起訴されないと請求できない、保釈手続の流れと保釈金の相場とは

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昨今、芸能人が薬物犯罪などで逮捕・勾留、起訴されるニュースをたびたび目にします。

保釈で釈放された芸能人が、警察署の前でテレビカメラに囲まれる姿をテレビで見た方も少なくないのではないでしょうか。

このように、刑事事件を起こした人が釈放される際によく耳にする「保釈」ですが、逮捕されてすぐの段階では、保釈できないことを御存じでしょうか?

保釈とは、刑事裁判を受けることになった人、つまり被告人だけが利用できる、釈放の制度の一種なのです。

もし、今、家族や友人が起訴され、被告人として勾留されている場合、ぜひ保釈を目指して活動してください。

保釈されると、釈放されて家に帰れるだけではなく、刑事裁判に向けた準備ができる等、さまざまなメリットがあります。

ただし、保釈は何もしなくても警察や検察、裁判所が釈放してくれるというものではありません。
保釈の条件を満たす場合に、保釈を請求してこれが認められ、保釈金の納付を行って初めて釈放される制度なのです。

犯した罪の重さや状況によっては、保釈が認められず、留置場や拘置所での拘束が続くケースも少なくありません。

万が一、家族や知人が起訴され、身柄の拘束が続く場合に、釈放してもらうためにはどうしたらいいのでしょうか。
今回は、保釈手続きの内容や、保釈で釈放されるための方法について解説します。
 

1.保釈が認められるケースとは~刑事手続きの流れと保釈されるタイミング

(1)起訴されないと保釈されない、刑事手続きの流れとは?

家族や知人が逮捕された場合、多くの人が「保釈してほしい」と考えると思います。
しかし、保釈は逮捕直後には請求することはできず、起訴された後しか利用できない制度です。

ここで、保釈手続きができる時期はいつなのか、刑事手続きの流れを見ておきましょう。

犯罪を行って警察に逮捕されると、警察署内の留置場に入れられるのが通常です。

事案によってはすぐに釈放される場合もありますが、釈放されない場合は逮捕から48時間以内に検察庁で面談を受け、釈放の可否が判断されることになります。

検察官が、被疑者を釈放すると証拠隠滅を図ったり逃亡するおそれがあると考えた場合は、裁判官に対して引続き身柄を拘束する命令を出すよう求め、裁判官が被疑者の言い分を聞いて釈放の可否を判断します。

引き続き拘束すべきと判断されると10日間(最大20日間延長される)身柄の拘束が続き、これを被疑者勾留といいます。

この間は、まだ保釈の請求はできません。

この勾留期間が満了するまでに、検察官は、事件を不起訴にするか、あるいは略式起訴か正式裁判で起訴するかを決めて処分を下します。

不起訴になった場合は、釈放されて前科もつきません。

略式起訴の場合は、罰金の納付と引き換えに釈放されますが、前科がつきます。
起訴された場合は、まず被疑者の呼び名が「被告人」に変わります。

そして、留置所で引き続き身柄が拘束されているケースでは、保釈の請求が可能になり、認められると保釈で釈放される場合があります。

(2)保釈手続きができるタイミング~保釈手続きの内容とは?

保釈とは、上記のように、犯罪の容疑をかけられて逮捕された後、検察官によって起訴され、留置場や拘置所で拘束されている場合(被告人勾留)、一定金額の保証金を納めることを条件として釈放される制度のことをいいます。

保釈は、起訴された後にのみ認められる制度なので、逮捕の後、10日から20日間続く起訴前勾留(被疑者勾留)の間は認められません。

保釈が認められて釈放されるためには、裁判所によって定められた自宅などの住居に住み、呼び出された場合は出頭し、逃亡しないなどの条件を守らなければなりません。
加えて、保釈保証金(保釈金)を納付する必要があります。

保釈条件を破ると、この保釈金は没取されますが、条件を破らなければいずれ返金されます。

(3)保釈が認められるケースとは?

上記のように、保釈手続きは起訴後に利用できる釈放の手続きですが、身体拘束されていれば必ず認められるというわけではありません。

保釈には①権利保釈、②裁量保釈、③職権保釈という3つの種類があり、これらに該当する場合に認められ、釈放されることができるのです。

①権利保釈

保釈請求は、原則認め、例外的な場合にのみ認めないのが原則です。

権利保釈とは、例外的な場合を除いて、当然の権利として認められる保釈のことをいいます。
例外的な場合とは、次の6つの場合です。

・死刑、無期又は短期1年以上の懲役、禁錮にあたる罪を犯したとき

・前に死刑、無期又は長期10年を超える懲役、禁錮にあたる罪の前科があるとき

・常習犯で、長期3年以上の懲役、禁錮にあたる罪を犯したとき

・罪証隠滅のおそれがあるとき

・被害者や事件の関係者、その家族などを脅したり危害を加えるおそれがあるとき

・被告人の氏名又は住居が分からないとき

具体的には、被告人が犯罪を行たったことを否定している否認事件や、複数の人間がかかわった共犯事件などでは、上記の理由に該当するとして保釈が認められる可能性は低いと言えるだろう。

②裁量保釈

裁量保釈とは、上記6点のどれかに該当する場合でも、事情を考慮して保釈が相当であると裁判所が判断した場合に認められる保釈のことをいいます。

被告人の身元や住所が明らかで逃亡の恐れが低く、また保釈を認める必要性が高い場合で、具体的には、病気のため外部の治療が必要であるとか、これ以上休むと解雇の可能性が高い等の場合に認められることがあります。

③職権保釈

勾留による身柄拘束が不当に長くなった場合に、裁判所が自らの判断で釈放を認める保釈のことをいいます。
とはいえ、実務上ほとんど認められないのが実情です。

2.保釈手続きの流れとは~保釈で釈放されるための主張のポイント

(1)保釈手続きの流れとは?

保釈は、基本的に、拘束されている被告人の側から、裁判官に保釈を認めてもらうよう保釈の請求を行う必要があります。

保釈の請求は、法律で保釈を請求することができると規定されている人なら誰でも行うことができます。

ただし、保釈手続きはタイミングや専門的な知識も必要になるので、実際は弁護士が依頼を受けて保釈請求を行うのが通常です。

弁護士が間に入った場合の保釈手続きは、次のような流れで行うことになります。

①受任

事件について弁護契約を締結します。弁護士に保釈手続きを依頼する場合は、弁護契約を結ぶことが前提となります。

②準備

弁護人が被告人や検察官と面談し、保釈請求の準備を開始します。

③書類作成

保釈請求書や関連書類を作成します。具体的には、保釈が認められるべき理由や、釈放されても問題がない旨を示していくことになるでしょう。

④書類提出・交渉

裁判所に書類を提出し、検察官の意見を踏まえて裁判官を説得します。

⑤保釈金納付

保釈の裁判を待って、保釈保証金を納付します。

⑦実現

保釈で釈放されます。

保釈が認められるためには、上記の流れ以外にも、身元引受人を用意したり、釈放後のサポート体制を整えたりと、多方面での調整が必要不可欠です。

加えて弁護人は、裁判官に保釈を認めてもらえるよう書類を提出し交渉すると同時に、検察官にも保釈を許す意見を提出してくれるよう交渉を進めていきます。

こうした一連の活動によって保釈の請求が認められると、晴れて被告人の身柄が解放されることになるのです。

(2)保釈手続きで主張すべき内容とは?

保釈手続きで主張する内容は、保釈の必要性、つまり被告人に保釈を許さなくてはならない理由が中心となります。

まず、被告人の身柄拘束が続くと、被告人はもちろん被告人の周囲の人までが甚大な被害を受けるという事情がその一つです。

具体的には、例えば、被告人が長期に身柄を拘束され不在にしていることで勤務先の業務に重大な支障が生じることや、被告人の身柄の拘束が続き会社を首になると家族が路頭に迷うこと、被告人が自営業の場合は会社経営が成り立たず倒産や従業員の解雇につながる恐れがあること、などを主張していきます。

また、被告人の個人的な事情も主張すべき内容の一つです。

具体的には、被告人が高齢だったり、健康上に問題があるような場合は、勾留に耐えられる状態ではないという事情を、診断書などの証拠を用いて具体的に主張していくことになります。

保釈を認めてもらうための主張は、事実に即して行う必要があるので、弁護人が被告人の現状に問題があると考えた場合は、被告人やその家族に現状の改善を求める場合もあります。

具体的には、電車内の痴漢容疑で起訴されたケースで、裁判所が「被告人は被害者を脅して証言をさせない恐れがある」として保釈を認めない場合には、被告人の通勤ルートを変えたり、一時的に転居することを勧めるなどの助言を行うこともあります。

3.保釈金の相場とは~保釈金の納付方法と返金の仕組み

(1)現金一括納付が原則、保釈金の納付方法とは

保釈で釈放してもらうには、裁判所の裁判で保釈の請求が認めてもらうことと同時に、裁判所が指定した金額を裁判所に納付しなければいけません。

このお金のことを「保釈保証金(保釈金)」といいます。

保釈金は保釈請求者が支払うのが原則ですが、裁判所の許可があれば、保釈請求者や被告人本人ではない者が保釈保証金を代わりに納付することも可能です。

保釈金は、裁判終了まで無事に過ごせば全額返金されます。

しかし、保釈で釈放された被告人が、決められた裁判に出頭しなかったり、被害者や証人を脅すなどした場合には、没収される可能性があるので注意しましょう。

保釈金は、例外はありますが、原則として現金で一括納付するのが実務の運用です。

保釈請求を認めてもらうためには弁護人に依頼するのが一般的ですが、その場合は、弁護人や法律事務所の職員が、被告人の家族などから預かった現金を裁判所に持参して納付します。

そして、保釈の条件に違反せず無事に裁判を終えた場合に保釈金は返金されますが、弁護人が納付した場合は、弁護人に返還されるのが通常です。

保釈金を一括で用意することが難しい場合は、「保釈支援協会」などの保釈を専門に融資する機関もあるので、弁護人に尋ねてみるとよいでしょう。

(2)資力や事件によって変わる、保釈金の相場とは

保釈金には、「このお金が戻ってこなければ困る」という、被告人の出頭の担保と逃走予防の目的があります。
そのため、被告人の逃亡などを阻止するために、心理的な圧力をかける程度の額が設定されます。

したがって、保釈金の金額は、被告人の資力や財産状況、事件に応じて様々です。
通常、被告人の資力が高いほど、また事件の重大性が増すほど保釈保証金の金額は高額になりがちです。

有名人の保釈金では数百万円から多いところで数千万円に上るケースもありますが、一般的な目安としては、保釈金の最低ラインは100万円~150万円程度というのが実務の運用といえるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?

「保釈」という言葉はよく耳にしても、請求できるタイミングや金額についてはあまり知られていないことも多いと思います。

万が一、家族や知人が逮捕・勾留され、起訴された場合は、保釈請求を行って一刻も早い釈放を目指したいところです。

このような場合は、まずは弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。

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