交通事故の加害者がどうしても許せない時にとるべき方法とは

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交通事故の加害者には様々な人がいます。

誠意をもって対応してくれる人もいれば、誠意のかけらもなく被害者としてはどうしても許せないと感じる人もいます。

ここでは、加害者をどうしても許せない場合の対処法について解説いたします。

※この記事は2017年5月29日に加筆・修正しました。

1.悪質な交通事故加害者のケース

悪質な交通事故として、その後の法律改正のきっかけとなった事件があります。

2012年4月に京都亀岡市で起きた交通事故です。
この事件では計10人の被害者が死傷しました。

事件の概要としては、集団登校中の小学生の列に無免許運転の少年の車が突っ込み、子どもたちや引率の保護者をはね飛ばしたというものです。

3人が死亡し7人が重傷を負ったという事件の結果の重大さもさることながら、以前から無免許で暴走行為を行っていたという加害者の行為の悪質さが特徴と言える事件でした。

このように悪質性が高い事故であったため、当初は危険運転致死罪での起訴が検討されましたが、当時の法律ではそれは難しかったため断念されました。

遺族が21万人の署名を集めたにもかかわらずです。

結果としては、懲役5年以上9年以下の不定期刑に処せられました。
3人もの方が亡くなった事件としては軽いということが言えるでしょう。

この事件を大きな一つのきっかけとして法改正が行われ、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が新しく制定されて、無免許運転を行った場合の刑が重くなりました。

2.交通事故加害者が謝罪に来ない理由

交通事故の被害者となった時に一番許せないことは、加害者が謝罪に来ないことではないでしょうか。

理由としては交通事故の9割は示談で解決していると言われています。
このことを言いかえると、1割は話がもつれて調停や裁判まで発展しているということを指しています。

被害者と加害者の話がもつれる理由の一番大きなものは、感情的なものです。
つまり加害者から誠意ある謝罪が受けられないことが、被害者の感情を大きく損ねるのです。

そういう加害者が存在する理由として交通事故特有の問題が挙げられます。

交通事故の場合は、車を運転できる人ならだれでも加害者になりうるし、さらに運転中に気を抜いた一瞬にして加害者になりうる可能性があるということが挙げられます。

そのことが、加害者にとっては加害者としての認識が薄くなることにもつながったりします。

また、交通事故については被害者保護のために自動車保険制度が整えられていることも被害者が謝罪に来ない理由の一つに挙げられるでしょう。

多くの任意保険には示談代行サービスがついていますので、加害者によっては保険会社に丸投げの者もいます。

示談代行サービスを行う保険会社の担当者は、示談交渉のプロですから被害者の交渉相手として問題があるわけではありません。

むしろ交通事故の賠償問題の素人である加害者本人と具体的なやり取りをするよりも、かえって話がスムーズに進むことが多いでしょう。

しかし、賠償金というお金の話をするより前に加害者からのお詫びが全くなければ、いくら相場の金額を提示されても納得できないのは当然の事でしょう。
場合によっては、刑事処分を望むこともあるでしょう。

では被害者としては、そのような場合はどう対応すればよいのでしょう。

3.被害者としてはいつも冷静に対応しましょう

被害者として一番心がけておかなければならないのは、感情的にならず冷静に対応するということです。

被害者を許せないという気持ちはわかりますが、加害者に対して脅迫や強要ととられるような言動を起こしてしまうと反対に加害者から訴えられる恐れがあります。

例えば殴るけるの暴行を加えてしまえば暴行罪になりますし、交通事故の加害者であることを周りに触れ回れば場合によっては名誉毀損罪が成立してしまいます。

そうなると、被害者も加害者から損害賠償を請求されることになり、どちらが被害者かわからなくなります。
多大な被害を受けた場合、加害者を目の前にすると感情的になることが押さえにくくなるものです。

そういったことが予想される場合は、あらかじめ弁護士といった法律知識を有する第三者に交渉を委任するのも一つの方法です。
もしくは、加害者に直接会わずに文書にて交渉を進めていく方法もあります。

4.被害者が加害者に対して求めることができるのは損害賠償請求です

交通事故を起こすと加害者は3つの責任を科されます。
民事上の責任、刑事上の責任、行政上の責任です。

このうち、被害者が追及できるのは民事上の責任です。
具体的には、損害賠償の請求です。

つまり、加害者に対して要求できるのはお金での賠償だけなのです。
謝罪文や謝罪のための来訪を要求することはできません。

また刑を科すといった刑事処分については、起訴するか否かは検察官の判断にゆだねられますし、裁判で判決を下すのは裁判官の仕事です。
被害者が刑事裁判の流れに関与できるのは極めて限定的になります。

5.損害賠償の請求という方法を使って加害者と対峙しましょう


被害者として不誠実な加害者に報復する方法としては、請求する損害賠償額(慰謝料)を上げることでしょう。
請求金額を上げた場合、示談では話はつかず調停や民事裁判にもつれ込むことが予想されます。

そうなると被害者としても、弁護士費用や時間や手間という面で負担が気になることが出てきます。
そういった場合に有効な方法がいくつかあります。

任意保険に付帯している弁護士費用特約の活用と保険金の基準における弁護士基準の活用です。

(1)弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、任意保険にオプションとしてついているものであり、交通事故の損害賠償の請求における弁護士費用を出してくれるというものです。
この特約を利用すれば、弁護士費用を気にすることなく損害賠償の請求を弁護士に任せることができます。

(2)保険金請求における弁護士基準とは

保険金の支払いの基準にはいくつかあります。
通常、保険会社が提示してくる示談金は任意保険基準というものをベースにして算出されています。

ところが、保険金の基準には弁護士基準というものも存在しています。
こちらは、弁護士の団体が出している基準であり、裁判所の多くの判例をもとに算出されています。

したがって、裁判になった場合に勝ち取ることができる金額に近いと言えます。
そして、この二つの基準は弁護士基準の方が高額となっています。

示談交渉を弁護士に依頼すれば、弁護士基準を用いて保険会社と交渉をしてくれますので、
裁判にならずとも高額な慰謝料を勝ち取ることができます。

したがって民事の場面で被害者が取るべき方法としては、弁護士に示談交渉を依頼して弁護士基準で慰謝料を勝ち取るというものが挙げられるでしょう。

6.刑事処分の場面での被害者の関わり方

刑事責任については、司法が追及していくことになります。
したがって、被害者としては限定的な関わり方になりますが、被害者としての意見を表明することができる機会は積極的に活用しましょう

(1)実況見分

交通事故が起きて110番通報をすると警察に交通事故が起きたことが報告されることになります。

そうすると、警察としては加害者の立会いのもと実況見分を行います。
これは、交通事故の状況を加害者に再現させて実況見分調書に記録しておく手続です。

ここで警察から、被害者に対しても加害者に対しどのような処罰を望むかということが聞かれます。

実況見分調書という公式な文書に記録されるのですから、厳正な処罰を望む場合はそのことをきちんと告げるようにしましょう。

(2)起訴

交通事故は、実況見分調書が作成されたら、次は検察庁に送致されます。

そこで検察官が、事件の加害者を裁判にかけるかどうかを判断することになります。
裁判にかけることを起訴と言います。

検察官が起訴するかどうかを判断する材料として被害者の意見を聞くことがあります。
検察官から意見を聴取される機会があれば、加害者を処罰してほしいという意見を伝えましょう。

(3)検察審査会

検察が、加害者を不起訴にした場合に被害者として納得できなければ検察審査会に申立てをする方法があります。

これは、一般市民から選ばれたメンバーからなる審査会です。
ここでは、検察が不起訴にした事件について、被害者や第三者からの申立てがあった場合に不起訴が相当であったかどうかを審査します。

不起訴不当ということになれば、検察官はもう一度事件の起訴を検討しなければならないことになっています。

7.まとめ

交通事故の被害者として、加害者がどうしても許せないということもあり得ます。
そういった場合は、つとめて冷静であることを意識して、法律の定めに従って行動しましょう。

弁護士は、民事の面だけでなく、刑事訴追の面でも被害者の強い味方となってくれるでしょう。

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