平成20年以前頃に、消費者金融会社やクレジットカード会社のキャッシングを利用していた人は、利用していた消費者金融会社やクレジットカード会社に対して過払い金請求ができる可能性があります。
過払い金請求をすると、借金していたにもかかわらずたくさんのお金が手元に戻ってくるので助かりますが、デメリットはないかが心配です。
ブラックリスト状態になるのではないかが問題になりますが、そもそもブラックリスト状態とはどのような問題なのでしょうか?
また、過払い金請求をした場合その他に生活に支障が出ることがないのかも知っておく必要があります。
そこで今回は、過払い金請求によってブラックリスト状態になるのかについて、解説します。
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目次
1.過払い金請求とは
最近、テレビCMやラジオCMなどで、よく過払い金請求をしよう、と聞くことがあります。
過払い金請求をすると多額のお金が返ってくることがあると言われますが、過払い金請求とはどのような手続きなのでしょうか?
過払い金請求は、過去に消費者金融やクレジットカード会社などとの間で高利率で取引していた場合に、払いすぎた利息を取り戻すことができる手続きのことです。
お金を貸す場合には、利息制限法という法律で貸付利率の上限が定められています。
具体的には、借金が10万円未満の場合には年利20%、10万円以上100万円未満の場合には年利18%、借金額が100万円以上の場合には年利15%とされています。
ところが、過去平成22年より以前には、借金の利息を利息制限法を超えて取り立てても、出資法未満の利率であれば刑事罰を受けることがありませんでした。
出資法では、29.2%の利息まで取り立てることが認められていたので、多くの消費者金融やクレジットカード会社などが「利息制限法以上出資法未満」の利率で貸付をしていました。
ところがその後の判例の積み重ねによって、このような高い利息の支払いは不要であったということが確立されました。
そこで、利息制限法を超えて支払った利息については、すべて取り戻すことができるようになったのです。
これが過払い金請求の正体です。
ただし、消費者金融などが高利率で貸付をしていたのは、平成20年頃までのことです。
貸金業法や利息制限法、出資法は、貸付の制限利率を利息制限法の上限利率に定めるべく、改正され、平成22年6月に施行されています。
この改正を見越して、多くの消費者金融会社やクレジットカード会社は、平成20年頃には利息制限法以上の利率でお金を貸し付けるのをやめてしまったのです。
そこで、過払い金はだいたい平成20年頃までの取引の分しか発生しないのです。
平成20年頃より前に消費者金融やクレジットカード会社などと取引していた場合には、業者に対して過払い金請求ができる可能性があり、その場合、百万円を超える多額の過払い金を回収することができるケースもあります。
2.過払い金請求をするタイミング
過払い金請求をする場合、どのタイミングで行うかという問題があります。
具体的に言うと、借金の完済後に過払い金請求をするか、借金返済中に手続きをするかという問題です。
結論から言うと、どちらのタイミングでも請求をすることは可能です。
ただし、借金返済中に過払い金請求をする場合には、過払い金が発生したとしても、まずは借金返済に充てないといけないので、回収できる過払い金の金額がさほど大きくなりにくい特徴があります。
また、借金返済中に過払い金請求をすると、今回問題となっているブラックリスト状態になってしまうおそれがあることにも注意が必要です。
3.ブラックリスト状態とは
過払い金請求をすると、借金していたにもかかわらず多額のお金の返還を受けることができます。
このお金は完全に自由に使える臨時収入なので、とても助かります。
このようにメリットばかりが強調されやすい過払い金請求ですが、過払い金請求をすることによってデメリットはないのでしょうか?
以下で具体的に見てみましょう。
(1)ブラックリスト状態になるとローン、クレジットが利用できない
過払い金請求によってブラックリスト状態になるのではないかという問題があります。
ブラックリスト状態とは、個人信用情報に事故情報が記録されて、ローンやクレジットカードなどが利用できなくなった状態のことです。
個人の借入などについての個人信用情報は、信用情報機関という機関によって保有管理されています。
指定信用情報機関には、CICとJICC、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つがあります。
クレジットカード会社の多くはCICに、消費者金融会社の多くはJICCに、銀行や信用金庫などの金融機関の多くはKSCに加盟しています。
そして、これらの貸金業者や金融機関は、個人から融資の申込みを受けると、加盟している信用情報機関にその人の個人信用情報を参照します。
いわゆる信用力のチェックの手続きです。
ここで、その個人信用情報に問題のある情報が登録されていたら、審査に通さないという扱いにしているのです。
ところが、債務整理手続をすると、個人信用情報に異動情報(事故情報)というネガティブな情報が記録されてしまいます。
この異動情報があることによって、その人はどこの銀行や消費者金融などに申込みをしても、融資を受けられなくなってしまいます。
クレジットカード会社も信用情報機関に加盟しているので、債務整理によって事故情報が記録されてしまうと、自分名義でクレジットカードを作ることもできません。
このように、個人信用情報に事故情報が記録されていることによって、ローンやクレジットカードを利用できなくなってしまった状態のことを、俗にブラックリスト状態と言っています。
ブラックリストとは言っても、本当に何らかのリストが存在するわけではなく、個人信用情報に事故情報が記録された状態のことをわかりやすく「ブラックリスト」と言っているだけです。
(2)ブラックリスト状態になるとできなくなること
ブラックリスト状態になると、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか?
以下で、ブラックリスト状態になるとできなくなることをご説明します。
まず、消費者金融でキャッシングなどの借金をすることはできなくなります。
また、銀行ローンや信用金庫のローンも利用できません。
住宅ローンや車のローン、教育ローンなどの各種のローンも一切利用できなくなります。
政府系の公庫からの借入も、審査に通らないので利用できなくなります。
さらに、クレジットカードの審査にも通らないので、クレジットカードを発行してもらうこともできません。
商品やサービスの分割払いもできなくなるので、たとえば携帯電話の機種変更の場合にも、端末代の分割払いはできなくなります。
携帯電話の契約自体はできるので、端末代を一括払いすれば電話を利用すること自体は可能ですが、端末代は数万円することが普通なので、大きな負担になります。
また、ブラックリスト状態になると、他者の借入の連帯保証人になることもできなくなります。
すると、たとえば夫が住宅ローンを組む場合に自分が連帯保証人になって、夫婦の収入を合算することもできませんし、子どもが奨学金を借りる場合に連帯保証人になることもできません。
賃貸住宅を借りる場合、通常の契約ならできますが、家賃支払い方法にクレジットカードを利用する契約の場合には、利用できなくなることがあります。
このように、ブラックリスト状態になると、生活にとって大変大きな支障が出てしまいます。
このことは、債務整理の最大のデメリットであると言っても良いでしょう。
(3)ブラックリスト状態の期間
債務整理によってブラックリスト状態になる期間はどのくらいなのでしょうか?
これについては、利用する債務整理方法や事故情報が記録される信用情報機関によっても異なりますが、債務整理手続後だいたい5年~10年程度は継続することが普通です。
よって、債務整理手続をしたら、手続き後5年~10年程度はローンやクレジットカードを利用できなくなってしまうことになります。
4.過払い金請求ではブラックリスト状態にならない
以上のように、債務整理をするとブラックリスト状態になって大変不便な生活を強いられることになります。
過払い金請求も債務整理の1種なので、手続きすることによってブラックリスト状態になってしまうのでしょうか?
もしそうだとすると、過払い金請求手続きを辞めておこうと思う人も出てくるでしょう。
この点、過去には過払い金請求をした場合でも個人信用情報に事故情報が記録されて、ブラックリスト状態になっていた時代がありました。
具体的には、過払い金請求をすると個人信用情報に「契約見直し」等の情報が登録されて、ローン審査に通らなくなっていたのです。
しかし、その後、過払い金請求をする場合というのは、そもそも借金は完済している状態なのだから、他の債務整理とは異なるし信用力が問題になるケースではないとの批判が高まりました。
そこで、金融庁は「過払い金請求は信用力に問題があるケースではないから、手続きによって信用情報機関に情報登録されるべきではない」という見解を示したのです。
これを受けて、過払い金請求をした場合には、個人信用情報に事故情報が記録されることはなくなりました。
よって、過払い金請求をしてもブラックリスト状態になることは基本的にはなくなりました。
今、過払い金請求をしてもブラックリスト状態にはならないので、そのことを理由として過払い金請求を躊躇する必要はありません。
5.過払い金請求でブラックリスト状態になるケース
過払い金請求をしても、基本的にはブラックリスト状態にはなりません。
しかし、場合によっては間違って過払い金請求しただけで事故情報が記録されてしまうケースがあります。
それは、任意整理をして、その手続の途中で過払い金が発生していることが判明したケースです。
任意整理をする場合、弁護士が債権者に受任通知を送った段階で個人信用情報に事故情報が記録されてしまうことがあります。
この場合、その後の利息制限法引き直し計算などによって、実は過払い金が発生していて借金は完済出来ていることが判明したとしても、いったん記録された事故情報が消えずに残ってしまう場合があるのです。
そうなると、過払い金請求後にローンやクレジットカードを利用しようとして審査を受けても、事故情報が残っているために審査に落ちてしまうことになります。
このように、過払い金請求をする場合、特に借金返済中のタイミングで手続きをすると、稀に間違ってブラックリスト状態になってしまうことがあるので注意が必要です。
6.間違ってブラックリスト状態になった場合の対処方法
過払い金請求をしただけなのに、間違ってブラックリスト状態になってしまった場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか?
この場合、信用情報機関に対して事故情報を通知した債権者に対し、事故情報の取り消し請求をすることができます。
具体的には、
「御社による通知のために事故情報が記録されてしまいましたが、御社との取引は完済して過払い金の返還を受けています。そこで、事故情報を取り消すよう請求します。14日以内に取り消さない場合には、金融庁に申立をします。」
などの記載をすると良いでしょう。
また、貸金業者に事故情報取り消し請求をしてもすぐに対応してもらえない場合などには、事故情報を登録している信用情報機関そのものに対しても訂正申立をして受け付けてもらえるケースがあります。
まずは、信用情報機関に個人情報開示申立をして情報の開示を受け、どこの信用情報機関に事故情報が記録されているのかを調べてから、問題のある記録が残っている機関に対して訂正請求をしてみましょう。
これらの手続きをとれば、いったん間違ってブラックリスト状態になってしまっても、事故情報の記録を消してもらってまたローンやクレジットカードの利用ができるようになる可能性が高いです。
7.過払い金請求のデメリットは?
過払い金請求をしてもブラックリスト状態にはなりませんが、他にデメリットはないのでしょうか?
以下で解説します。
(1)手続きが煩雑
過払い金請求を自分で手続きする場合の問題ですが、過払い金請求は非常に手続きが煩雑です。
まず、相手方業者に連絡を入れて取引履歴を取り寄せ、それを利息制限法に引き直し計算しなければなりません。
計算を間違えると過払い金の発生の有無や金額が異なってくるので、丁寧に一つ一つの取引を入力していく必要があります。
また、過払い金請求書を作って内容証明郵便で送付したり、業者との返還条件についての交渉も自分でしないといけません。
このように手間がかかることは、普段忙しく働いている人などの場合などには、多大な負担となってしまいます。
このことは、過払い金請求の大きなデメリットとなります。
(2)家族に借金問題がバレる
過払い金請求をしたい場合、家族に過去の借金を秘密にしているケースがあります。
この場合、自分で過払い金請求の手続きをすると、家族に不審がられて過去の借金がバレてしまうおそれがあります。
過払い金請求手続きをする場合には、家で利息制限法引き直し計算をしたり、いろいろな文書を作ったり、しょっちゅう業者と電話や郵便でやり取りする必要があります。
このような作業や交渉を同居の家族に知られずに行うのは極めて困難です。
しかし、せっかく秘密にしたまま完済した借金問題が、過払い金請求手続きによってバレてしまうことは大きなデメリットとなります。
8.弁護士に依頼する方法
過払い金請求を自分で手続きすると、さまざまなデメリットがあります。
上記のように、煩雑な手続きが必要になりますし、家族に借金問題がバレてしまうおそれもあります。
また、自分で業者と交渉していると、法的知識の不足につけ込まれて、不当に低い条件で和解させられることもあります。
たとえば、100万円の返還請求ができる事案でも、10万円の返還しか受けられないケースもあります。
このようなデメリットを避けるためには、弁護士に過払い金返還請求を依頼すると良いです。
弁護士に依頼すれば、面倒な手続きはすべて弁護士がしてくれますし、業者との連絡や交渉はすべて弁護士がしてくれるので、家族に借金問題がバレることもありません。
また、弁護士であれば交渉力も高いので、業者につけこまれて不当な条件で和解してしまうおそれもありません。
最大限の過払い金を回収してくれるでしょう。
ただし、弁護士に依頼すると弁護士費用がかかることはデメリットとなります。
過払い金請求をする場合には、着手金が2万円~4万円程度、成功報酬金が回収できた過払い金の金額の15%~20%程度はかかると考えると良いでしょう。
ただ、どちらにしても過払い金請求権がある場合には、きちんと権利を行使してお金を回収する方がメリットが大きいです。
放っておくと時効(過払い金請求権の時効は10年)にかかるリスクもありますので、早めに弁護士に相談するなどして手続きした方が良いでしょう。
まとめ
今回は、過払い金請求をするとブラックリスト状態になるのかという問題について解説しました。
債務整理手続をすると、ローンやクレジットカードなどが利用できなくなるブラックリスト状態になってしまいます。
ただ、過払い金請求をしてもブラックリスト状態にはなりません。
また、もし間違ってブラックリスト状態になってしまったとしても、貸金業者に事故情報取り消し請求をしたり、信用情報機関に訂正請求をすることによって、事故情報を消してもらうことができます。
過払い金請求を自分ですると、手続きが煩雑であったり家族に過去の借金がバレルナどのデメリットがあります。
手続きをとりたい場合には、弁護士に依頼する方法がおすすめです。
過払い金請求権には10年の時効もあるので、自分にも過払い金が発生しているかも知れないと思う人は、早めに弁護士に相談に行ってみましょう。