B型肝炎の給付金対象者は?申請のための手続き方法も解説!

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過去に国による集団予防接種によってB型肝炎に感染してしまった人がいます。

集団予防接種によりB型肝炎に感染した母親から母子感染によってB型肝炎に感染したケースもあります。

このような場合、国に対してB型肝炎の給付金の請求ができます。

高額な給付金を受け取ることもできるB型肝炎給付金ですが、具体的には、どのような人が支給対象者になるのでしょうか?

B型肝炎の給付金請求のためにはB型肝炎訴訟という手続きが必要になりますが、訴訟提起の際にはいろいろな準備も必要ですし、注意点もあります。

そこで今回は、B型肝炎の給付金の支給対象者と、給付金請求のための具体的な手続き方法について解説します。

1.B型肝炎の集団感染と給付金制度について

過去に国が実施した集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けたために、B型肝炎に感染してしまった人がいます。

具体的には、昭和23年から昭和63年までの間に、幼少期の予防接種やツベルクリン検査を受けた人です。

この間、国は、予防接種やツベルクリン反応検査に使う注射器をきちんと処理せず使い回しをしたために、多くの子どもたちがB型肝炎に感染してしまいました。

そして、その後大人になってもウイルスを体内に持ち続けているB型肝炎ウイルスキャリアになってしまった人も大勢います。

厚生労働省の見解によると、現在日本国内にはB型肝炎の感染者は110万人~140万人いると推定されていますが、この中で、過去に国が行った集団予防接種などが原因でB型肝炎に感染してしまった人は、40万人以上いるという見解が出されています。

B型肝炎のウイルスキャリアになってしまうと、完治することは難しくなります。
無症状の間は良いですが、将来ウイルスが原因で、肝硬変になったり肝臓ガンになったりするおそれもあります。

このように、国の施策の失敗によって、多くの人がB型肝炎という重大な病気にかかってしまったことは大変な問題です。

そこで、国は、過去に国が行った集団予防接種が原因でB型肝炎に感染した人や母子感染した人を対象に、期間を限定してB型肝炎の給付金を支給しています。

これがB型肝炎の集団感染と給付金制度の概要です。

2.B型肝炎給付金の対象者

B型肝炎の給付金の対象者には、具体的には以下の3とおりのパターンがあります。

(1)一次感染者(集団予防接種等によって、直接B型肝炎ウイルスに感染した人)

まず、子どもの頃に集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けたことによって、直接B型肝炎ウイルスに感染した人が対象となります。

このように、直接感染した人のことを「一次感染者」と言います。

一次感染者が給付金の対象者となる場合、以下の要件が必要になります。

・B型肝炎ウイルス(HBV)に持続感染している

・満7歳までの間に集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けた

・子どもの頃に受けた集団予防接種やツベルクリン反応検査において、注射器の連続使用があった

・B型肝炎への感染原因が母子感染ではない

・その他、集団予防接種やツベルクリン反応検査以外にB型肝炎の感染原因がない

一次感染の場合には、実際に集団予防接種やツベルクリン反応検査によってB型肝炎に感染したことを証明する必要があります。

この場合、一過性の感染ではなく持続感染していることが必要です。

また、B型肝炎は、母子感染や輸血などの他の要因によっても感染するおそれがあるので、給付金を受け取るためには、それらの原因による感染ではないことも必要になります。

これらの要件を満たした人が、一事感染者としてのB型肝炎給付金の対象者となります。

(2)二次感染者(母親が一次感染者の場合に、母子感染によってB型肝炎ウイルスに持続感染した人)

自分自身が集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けていなくても、母親が一次感染者の場合には、妊娠中などに母子感染してしまうケースがあります。

B型肝炎は感染力が強いので、母親がB型肝炎のウイルスキャリア(持続感染者)の場合には、乳幼児はほとんど100%の確率でB型肝炎に感染します。

そして、そのうち90%の子どもがB型肝炎ウイルスを身体の中に持ち続けるB型肝炎ウイルスキャリアになってしまうのです。

このように、母子感染によってB型肝炎になった子どもに対しても、B型肝炎の給付金が支払われます。
母子感染によってB型肝炎に感染した人のことを二次感染者と言います。

集団予防接種などによって、母親が一次的にB型肝炎に感染したのに対し、子どもは二次的に感染したという考え方です。

二次感染者が給付金の支給を受けるための要件は、以下の通りです。

・母親が、一次感染者の要件をすべて満たしている

・請求者がB型肝炎ウイルス(HBV)に持続感染している状態である

・請求者のB型肝炎の感染原因が母子感染である

二次感染者の場合には、一次感染者である母親からの母子感染であることが必要になります。

よって、まずは、母親が幼少期頃に集団予防接種などによってB型肝炎に感染したことが必要になりますし、請求者本人が、その母親からの母子感染によってB型肝炎に感染したこと、さらにそれが一過性の感染ではなく持続感染状態(B型肝炎ウイルスキャリアになっていること)していることも必要になります。

(3)一次感染者や二次感染者の相続人

B型肝炎の給付金の対象者には、もう1つのパターンがあります。それは、一次感染者や二次感染者の相続人です。

一次感染者や二次感染者は、肝臓ガンや肝硬変などのリスクも高く、死亡しているケースがあります。
この場合には、給付金を請求出来る権利が相続人に相続されますので、相続人が給付金対象者となります。

相続人が給付金を請求するための要件は、以下のとおりです。

・一次感染者の要件をすべて満たしている人の相続人である

・二次感染者の要件をすべて満たしている人の相続人である

相続人がB型肝炎の給付金を請求する場合には、まず、被相続人が一次感染者の場合には、その証明が必要です。

具体的には、被相続人が(1)の要件をすべて満たしている必要があります。
その上で、自分がその一次感染者の相続人であることの証明が必要です。

相続人が二次感染者の場合には、被相続人(二次感染者)の母親が一次感染者であることと、二次感染者が母親から母子感染したこと、さらに、自分がその二次感染者の相続人出あることの証明が必要になります。

3.B型肝炎給付金の対象者がもらえる給付金の金額

集団感染B型肝炎の対象者が請求出来る具体的な給付金の金額は、その人のB型肝炎の症状によって異なります。

症状が重いほど、給付金の金額は高額になります。

最も重い症状の場合には3600万円、最も軽い症状の場合には50万円となります。

詳細は、以下の表に記載するとおりです。

病態等
給付金額

死亡・肝がん・肝硬変(重度)
3600万円

肝硬変(軽度)
2500万円

慢性B型肝炎
1250万円

20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎の方で、現在も慢性肝炎の状態にある方など
300万円

20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎の方で、現在は治癒している方    
150万円

無症候性キャリア
600万円

感染していて症状の出ていない方、20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア(特定無症候性持続感染者)      
50万円

4.B型肝炎給付金の請求方法

自分がB型肝炎の給付金対象者になっている場合には、具体的に請求手続きをとる必要があります。
B型肝炎の給付金の請求方法は、通常の給付金の請求方法と異なる部分がありますので、以下で説明します。

B型肝炎給付金をもらうためには、裁判所で訴訟手続きをとらないといけません。

たとえば一次感染者の場合には、訴訟手続き内において、過去の集団予防接種等が原因でのB型肝炎であることを証明し、他の感染経路による感染ではないことが証明されてはじめて、国からの給付金を受け取ることができます。

以下では、B型肝炎訴訟を起こして給付金を受け取るための具体的な手続き方法を説明します。

(1)弁護士に依頼する

B型肝炎訴訟を起こす場合、自分でも手続きができないわけではありません。

しかし、訴訟手続きは複雑で専門的な部分が多いですし、必要書類などもたくさんあります。
裁判所の指示に的確に対応して適切に行動しないと、スムーズに給付金を受け取ることが難しくなります。

そこで、B型肝炎訴訟を起こす場合には、弁護士に依頼する方が得策です。

弁護士に依頼したら、必要書類の指示をしてもらえますし、訴状を作成して裁判所に提出するなどの手続きや作業はすべて弁護士が代わりにしてくれるので、助かります。

弁護士にB型肝炎訴訟を依頼するためには、まずは弁護士事務所に行って法律相談を受ける必要がありますので、B型肝炎訴訟に積極的に取り組んでいる弁護士を探して法律相談の予約を入れましょう。

そして、B型肝炎訴訟についての説明を聞き、費用などの説明を受けて納得したら、具体的なB型肝炎訴訟の手続きを依頼します。

(2)訴訟の準備をする

弁護士にB型肝炎訴訟の手続きを依頼したら、訴訟を提起するための準備が必要です。

訴訟を提起するためには、B型肝炎給付金の支給対象者であることを証明するための書類を集めないといけません。

たとえば、自分がB型肝炎ウイルスのキャリアであることがわかる内容の血液検査結果や、母子感染による感染ではないことを示す資料(一次感染者の場合)、国の集団予防接種を受けた証拠(母子手帳など)、母親が一次感染者である証拠(二次感染者の場合)、医療記録などが必要です。

弁護士のアドバイスを受けながら書類を集めていきますが、すべて揃えるために、2ヶ月~半年くらいかかるケースもあります。

(3)B型肝炎訴訟を起こす

自分が給付金対象者であることの証拠を集めて訴訟の準備が整ったら、いよいよB型肝炎訴訟を起こします。

訴訟手続き内では、準備中に集めた資料や証拠を提出して、自分が集団B型肝炎の一次感染者であることや二次感染者、相続人などであることを証明します。

(4)和解をする

B型肝炎訴訟手続き内で、自分が集団B型肝炎の感染者や母子感染の感染者、相続人であることが証明できれば、国側と、症状の内容に応じて給付金の支払いを受ける内容の和解をします。

和解ができたら裁判手続きは終結して、後日裁判所から和解調書が送られてきます。
弁護士に訴訟手続きを依頼している場合には、和解調書を弁護士から受け取ることができます。

(5)社会保険診療報酬支払基金に申請をする

B型肝炎給付金を受け取るためには、B型肝炎訴訟で和解が成立しただけでは足りません。
和解調書を持っていても、そのままでは何の支払も受けられないのです。

具体的に和解で決まった給付金を受け取るためには、社会保険診療報酬支払基金に対して支払の申請をしなければなりません。
このとき、裁判所から届いた和解調書が必要になります。

必要書類を提出すれば、後日社会保険診療報酬支払基金から、給付金の振り込み送金を受けることができます。

5.訴訟にかかる費用

B型肝炎給付金を受け取るためには、訴訟を起こす必要がありますが、そのためには費用がかかります。
訴訟の費用としては、弁護士費用と裁判にかかる実費があります。

以下で、それぞれについてどのくらいかかるのかを説明します。

(1)弁護士費用

まずは弁護士費用について見てみましょう。

弁護士費用には、法律相談料があります。
これは、正式に弁護士に訴訟手続きを依頼する前に法律相談を受けるための費用です。

法律相談料については、多くの事務所が無料にしています。
次に、調査費用があります。

これは、実際にB型肝炎訴訟を起こす前に、本当にその人がB型肝炎の給付金対象者としての要件をそなえているかどうか、調査してもらうための費用です。

最近では、調査費用を無料にしている弁護士事務所が多いです。

弁護士に訴訟を依頼する場合には、着手金がかかります。
着手金とは、事件を依頼する際、当初にかかる費用のことです。

B型肝炎訴訟については、多くの弁護士事務所が着手金無料で対応しています。

最後に、成功報酬金があります。
これは、事件が解決した際に、事件解決方法に応じてかかってくる弁護士費用です。

成功報酬金については、実際に給付を受けられた給付金の〇%という決め方をすることが多いです。
成功報酬金の金額については各法律事務所によって差がありますが、給付金額の10%前後であることが多いです。

(2)裁判の実費

B型肝炎訴訟を起こす場合には、裁判の実費もかかります。
実費とは、弁護士に依頼せずに自分で手続きした場合にもかかる、純粋な裁判費用のことです。

裁判の実費には、印紙代と郵便切手代があります。
B型肝炎訴訟の印紙代は、請求する給付金の金額によって異なります。
給付金の金額が高ければ印紙代の金額も高額になります。

この場合の印紙は、収入印紙であり、郵便局で購入することができます。

具体的な病状と必要な印紙の金額は、以下の表のとおりになります。
    
B型肝炎の病状
印紙の金額

死亡・肝がん・肝硬変(重度)のケース
12万8000円

肝硬変(軽度)のケース
9万5000円

慢性B型肝炎(発症後20年経過していないケース)
5万9000円

慢性B型肝炎(発症後20年経過していて、現在も慢性B型肝炎の状態にあるケースなど) 
2万円

慢性B型肝炎(発症後20年経過、現在は治癒しているケース)  
1万3000円

無症候性キャリア(感染後20年経過していないケース) 
3万4000円

無症候性キャリア(感染後20年経過したケース)
5000円~

これらの印紙代に足して、郵便切手代が6000円程度かかります。

具体的な郵便切手の金額と組み合わせについては、各地の裁判所によっても異なるので、問い合わせて確認する必要があります。

郵便切手は、通常の郵便局で購入できるものでOKです。

(3)弁護士費用の補助について

B型肝炎訴訟は自分で手続きすることもできますが、できれば手続きを円滑にすすめるためにも弁護士に依頼する方法が望ましいです。

弁護士に依頼すると費用がかかりますが、B型肝炎訴訟では、弁護士費用の補助を受けることができます。

具体的には、給付金を受けた場合、その給付金の4%の金額が弁護士費用の補助として支払われます。

よって、たとえば弁護士にB型肝炎訴訟を依頼して、その弁護士事務所での成功報酬金額が10%だったとしても、依頼者の実質的な負担金額は、10%-4%=6%となります。

このように、弁護士費用について補助が受けられるので、B型肝炎訴訟を起こす場合には、是非とも弁護士に相談して力を借りると良いでしょう。

6.B型肝炎給付金にかかる期間

B型肝炎訴訟の給付金対象者となっていても、実際に給付金を請求して受け取るまではかなり期間がかかります。

まず、弁護士のところへ相談に行って、訴訟の準備をして訴訟で和解をして、最終的に給付金を受け取るまでには、1年~1年半くらいかかることが普通です。

よって、自分が給付金対象者となっている場合には、なるべく早めに請求手続きを開始すべきです。

7.多くの給付金対象者が未申請となっている

B型肝炎給付金の対象者は、全国で40万人以上いると言われていますが、その中で実際に給付金の請求をしている人は非常に少ないです。
1万5千人程度しかいないとも言われています。

これは、多くの人が、そもそもB型肝炎給付金のことを知らなかったり、自分は支給の対象者ではないと思い込んでいたりするためです。

支給金給付者となっているとしても、請求できる金額が50万円などの少額なので、いちいち給付金申請手続きをとらないという人もいます。

しかし、過去に国の施策ミスによって重大な病気にかかったのですから、きちんと権利を行使して給付金を受け取るべきです。

素人判断で自分が支給対象者ではないと考えていても、実は対象者になっているケースもあるので、何か少しでも心当たりがある場合には、1度B型肝炎のウイルス検査を受けてみたり、弁護士にB型肝炎訴訟についての相談をしてみたりすると良いでしょう。

まとめ

今回は、B型肝炎給付金の支給対象者と、B型肝炎訴訟による給付金申請の方法を解説しました。

過去に国が実施した集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けた場合、注射器の使い回しによってB型肝炎に感染しているケースがあります。

自分自身が直接感染したケース、母子感染したケース、感染者から請求権を相続したケースでは、B型肝炎給付金の支給対象者となります。

B型肝炎給付金の支給を受けるためには、B型肝炎訴訟を起こす必要があります。

弁護士費用の補助制度もあるので、B型肝炎訴訟を起こす場合には弁護士を依頼すると良いでしょう。

現在、多くの支給金対象者が、未だB型肝炎給付金を未申請の状態です。
自分が給付金対象者である可能性がある場合には、まずは検査を受けたり、弁護士に相談したりして給付金の請求ができないかを調べてみましょう。

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