていませんが従業員を雇う場合、会社が労災保険に加入する必要がありますので会社が労災の保険料を負担しています。
そこで、業務中や通勤途中などに事故に遭ったら労災を利用して保険金を受けとることができるのです。
それでは、うつ病などの精神病になったときにも労災給付を受けることができるのでしょうか?
業務中に事故に遭ったケースなどとは異なり、うつ病などにかかった場合、業務と病気との直接の因果関係を証明しにくいです。
ただ、証明しにくいからといって労災が認められないということにはなりません。
会社での超過勤務やパワハラなどにより、うつ病などの精神疾患にかかってしまうことはあり得ることです。
そこで、業務と病気との関係を証明できれば、うつ病などの精神疾患のケースでも労災の認定を受けることができます。
2.精神障害で労災認定を受けているのは、どのくらい?
それでは、実際に、うつ病などの精神障害で労災認定を受けているケースはどのくらいの件数があるのでしょうか?
ここに、厚生労働省が発表しているデータがあります。
平成23年には、「申請件数が1272件」、「認定件数が325件」、「認定率は30.3%」でした。
平成24年には、「申請件数は1257件」となり「平成25年には1409件」、「平成26年には1456件」、そして「平成27年には1515件」にまで増えています。
このように、申請件数は年々増加しています。
平成27年において、認定件数は472件で、認定率は36.1%です。
ここ数年の認定率は、だいたい35%強で推移しています。
精神疾患の労災請求件数は、他の疾患と比べても多いです。
たとえば、心臓や脳疾患で請求された件数は、平成27年に795件でしたから、精神疾患(1515件)はその2倍程度になっていることになります。
3.精神障害における、労災認定基準
次に、うつ病などの精神障害の場合、労災認定基準がどのようになっているのか、確認しておきましょう。
具体的な認定要件は、以下の3つです。
- 認定の対象となる精神障害があること
- 精神障害を発病する前の約6ヶ月間において、業務によって強い心理的負荷があったこと
- 業務にもとづかない心理的負荷や、その人の個性によって発病したものではないこと
(1)認定の対象となる精神障害があること
精神障害を発症したからと言って、どのようなものでも労災認定を受けられるとは限りません。
労災が認定される可能性がある疾患は、以下の通りです。
- 症状性を含む器質性精神障害(器質性障害というのは、脳などに、わかりやすく異常が見られる障害のことです。たとえば、高次脳機能障害などのケースが該当します。)
- 精神作用物質使用による精神および行動の障害
- 統合失調症、統合失調型障害および妄想性障害
- 気分(感情)障害
- 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
- 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
- 成人のパーソナリティおよび行動の障害
- 精神遅滞
- 心理的発達の障害
- 小児(児童)期や青年期に発症する、行動や情緒の障害
上記のうちでも、特にうつ病や急性ストレス反応などのケースで労災認定されることが多いです。
反対に、認知症、頭部の外傷によって発生した障害やアルコールや薬物によって発生した障害は労災の対象からのぞかれます。
心身症も労災認定の対象にはなりません。
(2)精神障害を発病する前の約6ヶ月間において、業務によって強い心理的負荷があったこと
うつ病で労災申請が認められるには、精神障害発症前の6ヶ月間に業務によって強い心理的負荷があったことが必要です。
業務による強い心理的負荷については、以下の基準によって認定します。
- 特別な出来事があったか(厚生労働省が定めている「特別な出来事」があった場合には、業務による、強い心理的負荷が合ったと考えます。)
- 業務以外の心理的負荷があったかどうか(特別な出来事がない場合でも、所定の「具体的出来事」に該当する事実がある場合には、強い心理的負荷があったと認められることがあります。)
以下で、「特別な出来事」や、「具体的出来事」について、解説していきます。
①特別な出来事について
特別な出来事があると、基本的に、業務による強い心理的負荷があったと認められます。
「特別な出来事」に該当する事実は、以下のようなものとなります。
- 生死にかかわるケガをした
- 極度の苦痛を伴うケガをした
- 永久的に労働ができなくなる後遺障害が残る業務上の病気やケガをした
- 業務中や業務に関連して、他人を死亡させてしまった、または、他人に生死にかかわる重大な負傷をさせてしまった(ただし、故意による行為はのぞかれます)
- 強姦されたり、意思を抑圧された状態でわいせつ行為をされたりして、極度のセクハラを受けた
- その他、上記に準じる事実(心理的負荷が極度なもの)
- 精神疾患発病前の1ヶ月において、約160時間を超える時間外労働をしていた
- 精神疾患発病前の短期間において、1ヶ月160時間ペースでの時間外労働をしていた(たとえば、半月に80時間以上の残業をしていた場合などです)
上記のような重大な事情があると業務に起因する強い心理的負荷があると認められ、その精神障害について労災が認定されます。
②具体的な出来事について
具体的な出来事が問題になるのは、上記の特別な出来事がない場合です。
特別な出来事がなくても具体的な出来事に該当する事情があり、その強度も強い場合には総合的に評価して業務による強い心理的負荷があると認められます。
厚生労働省は、36個の「具体的出来事」を定めています。
参照URL:業務による心理的負荷評価表
例として、以下のようなものがあります。
- 対人関係で、嫌がらせやいじめを受けた、暴行された
- セクハラを受けた
- 退職を強要された
- 左遷された、配置転換された
- 仕事で大きな失敗をした
- 違法行為を強要された
- 過重なノルマを課された
労災の申請をするときには、それぞれのケースにおいて、上記のような具体的出来事に該当する事実があるかどうかがチェックされます。
そして、それぞれの事実について「強」「中」「弱」があるので、それへの当てはめを行います。
そして、何個の項目に該当する事実があったか、またそれぞれ、どの程度の強度であったかを総合的に考慮して業務による強い心理的負荷があったかどうかを判断します。
(3)業務以外の心理的負荷や、個人的な要因ではないこと
会社員がうつ病などの精神障害になるとき、必ずしも業務によって発症するとは限りません。
家庭生活や金銭問題など、いろいろなストレスで精神病を発病することもあります。
また、特段、別の事情による心理的負荷が見られなくても過去に精神障害を患っていたり、アルコール依存などの状況があったりするとそこから別の精神疾患につながるケースもあります。
このように、精神疾患が業務とは別原因の場合には労災認定を受けられません。
そこで、精神障害で労災申請をすると業務以外の要因によるものではないかどうか調査が行われます。
具体的には、厚生労働省が「業務以外の心理的負荷評価」の基準を定めているので、こちらに当てはめて評価をしていくことになります。
参照URL:業務以外の心理的負荷評価表
4.労災によって受けられる給付内容
うつ病によって労災の認定を受けることができたら、どのような給付を受けることが出来るのでしょうか?
以下で確認しましょう。
- 療養(補償)給付(うつ病になって、病院にかかったときに、病院に支払う治療費です。投薬料や検査料などもすべて含まれます。そこで、労災が認定されると、労働者は無料で診察を受けることができます。)
- 休業(補償)給付(病気が原因で働けない期間が4日以上続く場合には、休業補償が支払われます。支給される金額は、平均賃金の6割です。ただ、休業特別支給金(平均賃金の2割)が上乗せされるので、全体で平均賃金の8割となります。)
- 傷病(補償)年金(療養を開始してから1年6ヵ月が経過しても完治せず、傷病等級の1~3級に該当するケースで支給されます。)
- 障害(補償)給付(病気が回復したときに、身体に一定の障害が残ったときに支給されます。1~7級の場合には障害(補償)年金、8~14級の場合には、障害補償一時金が支給されます。)
- 介護(補償)給付(障害(補償)年金や傷病(補償)年金の受給者が介護を要する場合に支給されます。)
- 遺族(補償)給付(労働者が死亡したケースで支給されます。労働者によって生計を維持されていた遺族の婆慰謝料には遺族(補償)年金、遺族年金を受けとるべき家族がいない場合には、他の優先順位の高い遺族に対し、遺族(補償)一時金が支給されます。)
- 葬祭料(労働者が死亡して、葬儀を行うときに支給されます。)
5.労災の申請方法
労災の申請をするときには、まずは労災の申請書を作成して、労働基準監督署に提出しなければなりません。
また、うつ病などの精神障害の場合、業務による強い心理的負荷を証明することが必要なので、いろいろな資料を用意する必要があります。
時間外労働に関する資料はもちろんのこと病気にかかる前に職場でどのような出来事があったのか、自分にどのような強い心理的負荷があったのか、また、これまで精神病の既往症がないことなども明らかにしなければなりません。
また、会社は従業員について労災認定が行われると社会的評価が低下することなどを懸念するので、労災認定に非協力的であることが多いです。
まとめ
そこで、確実に労災認定を受けるためには、プロである弁護士のサポートを受けることが有効です。
弁護士であれば、効果的な証拠の集め方のアドバイスをしてくれますし会社が協力しなくても証拠保全をすることなども可能です。
説得的な申請書を作成し適正に認定手続きを進めるよう、意見書の作成なども行ってくれるので、労働基準監督署も積極的に労災認定手続きに取り組むようになります。
労働者が自分で手続きするよりも労災認定される可能性が大きく上がるので、うつ病などのメンタルヘルスで労災申請をするなら弁護士に相談しましょう。