モラハラ(モラルハラスメント)とは、精神的な暴力、嫌がらせのことをいいます。
セクハラ等と比べると新しい概念であり、一般には馴染みの薄い言葉でしたが、最近、芸能人の離婚問題で話題になったこともあり広く知られるようになり、離婚理由としてあげられることも増えてきました。
もっとも、どのような行為がモラハラにあたるのか、モラハラを理由に離婚ができるのか、離婚ができるとすればどの程度の慰謝料がもらえるのかといったことについて、十分に知られているとは言えないでしょう。
そこで今回は、モラハラについての基本的な知識を紹介していきます。
※この記事は2017年4月7日に加筆・修正しました。
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目次
1.モラハラの具体例
まずは、具体的にどのような行為がモラハラとなるかを知りたいかと思います。
具体的には以下の通りです。
- 「バカ」「死ね」などといった相手を貶める言動
- 無視をする
- 「誰が食わせてやってると思ってるんだ」「甲斐性なし」などと言う
- ミスをするたびに大きなため息をつく、舌打ちをする
- 1回ささいなミスをしたことを、頻繁に同じミスをするかのように言う
- 実家や友人との付き合いを制限する
2.モラハラを受けた場合の対応策は?
(1)モラハラを受けた場合の対応策は?
モラハラを受けた場合の対応としては、一人で抱え込まないことが大切です。
モラハラは、身体的な暴力に比べて周囲に理解してもらいにくいので、モラハラの被害者は「自分が悪い」「自分が我慢すればいい」と考えがちで、誰にも相談せずにモラハラを受け続けてしまう傾向があります。
ただ我慢し続けてはいけません。
モラハラを受け続けたことにより、うつ病などの精神疾患を発症することさえあります。
現在では、各地に配偶者暴力相談支援センターなどの相談機関が設けられているほか、モラハラ問題に力を入れている弁護士も増加しています。
モラハラに合ってしまった場合には、ためらわずに相談するとよいでしょう。
(2)別居したら婚姻費用の請求が可能
また、すでに心身に負担を抱え、相手方と接触することが大きな苦痛を伴う場合には、相手方と距離を置くため家庭内別居・別居を選択する方がよい場合もあります。
なお、別居をしたいが経済的に不安があるという場合、相手方に対して婚姻費用の請求が可能です。
相手が請求に応じない場合、婚姻費用分担の調停を申し立てることが可能です。
調停で合意が成立しないときは、裁判官が審判で分担額を決めることができ、相手方が審判によって決められた額を支払わないときには給与や預金口座の差押え等が可能です。
3.モラハラは離婚理由・原因(法定離婚事由)になるか
別居等で一定期間距離を置いても関係の改善が望めない場合、離婚を選択せざるを得ないこともあります。
そこで次は、モラハラが離婚理由になるかご説明いたします。
(1)協議離婚の場合
当事者同士の話し合いによる協議離婚の場合、離婚の理由に決まりはありません。
つまりどのような理由でも離婚できるのです。
もっとも、相手方も離婚に同意しなければなりません。
しかしながら、モラハラをする夫(妻)が容易に話し合いに応じるとは限りません。
話し合いをしようとしても無視、あるいは罵倒されるなどして、より精神的苦痛を受けることも少なくありません。
(2)裁判上の離婚
夫と妻で協議をしても解決できない場合、家庭裁判所で離婚調停を申し立てることが可能です。
基本的に、裁判所で調停委員に間に立ってもらって、協議を行います。
調停の結果、相手方と合意が成立すれば、協議離婚と同様、どのような理由でも離婚することができます。
ただ、相手方も離婚に応じることが必須です。
調停でも合意が出来ない場合、離婚訴訟を提起する必要があります。
離婚訴訟では、当事者間で和解ができなければ裁判官が離婚を認めるか否かを決めることになります。
もっとも、離婚を認めるには法律で定められた離婚理由に該当する必要がある。
具体的には次で説明する通りです。
(3)法律上の離婚原因
民法770条1項で離婚原因が定められており、離婚訴訟で離婚が認められるには、いずれかに該当する必要があります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「婚姻を継続し難い重大な事由」の具体例としては、性格の不一致(単なる不一致では足りず、それが原因で夫婦関係が修復不可能な場合)身体的な暴力・虐待、罪を犯し服役している場合、ギャンブル・浪費、過度の宗教上の活動などが挙げられます。
モラハラも、その程度、頻度によっては「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると考えられています。
4.モラハラの慰謝料の相場は?
最後に、モラハラを理由に慰謝料を請求する際の金額の相場についてご説明いたします。
(1)慰謝料の金額の相場
モラハラを原因として離婚する場合、慰謝料の請求が可能です。
裁判での相場は、「50万円~300万円」の範囲内です。
もっとも、協議離婚の場合には当事者間の交渉で合意ができれば、この金額を上回る慰謝料の金額を設定することは何も問題ありません。
相手方と交渉する際には、時間と費用をかけて訴訟をした場合の目安がこの範囲であることを念頭に置き、相手方の支払能力も加味してどの程度の額を請求するか決めていけるとよいでしょう。
(2)慰謝料の金額を決める際に考慮される事情
裁判官が慰謝料の額を決める際に考慮するのは以下のような事情です。
裁判によらない交渉の場合も基本的に同様と考えてよいでしょう。
- モラハラの内容等(頻度、程度、具体的内容)
- モラハラを受けていた期間の長さ
モラハラを受けてきた期間が長いほど高額の慰謝料が認められやすくなる。 - モラハラによる精神疾患の有無、症状の重さ
モラハラにより精神疾患に罹患した場合、より高額の慰謝料が認められやすくなる。 - 相手方の経済力
慰謝料は精神的な苦痛に対する賠償ですから、理論的には相手方(加害者)の収入には影響されないはずです(相手方が金持ちだからより精神的苦痛が大きいとか、逆に相手方が無職で収入がなければ精神的苦痛が小さいとはいえないことは当然です)。
しかしながら、相手方の収入が高い場合には被害者救済という観点からか、慰謝料を通常よりも増額するという方向で考慮されることがあります。
(3)慰謝料を請求するために事前に準備しておくこと
モラハラの請求するには事前の準備が必要となります。
具体的には以下のような準備をしておきましょう。
①モラハラについての記録を残す
モラハラは身体的な暴力と異なり外傷が残らないため、裁判で「言った」「言わない」の水掛け論になりがちです。
モラハラがあったことは、慰謝料を請求する側が証明しなければならないため、モラハラを受けたことの証拠を残しておく必要があります。
最近では小型のICレコーダーやスマートフォンで長時間の録音が可能ですので、出来る限り録音を試みるとよいでしょう。
民事訴訟や離婚訴訟では証拠の制限がなく、相手方に無断で録音しても証拠とすることができます。
もっとも、突発的な発言等に対応するのは難しいケースも多くなりますが、そのような場合でも、モラハラを受けた場合にはメモや日記に日時、場所、モラハラの内容等をできるだけ具体的に残しておくとよいでしょう。
録音・録画のような客観的なものでなくても、具体的かつ詳細な記述は証拠としての価値があります。
また、相手方からメールやライン等により侮辱、罵倒された場合は消さずに保存しておくべきです。
さらに、「配偶者暴力相談支援センター」や「弁護士」などの相談履歴も証拠になります。
直ちに離婚までを考えていないとしても、相談をしておけば将来的にモラハラが改善せず離婚を決意した場合に役立つ(遅くとも相談をした頃にはモラハラで悩んでいたという間接的な証拠になる)ので、その意味でも相談だけでもしておくとよいでしょう。
②医師の診察を受ける
精神疾患の立証には、医師の診断書等の客観的資料が必要となります。
また、診断書、診療録にモラハラに関する記述があれば、モラハラがあったことの証拠にもなります。
心身に不調を覚えたときは、早めに医師の診察を受ける方がいいでしょう。
③相手方の収入に関する資料を確保する
相手方の収入は、子供がいる場合の養育費の算定の根拠にもなります同居中で相手方の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書等)などを自宅にある場合、コピーをとっておくとよいでしょう。
まとめ
モラハラについての基本的な知識をご紹介してきましたが参考になりましたか。
モラハラを受けた場合、自身の精神的安定を図ることが第一で、そのためにはどうすればいいか、関係機関等に相談して事案に応じた最善の方法を採るようにして下さい。