財産分与とは?対象になる財産や計算方法、請求方法も解説!

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財産分与、離婚の際に関係することは聞いたことあるけど詳しく知らない。今後離婚するにあたり詳しく知りたい!

この記事をお読みの方の中にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

夫婦が離婚する場合には、結婚していたときに夫婦が協力して積み立てた財産について、夫婦が分け合う必要があります。このことを、財産分与と言います。

財産分与請求をすると、ときには数千万円以上もの財産の分与を受けることも出来ます。

ただ、婚姻時に積み立てた財産と言っても、内容はいろいろあります。どのような財産が、具体的に財産分与の対象になるのでしょうか。また、夫婦の財産分与の割合に決まりはあるのかも気になります。

さらに、財産分与の際の計算方法や、財産分与の請求方法なども知っておく必要があります。そこで今回は、財産分与と、対象になる財産や計算方法、請求方法などについて全般的に解説します。

目次

1. 財産分与とは

離婚をするとき、その夫婦に財産があると、財産分与を請求できるケースがあります。財産分与という言葉をよく耳にすることも多いですが、財産分与とは具体的にはどのような制度なのでしょうか。

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して積み立てた夫婦共有財産を分け合うための手続きです。

結婚している期間には、夫婦で協力をして積み立て金をしたり(預貯金など)、マイホームや収益用のマンションなどを購入したりして(不動産)、共同で財産を作ることが多いですが、離婚をするのであれば、このような共有になった財産を分配しなければならないので、そのために財産分与が認められます。

離婚の際に財産分与請求をすると、その夫婦の状況によっては非常に高額な財産分与を受けることもできます。

財産分与ができることを知らずにそのまま何ももらわずに離婚してしまうと、大きな損失を被ってしまうことにもなります。

2.財産分与の3種類

財産分与にはいくつかの種類があります。

(1)清算的財産分与

財産分与の1つ目は清算的財産分与です。

これは、夫婦が婚姻中に積み立てた財産を離婚時に清算するための財産分与であり、もっともオーソドックスな形の財産分与です。

(2)扶養的財産分与

2つ目は扶養的財産分与です。夫婦の一方が離婚後生活していくのが苦しいような状況がある場合には、離婚後その配偶者が生活していくための扶養のためのお金の支払いが認められるケースがあります。このように、扶養的財産分与とは、離婚する場合の夫婦の一方の生活などの扶養を目的としたものです。

(3)慰謝料的財産分与

財産分与には、さらにもう1種類あります。離婚する場合に夫婦の一方に不貞などの問題がある場合には慰謝料が発生することがありますが、この場合、財産分与の際に慰謝料の支払いの意味合いも込めて、両者を一体として行うことがあります。この場合の、慰謝料的な意味合いのこもった財産分与のことを、慰謝料的財産分与と言います。

慰謝料的財産分与が行われる場合には、別途慰謝料を請求することは2重請求になるので認められません。

このように、財産分与には3つの種類がありますが、通常一般的に「財産分与」として議論する場合には、清算的財産分与請求を意味することが多いです。

3.財産分与の対象

財産分与をする場合には、夫婦が共同で積み立てた財産を分け合うことができますが、次に、どのような財産が財産分与の対象になるのかを抑えておく必要があります。

そこで、以下では、具体的な財産の種類を確認します。

(1)具体的な財産分与の対象財産の例

まずは、どのような財産が財産分与の対象になるのか、その具体例を見てみましょう。

財産分与の対象になりうるのは、すべての価値のある財産です。

たとえば現金、預貯金、生命保険はもちろんのこと、不動産屋や株券、投資信託金、ゴルフ会員権や各種の積立金などもすべて財産分与の対象になります。

退職金がある場合にも、基本的に財産分与の対象になります。ただし、退職金の場合には、まだ支給されていない場合には別途考慮しなければならない問題が出てきます。このことは、以下の5(4)の項目で詳しく説明します。以上のように、財産分与の対象になりうるのは、基本的に名目を問わず婚姻中に積み立てたすべての財産です。

(2)婚姻中に夫婦で積み立てた財産が対象になる

財産分与の対象になる財産の種類や項目は上記のとおりですが、夫婦の名義の財産があったとしても、それらがすべて財産分与の対象になるとは限りません。

財産分与の対象になるのは、「婚姻中」に夫婦が「共同で」積み立てた財産だけです。

よって、夫婦の名義の財産があったとしても、それが婚姻前からの財産であったり、夫婦のどちらかの固有の財産である場合には、その財産を対象にすることはできないのです。

以下で、財産分与の対象にできるのかの判断を間違えやすい種類の財産について、それぞれ対象とすることができるかものどうかを解説します。

①    給料やパート収入も財産分与の対象になる

まず、夫婦の一方が仕事で得た給料や、妻のパート収入などは財産分与の対象になるのかがよく争われます。

これについては、問題なく財産分与の対象になります。夫が会社が稼いできた給料から月積立をしていた場合や、妻がパートの収入を専用の通帳を作って積み立てていた場合などにも、すべて財産分与の対象になります。

②    子ども名義の預貯金も財産分与の対象になる

財産分与の対象になるかどうかがよく問題なる財産としては、子ども名義の預貯金や子どものための学資保険などがあります。

この場合、子どもの親権者となる方の配偶者のものにすべきではないかという発想になりがちです。

しかし、実際には子ども名義の預貯金や子どものための学資保険であっても、基本的に財産分与の対象になります。

というのも、子ども名義の預貯金とは言っても、その資金は結局夫婦の一方が稼いだ給料などであることが多く、結局は名義が子どもになっているだけで、夫婦の共有財産がもとになっていることが普通だからです。

学資保険も同様です。特に、学資保険の場合には、親が契約者となって、親が毎月(または一括払い)で掛け金を支払っているのですから、子ども名義の預貯金の場合よりも、なおさら財産分与の対象になりやすいです。ただし、子ども名義の学資保険の掛け金を、夫婦の一方の親から一括払いなどで支払ってもらっている場合には、その学資保険は、その支払いをした側の配偶者の特有財産となるので財産分与の対象になりません。これは、この項目の④の親からの遺産などと同じ問題です。

このような問題はありますが、基本的には子ども名義の預貯金や子どものための学資保険は、自動的に親権者のものとなるのではなく、財産分与の対象として計算しなければならないので、注意が必要です。

③    婚姻前からの財産は対象にならない

夫婦の財産分与の対象になるのは婚姻中に積み立てた財産だけです。

よって、夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産は、財産分与の対象になりません。たとえば、妻が独身時代に貯めていた預貯金などは、離婚の際の財産分与の対象にはなりません。貴金属や株券、投資信託などの財産も同じです。

婚姻前から持っていた財産はすべて特有財産として、離婚時にそのままもらうことができます。

逆に言うと、相手がどれだけ多額のお金を持っていても、それが相手が婚姻前から持っていた財産である場合には財産分与請求することはできないので、注意が必要です。

④    親からの遺産などは対象にならない

財産分与の対象になるのは、夫婦が「共同で」積み立てた財産のみです。よって、夫婦の一方の事情によって入ってきた財産については、婚姻中に得られた財産であっても財産分与の対象になりません。

たとえば、夫婦の一方の親が婚姻中に亡くなって、遺産が入ってきた場合、その遺産については「特有財産」となるので財産分与の対象になりません。遺産が預貯金であっても生命保険であっても不動産であっても同じです。特有財産とは、夫婦の一方の固有の財産のことで、財産分与の対象にならない財産のことです。

離婚する場合に、相手方が多額の資産を持っていても、それが相手方の親からの遺産や贈与を受けたお金である場合には、財産分与の対象として請求することは出来ません。

相手方の親が相手方のために掛け金を支払って、生命保険に加入してくれている場合にもその生命保険は財産分与の対象になりません。

この意味で、相手方の親が、夫婦の子ども(孫)のために学資保険の掛け金を全額支払ってくれている場合にも、その学資保険は財産分与の対象にならず、その掛け金を支払った方の当事者の特有財産となります。

その支払いをした方の配偶者が子どもの親権者にならない場合であっても、その配偶者がその学資保険を得ることになるので、注意が必要です。

たとえば、夫の親が全額学資保険の掛け金を支払ってくれた場合、妻が子どもの親権者となる場合にも、学資保険は全額夫のものとなるのです。

この場合にもし妻が学資保険を引き継ぎたい場合には、妻が夫に学資保険の解約返戻金相当額を支払って、学資保険を妻名義に名義変更してもらう必要があります。

⑤    年金は年金分割制度によって分割する

離婚時の財産分与をする場合、年金が対象にならないのかという疑問を持たれることがあります。この点、年金の中でも厚生年金や共済年金については、離婚時年金分割という、年金専門の分割手続きがあります。これは、厳密な意味での財産分与とは異なりますし、財産分与とは計算方法も請求方法も異なります。

よって、年金は財産分与の対象にならず、別途年金分割手続きによって分割する必要があります。

⑥    借金は財産分与の対象にならない

離婚時の財産分与の対象になるのは、プラスの資産のみです。マイナスの負債や借金については財産分与の対象になりません。

よって、夫婦の一方がサラ金やローンなどの借金を抱えている場合に離婚をしても、もう一方の当事者が借金の半額を背負うということにはなりません。

これは、借金というのは、債務者(借りた人)と債権者(貸した人)との間の個別の契約にもとづくものだからです。

債権者にしてみれば、債務者の信用力を信頼してお金を貸したのであり、離婚したからと言って突然債務者が変わってしまっては大変な不利益になります。

たとえば、給料の高い夫の返済能力を信用して銀行が夫にお金を貸したとします。その後、夫婦が離婚したからと言って、突然専業主婦で働いていない妻がその半額を引き継ぐことになると、銀行は結局妻から支払いを受けられなくなって、損をしてしまうことになります。

このようなことのないよう、借金は債権者の同意がない限り、勝手に債務者の変更をすることはできません。

離婚によっても、債務者が自動的に変わることはないのです。

よって、借金は財産分与の対象になりません。夫婦が離婚するときに相手に多額の借金があったとしても、自分には一切類が及ぶ危険性はないので、離婚を躊躇する必要はありません。

4.財産分与の割合

財産分与の対象財産が決まったとしても、具体的に夫婦でどのような割合で分ければ良いのかがわからないと、手続きが進められません。財産分与の割合とは、夫婦のどちらがどれだけの割合で分与を受けるかという問題です。

そこで、以下では財産分与の割合について説明します。

(1)     財産分与割合は夫婦で自由に決められる

財産分与を行う場合、財産分与割合は基本的に夫婦が自由に決めることができます。ここに、法律上の決まりや制限はありません。

もちろん夫婦で平等に1:1にすることもできますし、夫と妻が7:3にしたり、2:8などにすることも自由です。

妻がすべての財産を受け取って、夫が離婚後裸一貫でやり直すなどの選択も可能です。

このように、離婚する場合に夫婦が自分たちで話し合って財産分与を決定する際には、その夫婦の状況に応じて自由に財産分与割合を決定することができます。

(2)裁判所で決める場合には2分の1

夫婦で話し合って財産分与が決められれば一番良いですが、当事者同士で話し合っても折り合いがつかないことがあります。

その場合には、後の7の請求方法の項目でも説明するとおり、裁判所で調停や訴訟、審判をすることによって、財産分与をしなければなりません。

裁判所で財産分与を決める手続きの中でも、審判や訴訟で財産分与が決まる場合には、裁判所が財産分与割合を決定してしまいます。その場合には、夫婦それぞれが2分の1ずつ(1:1)になります。

よって、当事者同士で話し合って財産分与をする場合でも、夫婦双方がなるべく自分の方に多く分与してほしいと主張して折り合いがつかない場合などには、夫婦の財産分与割合を平等に2分の1ずつにすると話し合いが進めやすくなります。

裁判所を利用する場合であっても、調停ならば夫婦の話し合いで自由に財産分与割合を決めることができますが、この場合も当事者双方が自分の方に多く分与してほしいと望むことが多いので、結局は2分の1ずつになることが多いです。

(3)専業主婦でも共働きでも2分の1になる

夫婦の財産分与割合を決める場合、よく夫側から「妻が専業主婦だから、財産分与割合を少なくするべきだ」という主張がなされます。

妻は、収入がないので夫婦共有財産の形成に貢献していないので、自分の方が多く財産分与を受けるべきだという主張内容です。

実際に、専業主婦の場合に財産分与割合が減ることはあるのでしょうか。

この点、昔は専業主婦の事案では財産分与割合が減らされることがありました。しかし、現在ではそのような運用はなされていません。

裁判所で財産分与の決定が行われる場合には、妻が専業主婦であっても2分の1ずつになります。

これは、夫が外で働いてきちんと収入を入れることができたのは、妻がしっかり家を守っていたからだという意味で、妻にも夫と同じように夫婦共有財産の形成に貢献があったと考えられているからです。

よって、専業主婦でも財産分与の割合は2分の1ずつになります。もちろん共働きの家庭でも財産分与割合は2分の1ずつになります。

夫婦それぞれの給料に差があったとしても、その差額には無関係に財産分与割合は2分の1ずつになります。

夫婦の年収と財産分与割合は基本的に無関係だということです。

5.財産分与の計算方法

財産分与の対象資産と割合が決定したら、次に具体的に財産分与の対象資産を計算しなければなりません。

よって、以下では財産分与の計算方法について、特に問題になりやすい項目を解説していきます。

(1)基本的な考え方

財産分与を行う場合には、基本的にすべての財産を2分の1ずつにします。たとえば現金や預貯金など分割可能な財産の場合、その半額ずつにして分けます。分けられる財産については簡単に分割することができます。

これが不動産などの分割できないものの場合、半分ずつにすることは困難です。かといっって、離婚後もずっと不動産を共有状態にしておくのは不都合です。

このような場合には、夫婦のどちらかがその財産を取得することとして、その財産を取得した方の当事者は、相手方に対してその受け取った財産の評価額の半額を支払って精算することになります。

たとえば、夫が3,000万円の不動産を財産分与として取得した場合には、夫は妻に対して

3,000万円×2分の1=1,500万円

の支払をして解決することになります。

(3)生命保険の評価方法

財産分与の計算においては、その財産の評価額を計算しなければなりません。問題になりやすいのが、生命保険です。

生命保険の場合には、「解約返戻金」の金額で財産を評価します。解約返戻金とは、もし今解約したらいくらの返戻金が返ってくるかという金額のことです。実際に生命保険を解約しなければならないという意味ではありません。

解約返戻金の金額を調べたい場合には、加入している生命保険会社に連絡をして「解約返戻金証明書」を発行してもらうように依頼します。すると、しばらくして解約返戻金証明書が自宅に送られてきます。財産分与を行う場合には、この解約返戻金の金額を基準にして計算します。

たとえば解約返戻金の金額が200万円の生命保険を夫が取得するなら、夫は妻に対してその半額の100万円の支払いをすることになります。

(4)不動産がある場合

夫婦が離婚する場合には、その夫婦に不動産があることがよくあります。この場合、財産分与でもその不動産が問題になります。

よくあるのが、夫婦の婚姻中に住宅ローンを組んでマイホームやマンションを購入しているケースです。

①    不動産の評価方法

住宅ローンが残っている場合の不動産の評価としては、

不動産の時価-住宅ローンの残ローンの金額

となります。

不動産の時価よりも住宅ローンの残ローンの方が多ければ、その不動産には価値がないといいうことになり、財産分与の計算対象からは外れてしまいます。

ここで、もしプラスになっていれば、その不動産を取得する当事者が相手方に対してそのプラスになっている金額の半額を支払う必要があります。

たとえば時価3,000万円で、残ローンが1,000万円のマンションがあるケースを考えてみましょう。この場合、マンションの価値は

3,000万円-1,000万円=2,000万円になります。

②    不動産を一方が取得して分ける方法

不動産を分ける際には、一方当事者が全部取得するケースがあります。この場合、不動産を取得した方の当事者は相手方に対し、その不動産の評価額の半額を支払うことになります。

たとえば、先の例で不動産を夫が取得するとします。

この場合、不動産の価値は2,000万円でしたので、夫は妻に対し、

2,000万円×2分の1=1,000万円

の支払をしなければならなくなります。

③    不動産を売却して分ける方法

不動産は売却してしまうことも可能です。売却する場合には、財産分与の処理は簡単です。

不動産を売却して残ローンと諸費用などをすべて支払った残金について、夫婦で2分の1ずつにします。

たとえば、先の例でマンションを3,000万円で売却出来たとして、残ローン1,000万円を支払い、諸費用が120万円かかった場合には、手元に入ってくる金額は

3,000万円-1,000万円-120万円=1,880万円になります。

そこで、これを夫婦で2分の1ずつにして940万円ずつの分与を受けることになります。

④    オーバーローンの場合

不動産の価値より住宅ローンの残ローンが多い場合には、基本的に住宅ローンは現在の住宅ローン債務者が支払う必要があります。住宅ローン債務者がそのまま住宅を取得する場合には特に問題になりません。

逆に、もし、夫名義の住宅ローンを組んでいる自宅に妻が住みたい場合などには、妻が夫に対して、月々のローン相当額を家賃として支払うなどの工夫をこらす必要があります。

この場合、住宅ローンを妻名義に変更することができれば良いですが、先にも説明したとおり、金融機関は債務者個人の信用を信頼してローン貸付を行っているため、離婚したからと言って債務者の変更には応じないことが多いです。

ただ、別途連帯保証人を用意して、ローン債務者を変更してもらえるよう金融機関と交渉してみる価値はあります。

(5)退職金がある場合

夫婦の一方に退職金がある場合には、その退職金も財産分与の対象になる可能性があります。この問題については、退職金がすでに支給されているかまだ支給されていないかで異なります。

①    退職金がすでに支給されている場合

退職金が既に支給されている場合には、比較的簡単に財産分与の計算ができます。この場合には、退職金は「預貯金」や「株」「投資信託」「生命保険」などの別の資産の形に変わっているはずです。よって、それらの個別の財産を評価して2分の1に分ければ済みます。

②    退職金がまだ支給されていない場合

退職金がまだ支給されていない場合には、退職金の財産分与は難しくなります。

まだ支給されていない退職金は、常に財産分与として分配請求できるわけではないのです。

この場合に退職金を財産分与してもらうためには、退職金が会社から支払われることが高い現実性を持っている必要があります。

そのためにはそもそも、勤務先の会社にきちんとした退職金規程があって退職金の制度が用意されていることが必要があります。

その上で、会社の経営状況が安定していて、退職までに倒産してしまうおそれなどがないこと、その会社に勤務している配偶者がきちんと退職金がもらえるまでその会社で働き続けることができそうかなども判断の指標になります。たとえば転職癖がある人や、転職して間もないケースなどでは、退職金が出るまで働き続けられるかが怪しくなってきます。

さらに、退職金が出るまでの期間も重要です。あと数ヶ月で退職するという場合であれば退職金が支払われる蓋然性が高く、退職金が財産分与の対象になる可能性が高まりますが、退職までに10年以上あるようなケースでは、退職金が支払われることが現実化しているとは言いがたく、退職金が財産分与の対象になることは難しくなります。

以上のように、退職金がまだ支給されていない場合には、そもそも退職金が財産分与の対象になるかどうかの点で、難しい判断が必要になります。

なお、退職金が財産分与の対象になる場合には、その分与割合は、退職金支給予定額の2分の1ずつになります。

具体的には、退職金をもらう側の配偶者が相手方に対して、支給予定額の2分の1の金額を現金で支払うことによって精算します。

6.財産分与の基準時

財産分与を決定する際には、財産分与の基準時が重要になります。財産分与の基準時とは、いつの時点の財産を基準として財産を計算するかという問題です。

財産分与の基準時は、基本的に離婚時になります。離婚までの間は、夫婦が共同で財産を積み立てていたからだということです。

ただし、離婚前に夫婦が別居してしまうケースも多いです。このような場合には、夫婦が別居したときを財産分与の基準時として計算します。いったん別居してしまうと、夫婦が協力して財産を積み立てる状態がなくなってしまうので、それ以前の別居時に存在した財産を基準に財産分与をするのです。

たとえば、離婚時が基準時になる事案で、離婚時に2,000万円の財産があれば、この2,000万円が財産分与の対象になります。離婚後に一方当事者が使い込んでいたとしても、財産分与としては半額の1,000万円の請求ができるのです。

財産分与には基準時があるので、一方当事者による「使い得」「使い逃げ」は許されないことになります。

7.財産分与の請求方法

財産分与の計算方法がわかったら、次は具体的にその請求をしなければなりません。実際に財産分与請求をするためには、どのように進めれば良いのでしょうか。

以下では、財産分与の請求方法を順を追って説明します。

(1)まずは話し合いをする

離婚時に財産分与の請求をしたい場合には、まずは夫婦で話し合いをするのが基本です。この場合には、事前にどのような財産があるかどうかをきちんと調べておきましょう。

話し合いに入ると、なるべく相手には財産を渡したくないので、財産を隠してしまう人がたくさんいるからです。

よって、事前に相手方名義の預貯金や株券、投資信託などの隠し財産がないかどうかきちんと調べます。生命保険などについてもリストを作って、預貯金通帳や生命保険証書の番号を控えてコピーをとっておくと良いでしょう。

その上で財産分与の話し合いに臨めば、相手方に財産を隠されて不利益を被ることがなくなります。

財産分与の話し合いをする場合には、まず財産分与の対象資産を明らかにして、それぞれの財産についての評価をして、それを夫婦の希望する分与割合で分与します。分与割合でもめてしまう場合には、平等に2分の1ずつに分けましょう。

(2)離婚調停を利用する

夫婦で話し合っても財産分与方法が決定できない場合があります。相手方が財産隠しをしていることもありますし、そもそも話し合いに応じてくれないケースもあります。財産の評価方法や分与割合で決着がつかないこともあるでしょう。

このような場合には、離婚調停を利用しましょう。離婚調停では、調停委員が間に入って財産分与を含めた離婚の話し合いを進めることが出来ます。

調停で話し合いが成立すれば、財産分与条件を決めて離婚ができます。

(3)離婚裁判で解決する

調停でも財産分与の話し合いがつかない場合には、離婚裁判(訴訟)で解決する必要があります。訴訟になると、裁判官が強制的に財産分与方法を決定してしまいます。

この場合の財産分与割合は基本的に2分の1ずつになります。

裁判で財産分与を有利にすすめるには、証拠を用意することが重要です。相手方に隠し資産があると考えられる場合には、弁護士に相談するなどして調べてもらい、なるべく多くの証拠を提出できるようにしましょう。

(4)離婚後請求する場合には財産分与調停・審判を利用出来る

離婚時にきちんと財産分与をせずに離婚だけをしてしまうことがあります。この場合には、離婚後もしばらくの間、財産分与請求をすることができます。

この場合、相手方に対して直接話し合いを持ちかけて財産分与の話し合いをする方法もあります。それで、上手に解決ができれば問題はありません。

ただ、離婚後に財産分与請求をされても、なかなか応じない人が多いです。そこで、この場合には裁判所の財産分与調停を利用しましょう。

財産分与調停では、調停委員が間に入ってくれて財産分与の話し合いを進めてくれます。また、調停で話し合いが決着しない場合には、裁判官が審判によって財産分与の方法を決めてくれます。審判による決定方法も離婚訴訟の場合と同様です。財産分与割合は2分の1ずつになって、どの財産をどちらが取得するかは裁判官が決めてしまいます。

(5)離婚後財産分与が請求できる期間は2年

離婚後も財産分与調停によって財産分与請求することができますが、これができるには期間制限があります。離婚後財産分与請求ができる期間は離婚日から2年間です。これを超えると、裁判所で調停を申し立てても受け付けてもらえなくなります。

離婚後2年が経過する前であれば、財産分与調停を申し立てておけば、調停成立日自体は離婚後2年が経過した日以後であっても調停は有効に成立します。審判も同じです。

よって、離婚後2年が経過しそうな場合には、とりあえず先に財産分与調停を申し立てて、財産分与の請求権を保全しておくことが必要になります。

8.財産分与に関するまとめ

今回は、離婚に伴う財産分与について解説しました。財産分与とは、夫婦が婚姻時に共同して積み立てた夫婦共有財産について、離婚時に分け合う手続きのことです。財産分与の対象になる財産は、基本的に預貯金や生命保険、株券や不動産などのすべての夫婦名義の財産です。子ども名義の預貯金や子どものための学資保険であっても、基本的には財産分与の対象になります。ただし、夫婦の一方が独身時代から持っていた財産や、婚姻中であっても夫婦のどちらかの親からの遺産や贈与を受けた財産は、財産分与の対象になりません。また、借金も財産分与の対象にはなりません。

財産分与の分与割合は基本的に夫婦が2分の1ずつになります。専業主婦であっても2分の1であり、夫婦の年収の多寡によって財産分与割合が変動することはありません。

財産分与を計算する際には、分割できる財産は半分ずつにしますし、分割できない財産については、その財産を取得した当事者が相手方に対してその半額を支払う形で清算します。

財産分与の基準時は基本的に離婚時になりますが、離婚以前に別居している場合には別居時の財産を基準とします。

財産分与の請求をする場合には、まずは夫婦で話し合いをすすめますが、それで決着がつかない場合には、離婚調停や離婚訴訟で解決することになります。

離婚後も財産分与請求ができますが、その期間は離婚後2年間になります。

今回の記事を参考にして、なるべく多くの財産分与を受けられるように適切に手続きを進めましょう。

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