ページが見つかりませんでした – 法律相談や弁護士検索なら「ホウツウ」 https://how2-inc.com 日本一わかりやすい法律情報と弁護士・法律事務所が簡単に見つかる法律相談サイト。 Fri, 08 Mar 2024 09:02:32 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.0.21 相手が一時停止無視した場合の過失割合は?自身の過失を正しく理解する為の全知識 https://how2-inc.com/halt-disregard-error-ratio-9970 Fri, 29 Dec 2017 06:30:05 +0000 https://how2-inc.com/?p=9970 車を運転する人の中には、一時停止を無視した車が飛び出してきてひやりとした経験がある方も多いのではないでしょうか。

もし、実際に一時停止無視の車と事故になった場合に、過失割合がどの程度になるのか、相手方が一時停止無視をしたことをきちんと理解してもらえるのかが気になる方もいるかと思います。

交通事故に遭って損害賠償の計算をする際には、この過失割合が大きな意味を持ちます。

それだけに、万が一事故にあった場合に備えて過失割合について理解しておくことは安心にもつながるでしょう。

今回は、一時停止無視をした車と交通事故を起こした場合に知っておきたい過失割合について説明させていただきます。

1.過失割合の基本的な考え方

(1)過失割合の基本ルールとは

交通事故では、被害者・加害者という分類はされるにしても、どちらかが完全に悪いというケースは決して多くありません。
程度の差はあれ、交通事故の当事者の双方に責められても仕方がないという点があるのが通常です。

この責められて手もやむを得ないという点の割合を過失割合と言い、事故の状況によって目安が決められています。

具体的には、判例タイムズ社が発行する「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本に載っている基準がもとになるのが、裁判官や弁護士の間では通例になっています。

(2)過失割合の修正が必要な場合とは

実際の事故の場合には、この基礎となる過失割合(「基本過失割合」と言います)に、様々な修正の要素を加えて、その事故独自の過失割合を決めていきます。

修正要素の内容は、事故によっても異なりますが、多岐にわたるのが特徴です。

具体的には、事故当時の時間が夜間であったか、当事者の一方が高齢者であったか、車の整備はきちんとされていたか、道路の幅員はどの程度であったかなど、様々です。

加害者側の過失割合をプラスする要素もあれば、逆に被害者側に落ち度があったとして加害者側の過失割合がマイナスされる要素もあります。

2.状況別に見る一時停止無視の事故―自動車と自動車の場合


信号がない交差点で、自動車と自動車が事故を起こし、一方に一時停止無視があったケースです。

(1)信号がない交差点において、片方だけ一時停止規制があるケースの基本過失割合

信号のない交差点で、左からくるA車には一時停止規制はないけれど、右からくるB車に一時停止規制がある場合に、事故になったケースを想定してみましょう。

A車とB車の基本過失割合は次のようになります。

  • A車、B車ともに同じ程度の速度で走っていた場合・・・A:B=20:80
  • A車、B車ともに減速していなかった場合・・・A:B=10:90
  • A車が減速せず、B車だけが減速した場合・・・A:B=30:70
  • A車が減速したが、B車が減速しなかった場合・・・A:B=10:90
  • B車が一時停止をした後で交差点に進入した場合・・・A:B=40:60

(2)自動車同士の一時停止無視の事故で修正される要素とは

基本過失割合を確認した後は、それぞれの事故の状況に応じて、修正要素を加味して過失割合を決めていくことになります。

交差点のどちらかに一時停止規制があるケースでは、一時停止規制がある方の運転手が一時停止無視をしたことを前提にして、基本過失割合が決められています。

ただし、一時停止を無視した側に過失があったような場合は、過失割合が修正されることがあります。
過失の内容は、具体的には以下のようなものがあります。

①著しい過失

  • 脇見運転の著しい前方不注視
  • 著しいハンドルミスやブレーキミス
  • 酒気帯び運転
  • 時速15~30km未満の速度違反

著しい過失の場合は10%の修正がされます。

②重大な過失

  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • 酒酔い運転
  • 故意に準じるような悪質な嫌がらせ運転
  • 時速30km~の速度違反

重大な過失が認められる場合は、20%の修正がくわえられます。

具体的には、スマホを操作舌ながら運転で一時停止を無視して事故が起きた場合や、飲酒運転をしていたと言った事情がある場合には、過失割合が10:90や、場合によっては0:100で評価されることもあります。

他方、一時停止規制がある側の運転手が一時停止をしたけれど、反対側の運転手が急スピード出してしまい事故を起こしたような場合もあります。

このようなケースでは、一時停止した側の過失割合がマイナスされ、その分反対の当事者にプラスされることになるので注意が必要です

3.状況別に見る一時停止無視の事故―自動車と二輪車の場合


信号のない交差点で、左からくるA車には一時停止規制はないけれど、右からくるBバイクに一時停止規制がある場合に、事故になった場合の基本過失割合は次のようになっています。

(1)信号がない交差点において、バイクにだけ一時停止規制があるケースの基本過失割合

  • A車、Bバイクともに同じくらいのスピードだった場合・・・A:B=35:65
  • A車、Bバイクともに減速していなかった場合・・・A:B=35:65
  • A車が減速せず、Bバイクだけが減速した場合・・・A:B=45:55
  • A車が減速したが、Bバイクが減速しなかった場合・・・A:B=20:80
  • Bバイクが一時停止をしてから交差点に進入した場合・・・A:B=55:45

ただし、この基本過失割合は、人身事故になった場合に限られます。

通院していない場合、物損のみの場合、診断書がない場合には、自動車対自動車の過失割合が利用されることになります。

(2)自動車とバイクによる一時停止無視の事故で修正される要素とは

自動車とバイクの事故でも、著しい過失があった場合は10%、重大な過失と評価される事情があった場合は20%の修正がくわえられます。

著しい過失、重大な過失の内容は、自動車対自動車の場合と同じで、以下の内容が該当します。

①著しい過失

  • ヘルメット未着用の運転
  • 脇見運転の著しい前方不注視
  • 著しいハンドルミスやブレーキミス
  • 酒気帯び運転
  • 時速15~30km未満の速度違反

②重大な過失

  • 曲乗りなど、明らかに危険な運転
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • 酒酔い運転
  • 故意に準じるような悪質な嫌がらせ運転
  • 時速30km~の速度違反

このように、バイク特有の事情として、ヘルメットの着用の有無や、曲乗り、蛇行運転などの走行方法が要素に含まれます。

4.状況別に見る一時停止無視の事故―自動車と自転車の場合


昨今、ロードバイクの流行もあり、車道を高速で走る自転車も増えています。
また、自転車は利用に年齢制限がないことから、自転車の一時停止無視による事故には、他の乗り物にはない独特の検討事項があります。

信号機が設置されていない交差点において、左からくるA車には一時停止規制はないけれど、右からくるB自転車に一時停止規制がある場合に、事故になった場合の基本過失割合は次のようになっています。

(1)信号がない交差点の片方にだけ一時停止規制があるケースの基本過失割合

自転車と自動車では、速度の違いは問題にならないので、基本過失割合は以下のようになります。

A車、B自転車=60:40

(2)自動車と自転車の一時停止無視の事故で修正される要素とは

自転車の一時停止無視による事故の場合、利用者の状況や事故時の状況によって、自転車側に修正がくわえられる場合と、自動車側に修正がくわえられる場合があります。

①自転車側に加算される修正要素

  • 自転車が道路の右側を走行していた場合(5%加算)
  • 夜間の走行(5%の加算)
  • 著しい過失があった場合(10%の加算)
  • 重大な過失があった場合(15%の加算)

自転車の過失割合の修正内容は多岐にわたります。

具体的には、二人乗り運転、片手運転、傘さし運転、無灯火運転、自転車の整備不良、携帯やスマホを操作しながらの運転、犬の散歩をしながらの運転、イヤホンやヘッドホンの着用などがあります。

②自動車側に加算される修正要素

  • 自転車が横断歩道を渡って運転していた場合(5%の加算)
  • 自転車に乗っていたのが児童・高齢者の場合(10%の加算)
  • 自転車が一時停止をしていた場合(10%の加算)
  • 自転車が自転車横断帯を渡って運転していた場合(10%の加算)
  • 自動車側の著しい過失があった場合(10%の加算)
  • 自動車側の重大な過失があった場合(20%の加算)

自転車と自動車の事故では、運転弱者の保護という観点から、自動車側に高い過失割合が認められる傾向にあります。

自転車の一時停止無視は、日常的に想定できる事故のケースではありますが、交差点付近では減速・徐行するなど、万が一の場合に備えた運転を心がけることが、身を守るすべになるとも言えるでしょう。

5.一時停止無視の事故の過失割合で揉めた場合の対処方法は


これまでお話ししてきたように、一時停止が原因で交通事故が発生した場合、基本過失割合をもとに様々な修正要素を加えて、個別の事故毎に過失割合を決めていくことになります。

事故の状況は、ケースによって様々ですし、ドライブレコーダーなどの証拠がないと、そもそも一時停止の有無から争うことにもなりかねません。
更に、減速の有無や詳細な過失の認定になると、実務で認められるのは難しいのが実情です。

認定された過失割合に納得ができない場合は、まずは交通事故問題を扱う経験がある弁護士に相談することが問題解決の近道になります。

保険会社からの提案に応じて示談をすると、後から覆すことは原則としてできません。
過失割合は、相手に請求する損害賠償の金額を決める上でもとても重要なことなので、心配な場合は早く相談してみましょう。

まとめ

いかがでしょうか。
相手側に一時停止無視があっても、思うように過失割合が認められないこと、交通ルールを守っていても、自動車側に厳しい過失割合が認められやすいことに、運転する怖さを阿感じた方もいるかもしれません。

自動車、バイク、自転車を問わず、一時停止無視をする人は少なからずいます。
そのため、思わぬ交通事故の当事者になってしまう可能性も否定できないのが現実です。

万が一相手の一時停止無視で交通事故に巻き込まれた場合や、過失割合の認定に疑問がある場合は、迷わず弁護士に相談してください。

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子供の飛び出しによる過失割合は?信号の有無や不注意など状況別で解説 https://how2-inc.com/elutriation-error-ratio-9960 Tue, 26 Dec 2017 06:01:04 +0000 https://how2-inc.com/?p=9960 小さいお子さまがいる方にとって、子どもの交通事故は日々心配なテーマの一つではないでしょうか。

昨今、通学中の列に自動車が突っ込んでくるという悲惨な事故も発生していますが、子どもの飛び出しによる交通事故も少なくありません。

実は、交通事故で死傷した人の世代で最も多いのが、小学1年生の世代である7歳児なのです。

そして、交通事故で子どもが死傷した理由で多いのが、飛び出しによるものです。
これは、運転手の前方不注意とほぼ同程度に多くなっており、全体の40%を占めるのが実情です。

子どもの交通事故では、親の監督責任が問われることもあり、過失割合の認定にも大きく影響するという特徴があります。

今回は、子どもの飛び出しで交通事故が発生した場合における状況別の過失割合の考え方と、いざという時に知っておきたい弁護士の頼み方を解説します。

1.子どもの過失割合を考える際に必要な3つの基準とは

(1)過失割合の基本ルールと子どもの事故の考え方

第一に、子どもの過失割合を考えるのに前提となる、過失割合の考え方についてみておきましょう。

交通事故では、どちらか一方が100%完全に悪いということは少なく、当事者のどちらにも過失、つまり不注意があるのが普通です。

そして、このミス、過失の割合を考慮して、事故の責任の程度を決める制度が「過失割合」です。
この「過失割合」は、交通事故の相手方に損害賠償請求をするする際に、非常に大きな問題となってきます。

過失割合をどうやって決めるかは、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(判例タイムズ社)という書籍に記載された基準をベースに検討するのが実務の運用です。

これには、自動車対自動車の事故か、自動車と歩行者の事故かなどの事故の状況に加え、夜間の事故か当事者の年齢はどうかといった修正要素が規定されており、個別の事故の状況に当てはめて過失割合を決めていくことになります。

しかし、子どもの事故の場合は、そもそも子どもに不注意という責任を負わせることができるのか、という問題が生じます。

子どもが道路に飛び出して交通事故にあったとしても、無意識のうちに行動したケースもあるのではないか、と言うことが問題になるのです。

(2)5~6歳から認められる子どもの過失割合

第二に、子どもの過失割合がいつからどのように認められるのかを見ていきましょう。

交通事故において、子どもの過失は必ず認められるわけではありません。

子どもが飛び出して事故にあった場合でも、子どもに過失があったと言えるのか、幼いのだから仕方がなかったとされるのかは、子どもに「物事の善し悪しを判断できる能力」があったかどうかが判断の基準になります。

この、能力のことを「事理弁識能力」と言い、最高裁判所が「未成年者の過失については、その未成年者に事理を弁識する知能(事理弁識能力)があれば足りる」とした考え方が基になっています。

この事理弁識能力を、子どもが何歳から有していると考えるかについては、5歳から6歳程度とするのが実務の考えです。
ただし、事理弁識能力の有無は、子どもに応じて個別に検討して判断するのが原則です。

また、一般的には事理弁識能力があるとされる、6歳から13歳未満くらいの児童についても、過失割合に大人の5%から20%のマイナスされる修正が加えられる運用になっています。

(3)事理弁識能力がない子どもの過失割合とは

第三に、事理弁識能力が認められない幼い子どもでも、過失割合が問題になりうることを知っておいていただく必要があります。

上記のように、子どもの過失割合は、その子どもに事理弁識能力が認められるかどうかが判断の基準になります。
しかし、事理弁識能力が備わる前、5歳未満のような幼い子どもは常に過失割合が認められないとは限らないのです。

それは、子どもの監督者の過失が問われる事があるということです。

具体的には、両親や祖父母など、幼い子どもを監督する義務がある立場にある人が、充分に子どもを監督せずに飛び出し事故などを起こした場合に、監督不十分について過失が認められて「被害者側の過失」とされることがあるのです。

実際に「被害者側の過失」が誰に認められるかについては、最高裁判所が一定の基準を示しています。

これによると、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失」をいい、具体的には、子どもの両親、祖父母、兄弟、叔母といった身内の関係者がこれに当たります。

また、「身分上・生活関係上一体の関係にある」として、両親に雇われたベビーシッターも、被害者側の過失の判断対象に含まれます。

反対に、保育園の保母や職場の同僚、短時間だけ子どもの子守りを引き受けた近くの主婦は、「身分上・生活関係上一体の関係」にないため、過失割合の判断対象には含まれません。

2.状況別にみる、子どもの飛び出し事故の過失割合とは


でじは、子どもの過失割合が認められるとして、事故の状況によってそれがどの程度の割合で認められるのでしょうか。

子どもの年齢などに応じて、修正が加えられることになりますが、まずは、事故の状況に応じて、歩行者と自動車との間で、基本的な過失割合がどの程度認められることになっているのかを見ていきましょう。

(1)信号機が設置されている横断歩道における事故の場合

  • 歩行者側の信号が青、自動車側の信号が赤の場合・・・歩行者:自動車=0:100
  • 歩行者側の信号が赤、自動車側の信号が青の場合・・・歩行者:自動車=70:30
  • 歩行者側の信号が赤、自動車側の信号が黄の場合・・・歩行者:自動車=50:50
  • 歩行者側の信号が赤、自動車側の信号が赤の場合・・・歩行者:自動車=20:80
  • 歩行者側の信号が黄、自動車側の信号が赤の場合・・・歩行者:自動車=10:90
  • 歩行者側の信号が青から赤に変わり、自動車が青の場合=歩行者:自動車=20:80
  • 歩行者側の信号が青から赤に変わり、自動車が赤の場合=歩行者:自動車=10:90

このように、信号機がある横断歩道を青信号で横断中の事故については、横断歩道に入る以上、自動車側に高い過失割合が認められるのが原則です。

とはいえ、横断歩道近くの道路を横断したような場合や、信号が青でなかった場合には、子どもの側にも過失割合が認められるので注意が必要です。

(2)信号機のない横断歩道における事故の場合

  • 横断歩道上で発生した事故の場合・・・歩行者:自動車=0:100
  • 歩行者からは自動車が見えるが、自動車から歩行者が見えにくい場合・・・歩行者:自動車=10:90
  • 横断歩道付近の事故の場合・・・歩行者:自動車=30:70

子どもは、自動車の陰から飛び出したり、信号機が設置されていない横断歩道で不意に飛び出して事故にあうケースも少なくありません。

基本的には自動車側の過失が大きく認められますが、子ども側にも過失割合が言っていて度認められることに注意しましょう。

(3)横断歩道や交差点がない道路での事故の場合

  • 歩行者が赤信号の横断歩道近くの道路を横断、自動車が青の場合・・・歩行者:自動車=70:30
  • 歩行者が片側1車線の道路を横断、自動車が直進の場合・・・歩行者:自動車=20:80
  • 幹線道路や自動車側の道路が広い場合・・・歩行者:自動車=20:80
  • 幹線道路や道路の幅員に差がない場合・・・歩行者:自動車=10:90

事理弁識能力が認められる子どもであっても、道路の幅員や交通量まで把握できるとは限りません。
幹線道路への飛び出しによる事故は、重大な結果を招きかねませんし、子ども側の過失も認められる類型となっています。

(4)対向車や同方向に走行中の自動車との事故の場合

  • 歩道のある道路で、歩行者が車道を通行できる場合の事故・・・歩行者:自動車=10:90
  • 歩道のある道路で、歩行者が車道を通行できない場合の事故・・・歩行者:自動車=20:80(車道中央寄りの場合は30:70)
  • 路側帯のある道路で、歩行者が車道を通行できる場合の事故・・・歩行者:自動車=10:90
  • 路側帯のある道路で、歩行者が車道を通行できない場合の事故・・・歩行者:自動車=10:90(車道中央寄りの場合は20:80)
  • 幅員8メートル以下の車道だけの道路での事故・・・歩行者:自動車=10:90
  • 幅員8メートルを超える車道だけの道路での事故・・・歩行者:自動車=20:80

対向による事故や、同方向での飛び出し事故は想定しにくいと思われる方もいるかもしれません。

しかし、例えば手をつないで歩行を歩いていた子どもが、手を振り払って突然横の道路に飛び出して事故にあうケースなど、対向や同方向の自動車との事故は決して少なくはありません。

3.子どもの飛び出し事故の場合の過失割合の修正要素とは


上記のように、子どもの飛び出し事故が想定されるような事故の場合でも、事故のケースによって、基本過失割合は様々に設定されています。

実際には、子どもの飛び出し事故の場合、上記の基本過失割合に、次のようなマイナスの修正が加えられることになります。

(1)子ども側の過失割合をマイナスする要素

上記の過失割合に対して、子どもの年齢によって、過失割合が次のように修正されます。

  • 歩行者が6歳未満の幼児の場合・・・-10%
  • 歩行者が6歳から13歳未満の児童の場合・・・-5%

このようにして子どもの側からマイナスされた過失割合は、自動車側にプラスされて勘案されることになります。

(2)子ども側の過失割合をプラスする要素

子どもが起こした事故が飛び出しだった場合、子ども側の過失割合がプラスされることになります。

プラスされる程度は、事故の状況によって異なりますが、例えば赤信号による飛び出し事故の場合、子ども側に70%の過失割合が認められる可能性があります。

(3)子どもの飛び出しによる過失割合の注意点

上記のように、子どもの飛び出し事故による交通事故の場合には、まず事故の状況に応じた基本過失割を算定し、子どもの年齢に応じて過失割合をマイナスし、さらに飛び出しによる事情によって過失割合を最終的にプラスして検討することになります。

また、事理弁識能力が認められないような小さい子どもの場合は、親などの監督責任が問われることがあります。
きちんと手をつないでいたか、飛び出しをしないように注意していたか、目を離していなかったかなど、個別の事情を基に、監督責任が検討されます。

幼い子どもが事故に会う不幸を避けなければいけないのが一番ですが、子どもが事故にあった上に子どもの過失や親自身の過失が追求されて苦しむ親御さんも少なくありません。

不幸な事故を避けるためにも、子どもは予想外の行動をとりうることを前提に、監督責任に注意しましょう。

4.子どもが飛び出し事故で被害にあった場合の弁護士の頼み方


子どもが飛び出したりして交通事故被害にあった場合、まずは十分な治療を受ける事、警察に人身事故の届け出をすることが大切です。

しかし、それから先の相談については、交通事故の問題に精通している弁護士にご相談されることがお勧めです。

というのも、子どもの過失割合の認定方法は、画一的に決められているわけではなく、子どもの能力などに応じて具体的に検討していく必要があること、事故の過失割合の認定についても詳細な分析を要する事が多いからです。

また、小さい子どもが事故にあった場合、その時は怪我が大したことが無くても、将来的に後遺症が出ないか、保険会社の言う事を聞いて示談に応じてもいいのか、悩む事もあると思います。

子ども自身が任意保険に入っているというケースは先ずありませんが、親などの同居の家族が自動車の任意保険に加入しており、さらに弁護士費用特約もプラスしている場合、子どもの事故の相談や保険会社との交渉、場合によっては裁判の対応を保険の特約で賄える事もあります。

まずは保険を確認するとともに、弁護士を探して連絡をしてみては如何でしょうか。

また、必要に応じて「交通事故の過失割合とは?不満がある場合の対処方法」も合わせて参照ください。

まとめ

いかがでしょうか。
幼い子どもであっても過失が認定されることに驚かれた方もいるかもしれません。

子どもの交通事故、中でも飛び出しの事故は非常に多いのが実情です。
特に、身体が成長しつつあり、興味の対象も広がる小学校入学時の児童は要注意です。

今回は、飛び出し事故による過失割合の考えかたをご説明しましたが、実際の算定は専門的な判断を要することも少なくありません。

万が一子供さんが飛び出し事故を起こしてしまった場合、交通事故被害にあった場合には、信頼できる交通事故に強い弁護士に是非ご相談ください。

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自転車と自動車の交通事故!過失割合や事故後の対処法について解説 https://how2-inc.com/bicycle-car-traffic-accident-9941 Thu, 21 Dec 2017 05:37:44 +0000 https://how2-inc.com/?p=9941 最近、自転車による交通事故を保障する「自転車保険」の案内を、コンビニなどで見た人もいるかもしれません。

自転車が関係する交通事故は決して少なくありませんが、自転車保険がそこまで浸透しているとはいいがたく、また加入者本人も自動車保険に比べてどう使ったらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。

自転車と自動車との間で交通事故になったケースでは、特に過失割合の算定の際に、自動車同士の交通事故とは異なる考え方やルールが問題になる事が多いです。

万が一、自転車で交通事故にあった場合に備えて、自転車事故にあった場合の対応方法を知っておくことは有効です。

今回は、自転車事故の特徴について、過失割合の考え方を中心に解説したいと思います。

1.自転車による交通事故の基本的ルール

(1)交通事故の過失割合の考え方とは

自転車による交通事故かどうかにかかわらず、交通事故で損害賠償を請求する際には「過失割合」が重要になります。

交通事故が起きた場合、当事者の一方だけが100パーセント非がある、と言うケースは多くなく、双方に多少なりとも非があることが通常です。

過失割合とは、交通事故の当事者それぞれが負っている「非」の程度、つまり、事故の発生原因についての責任の割合のことを言います。

過失割合の決め方は、交通事故のケースに応じた基準が決められています。

基本になるのが、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(判例タイムズ社)という書籍に記載されたもので、弁護士や裁判所など実務家で多く利用されています。

この認定基準は、交通事故の当事者に応じて分類されています。

  • 自動車と自動車による交通事故のケース
  • 自動車と二輪車による交通事故のケース
  • 動車と歩行者による交通事故のケース

そして、このそれぞれのケースについて、直進中の自動車同士の事故なのか、信号機が設置されている交差点の中で発生した事故なのか、など、事故の状況に応じて当事者の過失割合が決められる仕組みになっているのです。

(2)自転車事故の過失割合の決め方とは

上記のように、交通事故の当事者と、事故の状況によって、交通事故の過失割合を決める際には、これまでの裁判例や事故をもとにした基準が決められています。

自転車と自動車で交通事故が発生した場合はどうでしょうか。

実は、自転車の事故の場合、弱者保護の観点から、自転車側の過失割合は大きく減らされるのが原則です。

というのも、自動車と自転車を比較すると、自動車の方が運転スピードが出やすく、車体もしっかりしているために、事故で被る損害が小さくて済むのが通常だからです。

実際、ニュースで見る自転車と自動車の交通事故でも、自転車の運転手側が、死亡や重症などおおきなダメージを受けることが多いです。

具体例には、たとえば、自動車も自転車も信号が青のときに交差点に進入して発生した衝突事故の場合では、自動車と自転車の過失割合の基本割合は、100:0で算定されます。

そのほかにも、双方の信号が赤のときに交差点に進入して衝突事故が発生した場合の基本の過失割合は、自動車:自転車が70:30になるなど、何れにしても自動車側に高い過失割合が認められるのが原則です。

ただし、自転車には、自動車と違って免許が要らない、何歳からでも乗れるなどの特有の問題点があります。
そこで、実際の過失割合は、これらの要素を加味して決めていくことになるのです。

2.5つの事故状況別にみる自動車と自転車の基本過失割合とは


自動車と自転車が起こす交通事故には、いくつかの状況が想定されます。
まず、事故の状況別の基本過失割合は、次のように決められています。

(1)信号機のある交差点における交通事故の基本過失割合

  • 自動車も自転車も青の場合・・・自動車:自転車=100:0
  • 自動車も自転車も赤の場合・・・自動車:自転車=70:30
  • 自動車が赤、自転車が青の場合・・・自動車:自転車=100:0
  • 自動車が青、自転車が赤の場合・・・自動車:自転車=20:80
  • 自動車が赤、自転車が黄の場合・・・自動車:自転車=90:10
  • 自動車が黄、自転車が赤の場合・・・自動車:自転車=40:60

このように、信号機のある交差点における自動車と自転車が当事者になった交通事故のケースでは、原則として自動車側の過失割合が厳しく認定され、自転車側が保護されています。

ただし、自転車が信号無視をしたという事情がある場合には、自転車側の過失割合が80%を超える高さで認定されることになるので注意が必要です。

(2)信号機のない交差点における交通事故の基本割合

  • 同程度の道路幅での交差点の事故の場合・・・自動車:自転車=80:20
  • 自転車側の道路幅の方が広かった場合・・・自動車:自転車=90:10
  • 自転車側の道路幅の方が狭かった場合・・・自動車:自転車=70:30
  • 自動車側に一時停止規制があった場合・・・自動車:自転車=90:10
  • 自転車側に一時停止規制があった場合・・・自動車:自転車=60:40

自動車事故の場合は、信号のない交差点の交通事故では、道路の幅員や一時停止表記があったかどうかという点が、過失割合を認定する際に影響しますが、自転車と自動車の事故の場合は、やはりこの場合でも自転車側に有利な基本過失割合が認定されているという特徴があります。

(3)進路変更・車線変更による交通事故の基本割合

  • 進路変更した自動車が同じ方向に走行中の自転車に衝突した場合・・・自動車:自転車=90:10
  • 前方を走る自転車が進路変更して後続の自動車に衝突した場合・・・自動車:自転車=80:20
  • 障害物を避けて進路変更した自転車に後続自動車が衝突した場合・・・自動車:自転車=90:10

このように、自転車が進路変更して交通事故が発生した場合でも、自動車とのスピードの差などを考慮して、自動車側に高い過失割合が認められます。

(4)巻き込み事故による交通事故の基本割合

  • 先行する自転車を左折する自動車が追い越そうとした巻き込み事故の場合・・・自動車:自転車=100:0
  • 左折する自動車を自転車が追い抜こうとした巻き込み事故の場合・・・自動車:自転車=90:10
  • 対面から直進してくる自転車と左折する自動車が衝突した場合・・・自動車:自転車=85:15
  • 駐車場から右折して道路に出ようとした自動車に右から来た自転車が衝突した場合・・・自動車:自転車=90:10
  • 駐車場から右折して道路に出ようとした自転車に右から来た自動車が衝突した場合・・・自動車:自転車=60:40

自動車が自転車を巻き込んで発生する巻き込み事故は、事故の累計のなかでも少なくありません。

ただし、コンビニの駐車場から右折して道路に出る際に起こりうる巻き込み事故では、道路に出る側に交通状況を把握することが自転車にも求められるので、一定程度の過失割合が認められることになります。

(5)対向車線で対面走行して発生した交通事故の場合

  • 中央分離帯をオーバーした自転車が自動車に衝突した場合・・・自動車:自転車=50:50
  • 中央分離帯をオーバーした自動車が自動車に衝突した場合・・・自動車:自転車=100:0
  • 直進自動車と自転車が正面衝突した場合・・・自動車:自転車=80:20

直進自動車と自転車の事故はあまりないというイメージをお持ちの方もいるかと思いますが、実はそうではありません。

自転車は左側通行しなければならないというのが原則ですが、交通ルールを良く理解していなかったり、とくに深く考えず右側通行することで、自動車とぶつかるケースが多々発生しているのです。

3.過失割合が修正される自転車事故特有の要素とは

(1)自転車の過失割合が修正される理由

前述のように、自転車は自動車と異なり、乗れる人の年齢に制限がないため、自動車とは違う独特の過失割合の修正要素があります。

具体的には、次のような要素が考慮されて、過失割合が修正されることになります。

(2)自転車側の過失割合がマイナスされる要素とは

自動車と自転車の交通事故の場合、相手方である自動車に前方不注意や方向指示の遅れなどがあれば、その分自転車側の過失割合がマイナスされるのは、通常の自動車事故の場合と同様です。

ただ、自転車事故の場合、独特の過失割合の減産要素があります。

  • 運転者が児童や高齢者の場合・・・-5%
  • 自転車が自転車横断帯や横断歩道を走行していた場合・・・-5%

特に、自転車の利用者は児童や高齢者も多い事からすれば、こうしたマイナス要素は非常に大きな意味を持つと言えるでしょう。

(3)自転車側の過失割合がプラスされる要素とは

自転車も道路交通法上、車とされるので、走行に当たっては様々なルールがあります。
次のようなケースでは、自転車側の過失割合がプラスされるので注意してください。

  • 片手運転をしていた場合・・・+1%から20%程度
  • ベルを鳴らさなかった場合・・・+5%から20%程度
  • ヘッドホンやイヤホンなどを使用していた場合・・・+5%から10%程度
  • 自転車の整備不良があった場合・・・+5%から30%程度
  • 前方の不注意があった場合・・・+10%から30%程度
  • 飛び出した場合・・・+10%から30%程度
  • スピードの出し過ぎによる運転の場合・・・+10%から30%程度
  • 二人乗り運転をしていた場合・・・+10%から30%程度
  • ジグザグ走行などをしていた場合・・・+10%から30%程度
  • 曲乗り運転をしていた場合・・・+20%から30%程度
  • 傘をさして運転していた場合・・・+20%から30%程度
  • 携帯やスマホを使いながら運転していた場合・・・+20%から30%程度
  • 犬の散歩をしながら運転していた場合・・・+20%から30%程度

4.自転車事故で知っておくべき注意点


自転車は身近な乗り物ですが、自転車が交通事故の当事者になる事は少なくありません。

最近は、自転車が加害者側になった場合に備えて、自転車保険もできていますが、まだ浸透しているとはいい難い状況です。

同時に、自転車側が被害者になった場合には、誰に相談したらいいかわからないという声は非常に多いのが実情です。

自動車側が任意保険に入っていた場合には、保険会社の担当者が連絡をしてくると思いますが、果たして提示された内容や金額が妥当なのか、悩むこともあるでしょう。

自転車事故は、安定性に欠ける乗り物だけに、被害が自動車事故以上に大きくなるケースもありますので、心配な場合は交通事故に強い弁護士に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

いかがでしょうか。

自動車と自転車の事故で想定されるケースが多いことに驚いた方、また自転車側にプラスされる過失割合の要素が多い事に驚いた方もいるのではないでしょうか。

自転車で交通事故に巻き込まれた場合は、加害者側になった場合、被害者側になった場合を問わず、まずは交通事故の弁護士に相談することをお勧めします。

相手方と示談をすると、いったん決めた合意内容を後から覆すことは困難です。

最近は無料の相談を行っている弁護士事務所も多いので、まずは相談して、ご自身は怪我の治療などに専念することも、事故の解決に向けた有効な対策の一つとなることでしょう。

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離婚後の面会交流権とは?議論されている親子断絶防止法で何が変わる? https://how2-inc.com/divorce-interview-claim-9917 Mon, 18 Dec 2017 06:27:10 +0000 https://how2-inc.com/?p=9917 両親が不仲になり、別居あるいは離婚して子どもがどちらか一方に引き取られたとしても、他方の親と子どもとの間の親子関係がなくなるわけではありません。

ですから、親と子どもが会う権利(面会交流権)が法律上も保障されていますが、現在の法律や裁判所の運用では十分に保護されているとは言い難く、そのため国会で「親子断絶防止法」が議論されるなど、面会交流権を巡る新たな動きがあります。

そこで今回は、面会交流権とは何か、面会交流の方法等はどのように決めるのかを解説したうえで、親子防止断絶法など面接交流を巡る新たな動きについてもご紹介します。

1.面会交流権とは

(1)面会交流権とは何か

面会交流権とは、離れて暮らしている(別居している)親子が面会や電話などの連絡を取り合う権利のことをいいます。

主に未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合に問題となりますが、離婚前に夫婦の一方が子どもを連れて同居していた家を出ることも多いため、離婚前の別居期間に問題となることも少なくありません。

(2)面会交流権の法的根拠

民法766条1項が、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。

この場合においては、子の利益をもっとも優先して考慮しなければならない」と定めていることが、法律上の根拠といえます。

この条文は平成23年に改正されたもので、それまで明文では定められていなかった子どもとの面会交流や監護費用(養育費)についても言及し、さらにそれらを決めるうえで子どもの利益を最優先しなければならないとしたことが重要です。

面会交流権というと、親が子どもに会う権利と考えている方が多く、またそれは間違いとはいえないのですが、あくまで子どもの利益を最優先に考えなければならないため、面会交流が制限されたり、認められなかったりといったこともありえるのです。

2、面会交流を決める方法


それでは、面会交流の日時、方法等はどのように決まるのでしょうか。

(1)協議

1.で紹介した民法766条1項が定めるとおり、まずは離婚の際に面会交流についても協議をしなければなりません。

協議の結果、合意ができれば、離婚合意書などの文書で合意内容を記録化しておけばいいでしょう。
面会交流について事前に取り決めをしておくべき事柄は次のようなものです。

①面会の頻度

1ヶ月に1回、週に1回といったように、どの程度の頻度で面会を行うかを決める必要があります。

月に1回と決める場合が多いといえますが、子どもの負担にならなければそれ以上の頻度で面会ができることもあります。

②面会の時間、場所等

面会時間を決める必要もあります。
通常、○時から△時までと決めることになります。

時間の長さについては、子どもの年齢やそれまでの子どもとのかかわり等を考慮して決める必要があります。

たとえば、母親が養育する乳幼児と父との面会交流では、一般的には母親から長時間引き離すと子どもがむずがるおそれがあるので短い時間にしたり、逆に子どもがある程度の年齢に達しており、それまでに面会交流を求める親とのかかわりも薄くなかったような場合には、長時間の面会を認めたりするといったことです。

また、子どもとどこで会うのか、面会の場所(たとえば面会を求める親の自宅、その実家など)を決めることもあります。

また、子どもの年齢等に応じて、子どもを監護する親の自宅まで迎えに行って子どもを引き渡してもらうとか、最寄駅や近所の公園等で待ち合わせをするなど、子どもの引渡し場所、待ち合わせ場所を決めておくことも必要になります。

③学校行事や長期休暇への対応

子を監護しない方の親が入学式、卒業式、運動会などの学校行事に参加することを認めるかどうかについても事前に決めておくといいでしょう。

また、②とも関連しますが、夏休みなどの長期休暇中には、子どもと○日間過ごすなどといった取り決めを別途行うこともあります。

(2)調停

夫婦が協議をしても面会交流について必要な事項の合意が成立しなかった場合、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てる必要があります。

調停は、調停委員が間に入って双方の言い分を聞き、それを相手方に伝え、合意の成立を目指すというもので、直接相手方と話をするのではなく、調停委員という第三者を介して話し合いを行うため、冷静に話し合いをすることができます。

また、調停委員から法律上の制度や裁判所の運用などの一般的な説明をすることで、誤解が解けたり、自分の主張が間違っていることに気付いたりすることもあります。

そのため、当事者間の協議では合意ができなかった場合でも、調停による話し合いで合意が成立する可能性は十分にあります。

(3)審判

調停委員を介してとはいえ、調停はあくまで話し合いですから、どれだけ話し合っても面会交流についての合意ができないこともあります。

そのような場合、調停は不成立となり、面会交流審判に移行します。

審判では、審判官(裁判官)が面会交流を認めるか否か、面会交流を認める場合にはその頻度、方法などを強制的に決めることができます。

審判官は、その結論を下す前提として、当事者双方の言い分を確認するほか、家庭裁判所の調査官に子どもとの面会その他必要な調査をさせます。

審判官は、当事者の主張に拘束されず、子どもの利益を考慮して面会の頻度等を決めることができます。

たとえば、一方は週に1回、他方は2か月に1回の面会を希望している場合に、審判官はいずれかを採用する必要はなく、月に1回と決めることもできるのです。

3、面会交流権を巡る新たな動き

(1)これまでの面会交流等についての問題点

裁判所が認める面会交流は多くて月1回で、数か月に1回という場合もあります。

協議ではそれ以上の頻度とすることもできますが、裁判所の運用がこのように定着してしまうと、合意せずに裁判をしてもどうせその程度だろうということで、どうしても裁判所の運用に近い内容で合意することが多くなってしまいます。

しかしながら、この程度の頻度で良好な親子関係を構築し、維持できるかは疑問であると言わざるを得ません。

また、離婚後の面会交流に関する問題とは異なりますが、裁判所は離婚に伴い親権者を指定する際、子どもの心身への影響等を考慮して、特段の問題がなければ子どもの生活を現状維持させる傾向があるため(継続性の原則)、夫婦の一方が無断で子どもを連れて家を出て、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟と進展する過程で子どもの生活環境がある程度安定してしまうと、子どもを連れ去った側が親権者に指定されることが多くなってしまいます。

先に連れ去った者勝ちになりかねない運用が適正なものかは疑問がありますし、子どもとの面会も困難になるという問題もあります。

(2)親子断絶防止法案

そこで、親の別居や離婚によって子どもと監護者でない方の親との関係が断たれることを防ぐため、超党派の国会議員連盟によって「親子断絶防止法」の法案が作成され、国会で審議されました。

親子断絶防止法案の概要は、次のとおりです。

①主な基本理念

離婚後も子が父母と親子としての継続的な関係を持つことが原則として子の最善の利益に資するものであり、父母はその実現についての責任を有する。

継続的な関係の維持等に当たっては、子の意思を考慮しなければならない。

②子の連れ去りの防止等の啓発

国は、父母が婚姻中に子の監護をすべき者等の取決めを行うことなく別居することによって、子と父母の一方との継続的な関係の維持ができなくなる事態が生じないよう、又は当該事態が早期に解決・改善されるよう、必要な啓発活動及び援助を行う。

地方公共団体は、必要な啓発活動及び援助を行うよう努める。

③面会交流及び養育費の取決め

離婚するときは、面会交流及び養育費の分担に関する書面による取決めを行うよう努めなければならない。

④面会交流の安定的な実施等

子を監護する父又は母は、定期的な面会交流がこの最善の利益を考慮して安定的に行われ、良好な関係が維持されるようにする。
面会交流が行われていないときは、早期に実現されるよう努める

⑤特別の配慮

児童虐待、DVその他の事情があるときは、面会交流を行わないことを含め、面会交流の実施の場所、方法、頻度等について特別の配慮がなされなければならない

子の連れ去りそのものを禁止しているわけではありませんが、それに対する国や地方自治体の義務、努力目標を定めることで間接的にこれを防ぐこと、子の監護者に面会交流の安定的な実施を実現させる義務を負わせることに特色があると言っていいでしょう。

(3)親子断絶防止法案への批判

親子断絶防止法案に対しては、親と会いたくない子どももいることが十分に考慮されているのか疑問であるとか、児童虐待、DV等の事情があるときに「特別の配慮をする」というが、曖昧であり、実際にどのような配慮をするのか疑問であるといった批判もあり、これに反対する意見も根強くあります。

そのため、現時点で親子断絶防止法は成立していません。

まとめ

今回は面会交流と親子断絶防止法について解説しました。

面会交流の調停や審判には専門的な知識が必要ですし、将来、親子断絶防止法が成立した場合には、これまでの運用が見直される可能性があるため、常に最新の情報をフォローしておく必要があり、一般の方にはなかなか難しいと思われます。

面会交流についてお悩みの方は、家事事件に詳しい弁護士への相談をお勧めします。

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夫の風俗通いが離婚の原因になる?その条件と別れる為の方法を解説 https://how2-inc.com/husband-divorce-9909 Fri, 15 Dec 2017 05:51:28 +0000 https://how2-inc.com/?p=9909 夫婦の離婚の原因にはさまざまなものがありますが、配偶者の異性関係はいつの時代にも離婚原因の上位に位置付けられます。

配偶者が浮気をすれば当然離婚できると考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、何をもって浮気といえるのかは必ずしも明らかではありません。

たとえば、夫が風俗店に通っていたことを知った妻が、夫が浮気をしたという理由で離婚を求めた場合、夫は「お金を払って性処理をしているだけで単なる遊びだ」といって、浮気とは認めず、離婚には応じないということがほとんどでしょう。

そこで今回は、夫が風俗店に通っていた場合に離婚することができるのかについて解説します。

1.裁判上の離婚原因とは


協議離婚や調停離婚の場合、夫婦双方の合意により離婚が成立するため、とくに離婚原因に制限はなく、どのような理由であっても離婚することができます。

これに対し、裁判上の離婚は、一方当事者が離婚に応じない場合でも、裁判所が判決によって強制的に離婚を認めることができるという強力な制度であるため、どのような理由でもよいというわけにはいかず、法律で定められた離婚原因に該当しなければなりません。

法律上の離婚原因とは、

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者による悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない

(民法770条1項1号~5号)

配偶者の浮気は、一般的に1号の不貞行為に該当すると言われています。

2.不貞行為とは


それでは、不貞行為とは、具体的にどのような行為をさすのでしょうか。

この点について、最高裁判所の判例は、不貞行為とは「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいうとしています(最高裁昭和48年11月15日判決)。

配偶者のいる人が、配偶者以外の特定の人と2人だけで頻繁に食事や旅行に行ったり、キスをしたりしたというような場合、浮気と思う方も少なくないと思われますが、「不貞行為」といえるためには性的関係を結ぶことが必要ですから、このような関係では「不貞行為」には該当しないということになります。

3.夫の風俗通いは不貞行為に該当する?

(1)風俗店における性的関係も不貞行為に含まれるのか

最高裁の不貞行為の定義からすれば、不貞行為と言えるためには、「自由意思にもとづいて」「性的関係を結ぶ」ことだけが要件とされています。

性的関係を結んだことに対する金銭その他の対価の有無や、恋愛感情の有無などは要求されていません。

したがって、風俗店でお金を払って従業員と性的関係を結んだ場合でも、不貞行為に該当するといえます。

(2)どのような風俗店でも不貞行為になるのか

風俗店といっても、さまざまな業態があります。

日本の法律上、管理売春は違法であり、風俗店で性行為そのものをすることは本来的には許されないのですが、実際には性行為を前提とする風俗店(いわゆるソープランド)もあります。

他方で、女性従業員の接客で、お酒を飲みながら女性従業員の体を触ることができる風俗店(セクシーキャバクラなどと呼ばれたりします)もあります。

後者のような風俗店に通っただけでは、性的関係を結んだとまではいえないため、不貞行為には該当しないでしょう。

(3)1回限りでも不貞行為になるのか

この点については、弁護士でも見解が分かれるかもしれません。
中には、一度だけで離婚を認めた判例はないと言い切っているサイトもあります。

しかしながら、判例は、離婚協議や離婚調停で合意ができず、離婚訴訟が提起され、訴訟においても和解ができずに最終的に裁判所が下した判決の集積です。

夫が一度だけ風俗店に通ったことが判明した場合、夫が真摯に反省すれば妻が許すこともあるでしょうし、協議離婚や調停離婚、訴訟上の和解で解決することもあるでしょう。

このようにみると、一度だけの風俗通いで離婚訴訟の判決にまで至ることは極めてまれであるため、現時点で一度だけの風俗通いで離婚を認めた判例がないに過ぎないとも考えられます(現に、「一度だけの風俗通いであれば不貞行為に該当しない」と明言して妻の離婚請求を棄却した判例を紹介しているサイトは見当たりません)。

不貞行為についての最高裁の定義は「性的関係を結ぶこと」であり、回数を問題にしていませんし、条文の文言も「不貞な行為があったとき」として、不貞行為が反復継続されたことを要求していませんので、一度だけなら不貞行為にあたらないと決めつけることは早計ではないかと思われます。

(4)例外は認められないのか

法律上の離婚原因が存在する場合でも、例外的に離婚が認められないことがあります。

裁判所は、民法770条1項1~4号に該当する事由がある場合でも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚請求を棄却することができます(民法7700条2項)。

ですから、配偶者に不貞な行為があった場合でも、裁判所が離婚の請求を認めないことが法律上はありえます。

もっとも、実務上は770条2項が適用されることはあまりありません。

過去の判例では、3号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」にあたるとしてなされた離婚請求について、配偶者の経済的事情などを考慮して、今後の療養、生活等についての具体的方策を講じ、ある程度前途に見込みがついたうえでなければ離婚を認めないとしたものが目に付く程度です。

3号の場合、精神病にかかった配偶者に落ち度があるとは必ずしもいえず、離婚を求める側が被害者であるとは一概には言えないため、価値判断として上記の結論の是認できるものと考えられます。

これに対して、1号の場合、不貞行為を行った者に落ち度があり、離婚を求める者が被害者であることは明らかです。

その被害者が離婚を請求した場合に、裁判所が離婚を認めないというのは本来ありうることではなく、770条2項の適用は極めて制限されるべきと考えられます。

したがって、不貞行為の場合には、裁判所の裁量で離婚請求が棄却されることはまずないといえるでしょう。

4.不貞行為に当たらない場合に離婚するためには


不貞行為にあたらない風俗通いの場合でも、絶対に離婚ができないというわけではありません。

民法770条1項5号が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を離婚原因としており、婚姻関係が破綻したと言える場合には、離婚を請求することができます。

どのような事情があれば「婚姻を継続し難い重大な事由」といえるかについては、個別の事案ごとに判断されることになりますが、過去の判例を参考にすると、次のような場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると考えられます。

まず、不貞行為が離婚原因とされていることから、夫婦は互いに低層義務を負っており、その裏返しとして、正当な理由なく夫婦間の性行為を拒否することはできません。

したがって、夫が風俗通いをして妻との性行為を拒否しつづけるような場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

また、夫婦は互いに扶助義務を負っており、婚姻費用を分担しなければならないと定められていることから、夫が風俗通いで浪費して妻に生活費を渡さないというような場合にも、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

このように、風俗通いだけでは直ちに不貞行為に該当しない場合でも、風俗通いを他の離婚原因を基礎づける事情として位置づけることは可能です。

まとめ

風俗通いを理由に離婚できるかについて解説しました。

離婚問題は、離婚理由にあたるかどうかの判断が難しいことだけでなく、離婚理由がるとしてそれをどのように証明するか、どうすれば証拠を収集できるかといった課題があります。

ですから、離婚問題でお悩みの方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談するようにしてください。

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離婚事由になる不貞行為とは?浮気や不倫を認めさせて慰謝料請求する方法 https://how2-inc.com/adultery-solatium-9883 Wed, 13 Dec 2017 03:25:45 +0000 https://how2-inc.com/?p=9883 配偶者の浮気・不倫は常に離婚理由の上位を占めています。

配偶者に裏切られたことで離婚や慰謝料を請求したいと考えるようになるのは自然なことといえますが、配偶者が浮気・不倫をしていた場合は必ず離婚できるとまではいえませんし、慰謝料が請求できるか、請求できるとしてどの程度の額になるかはケースバイケースといえます。

そこで今回は、配偶者の浮気・不倫を理由に離婚ができる場合と慰謝料の相場、慰謝料を増額させる方法やそのための証拠の収集方法等を解説します。

1.不貞行為とは


配偶者の浮気・不倫は当然離婚の理由になると方は多いと思います。

法律上の根拠としては、離婚事由を定めた民法770条1項が、「配偶者に不貞な行為があったとき」(同項1号)と定めていることを挙げることができます。

もっとも、「不貞な行為」とは何を意味するのかは、必ずしも明らかではありません。

最高裁の判例は、「不貞な行為」を「配偶者のある者が、配偶者以外の者と、自由な意思にもとづいて性的関係を結ぶこと」と定義しています(最高裁昭和48年11月15日)。

ポイントは、「配偶者ある者」の自由意思と「性的関係を結んだ」ことです。
これを前提に、どのような行為が不貞な行為にあたるか、あるいはあたらないのか、具体例を見ていきましょう。

2.「不貞な行為」にあたるもの、あたらないもの

(1)性的関係の一方当事者に自由意思のないものはどうなるか

上記の最高裁の判例は、強姦事件を起こした夫に対し妻が離婚を請求したところ、夫から強姦は「不貞な行為」に該当しないとの反論がなされたことについて、最高裁が判断を示したものです。

最高裁は、配偶者のある者の自由意思を要求するだけで、相手方も自由意思に基づくことはまでは必要ないとし、不貞な行為があったとして妻の離婚請求を認めました。

この考え方からすると、妻が配偶者以外の者に強姦された場合(妻が自由意思に基づかずに配偶者以外のものと性的関係を持った場合)、夫が不貞な行為にあたるとして離婚を請求することはできないということになります。

(2)性的関係がない場合はどうなるか

たとえば配偶者のある者が、配偶者以外の者とデートをし、手をつないだりキスをしたりしたような場合、浮気・不倫にあたると思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかしながら、民法の「不貞な行為」は、性的関係を結ぶことが要求されているため、上記の程度では「不貞な行為」とはいえません。

(3)恋愛感情の有無が影響するか

最高裁の考え方からすれば、配偶者ある者と不貞行為の相手方との間に恋愛感情等は要求されていません。

したがって、配偶者ある者と配偶者以外の者がどれだけ愛し合っていたとしても、プラトニックな関係では不貞行為には該当しません。

逆に、恋愛感情がなくても性的関係があれば「不貞な行為」に該当するので、風俗店や江合系サイトなどを繰り返し利用し、性的関係を結んでいたような場合には、「不貞な行為」に該当する可能性があります。

(4)すでに婚姻関係が破たんしている場合はどうなるか

暴力など何らかの理由でいさかいが生じ、長期間別居しているような場合、実質的に婚姻関係が破たんしているといえます。

婚姻関係が破たんした後に配偶者以外の者と性的関係を結んだ場合には、離婚原因はすでに生じていることから、離婚原因としての不貞行為には該当せず、慰謝料も発生しないと考えられています。

3.不貞行為の慰謝料とは

(1)慰謝料の相場は

配偶者が不貞な行為をしたときは、離婚事由に該当し、離婚が認められるだけではなく、慰謝料を請求することができます。

慰謝料は被害者の受けた精神的苦痛を金銭で評価するものですから、経済的な損害と異なり、明確な算定方法があるわけではありません。
ただし、これまでの裁判例では100~300万円程度が認定されることが多いようです。

(2)慰謝料を増額させるにはどうすればいいか

先ほども述べたとおり、慰謝料は明確な計算方法があるわけではなく、裁判所が一切の事情を考慮して決めるものです。
過去の判例を分析すると、次のような事情が考慮されていると考えられます。

①離婚に至ったか

不貞行為は不法行為(故意または過失により他人に損害を加える行為)の一種です。
不貞行為自体が配偶者に精神的苦痛を与えるものですから、離婚するか否かにかかわらず慰謝料を請求することが可能です。

もっとも、慰謝料は精神的苦痛を慰めるためのものですから、精神的苦痛が大きいと考えられる場合ほど慰謝料が高額になるといえます。

不貞行為があった場合に、離婚に至ったときと、婚姻関係を継続するときとで比較すると、一般に前者の方が精神的苦痛は大きいと考えられ、慰謝料が高額になる傾向があります。

②婚姻期間

婚姻期間が長いほど、配偶者に裏切られたことによる精神的苦痛は大きいと考えられ、慰謝料が高額になる傾向があります。

③不貞な行為の期間等

不貞な行為のあった期間が長いほど、あるいは回数が多いほど、慰謝料が高額になる傾向があります。

④子どもの有無

夫婦の間に子どもがいる場合、不貞な行為の影響は配偶者にとどまらず、子どもにも及ぶ可能性がありますので、慰謝料が高額になる傾向があります。

⑤不貞行為をした者の収入、社会的地位等

不貞行為をした者の収入や社会的地位が高いほど、不貞な行為をした責任が重いと考えられており、慰謝料も高額になる傾向があります。

4.不貞行為を認めさせるには

(1)証拠収集の重要性

不貞行為を理由に裁判で離婚や慰謝料を勝ち取るためには、裁判を起こした側が不貞行為があったことや、3.の慰謝料の増額事由を積極的に主張・立証しなければなりません。

ですから、裁判においても、あるいは裁判前の離婚協議においても、事前に不貞行為等に対する証拠を収集しておくことが不可欠となります。

(2)どのような証拠が有効か

①性行為等の写真、動画、音声など

性行為やその前後の写真、動画、音声などは、不貞行為の直接的な証拠になります。

携帯電話、スマートフォンの普及により以前よりはこのような写真等が残されることが増えたはいえますが、全体としてみればそれほど多いとは言えません。

②ラブホテルへの出入りの写真等

性行為そのものの写真等ではなくても、異性とラブホテルに出入りした写真、動画などは重要な証拠になります。

異性とラブホテルに入ることは、通常は性行為を行うものと予想されますので、相手方が合理的な説明ができない限り、不貞な行為があったことを推認させるといっていいでしょう。

③メール、LINE、SNSなど

不貞行為の相手方とのメール等のやり取りも証拠となります。

もっとも、民法上の不貞行為は性的関係を結ぶことを意味しますから、メール等の文面から恋愛感情が読み取れるだけでは不十分であり、性的関係があったことを推認させることが必要になります。

④目撃証言

第三者が、配偶者が異性と一緒にいるところを見たなどといった目撃証言も証拠になります。

これについても、単に一緒に歩いていたというだけでは証拠としての価値が乏しく、一緒にラブホテルに入っていくところを見たなど、不貞行為があったことを推認させるものである必要があります。

⑤レシート、領収書、クレジットカードの明細など

レシート、領収書、クレジットカードの明細など、金銭の流れに関する証拠により、配偶者の行動を把握できることがあり(たとえば、遠方に出かけて宿泊したなど)、不貞行為の証拠とすることができる場合があります。

(3)どのように証拠を集めるか

興信所・探偵事務所を利用して配偶者の素行調査を行うことや、費用をかけずに自身や親族、知人等に協力してもらい、配偶者の素行調査をすることが考えられます。

また、配偶者と同居している場合、配偶者が自宅においているレシート等を見たり、コピーを残して置いたり、たまたま携帯電話を見てしまったりといった程度であれば、プライバシーの観点からもそれほど問題にはならないでしょう。

まとめ

不貞行為を理由とする離婚と慰謝料請求について解説しましたが、参考になったでしょうか。

慰謝料の額は個別の事案ごとに異なり、そのような事情を証明するためにどのような証拠が考えられ、どのようにすればその証拠を入手できるかが重要になりますから、専門知識のない方では十分な対応ができないと言わざるを得ません。

配偶者の不貞行為にお悩みの方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談することを検討するといいでしょう。

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配偶者が同性愛者(LGBT)だった!離婚理由にして慰謝料の請求は可能? https://how2-inc.com/spouse-lgbt-divorce-9866 Mon, 11 Dec 2017 06:12:32 +0000 https://how2-inc.com/?p=9866 配偶者が浮気・不倫をした場合、離婚とそれにともなう慰謝料の請求を考える方は少なくないでしょう。

一般的にはその請求は認められますが、配偶者が実は同性愛者で、浮気相手が同性だった場合も同様に考えていいのでしょうか。

LGBTに対する社会全体の理解が徐々に進んできたとはいえ、偏見や差別が完全になくなったとはいいがたく、世間体や親族の目が気になるとか、自分の実の子供が欲しいなどといった様々な理由から、同性愛者がそのことを隠して異性と結婚することはありえないことではありません。

そこで今回は、配偶者が同性愛者であることがわかった場合に離婚や慰謝料を請求することができるかについて解説します。

1.法律上の離婚原因とは


民法770条1項1号~5号は、次の5つの事情を離婚原因と定めています。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

離婚訴訟を提起して、これら5つのいずれか(あるいは複数)に該当することを証明することができれば、相手方が離婚に同意しなくても裁判所が判決で離婚を認めてくれるのです。

2.民法に定める不貞行為とは


一般的に、配偶者が浮気、不倫をしている場合、配偶者に不貞な行為(民法770条1項1号)があったことを離婚理由にあげます。

もっとも、民法は「不貞な行為」と規定するだけで、どのような行為があればそれに該当するのかについては定めていないため、どのような行為が不貞な行為に当たるのかの解釈が必要になります。

この点について、最高裁は、不貞な行為とは「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」であるとしています(最高裁昭和48年11月15日)。

配偶者以外の者という表現を用いており、異性に限られていないようにも思えますが、「性的関係を結ぶこと」とは性行為をすることを意味すると考えると、異性であることは当然の前提とされているといえます。

そのように考えると、配偶者のある者が同性との間で同性愛の関係に至った場合には、「不貞な行為」には該当しないということになります。

3.同性愛を理由に離婚ができる場合

1)「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たれば離婚できる

もっとも、いかなる場合も配偶者の同性愛を理由に離婚をすることができないわけではありません。

1.で紹介したとおり、民法770条1項は、1号から4号までで具体的な離婚原因を規定したうえで、5号で「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という一般的・抽象的な規定を置いています。

1~4号の事由がなくても、何らかの理由で婚姻関係が破たんしたといえる場合にまで無理に婚姻関係を継続させる必要はないので、このような規定を置いたのです。

配偶者の暴力、生活費を渡さないなどがその典型ですが、配偶者の同性愛もこの事由に該当するとすれば、離婚原因にすることができます。

少し古いものですが、この点について判断した裁判例がありますので、紹介します。

2)名古屋地方裁判所昭和47年2月29日

①【事案の概要】

原告(妻)と被告(夫)との間には、結婚当初4か月ほどの間には性交渉があったが、それ以後、被告(夫)は原告(妻)に対し全く求めようとしなくなり、原告(妻)の方からの求めにも一向に意欲を示さなくなったが、原告(妻)は不満と不信を抱いていたが、子どもが生まれたことや実家の両親にさとされたことから、耐え忍んでいた。

ところが、被告(夫)は、その間、ある男性と知り合い、同性愛の関係に陥り、約2年にわたって関係を繰り返し、その男性に結婚話が持ち上がったことから一旦は関係を解消したが、未練を断ち切れずにその男性に執拗に付きまとった。

原告(妻)は、そのことを警察官から聞かされ、子どもを連れて実家に戻った。

②【離婚原因について裁判所の判断】

性生活は婚姻生活における重大な要因の一つであるところ、原告(妻)がすでに数年間にわたり被告(夫)との間の性生活から遠ざけられていること、原告(妻)が被告(夫)の同性愛関係を知ったことによる衝撃の大きさを考えると、原、被告相互の努力によって、原、被告間に正常な婚姻関係を取り戻すことは不可能と認められるから、原、被告間には「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在し、これは被告の責任によるものである。

③【結論】

離婚を認めるともに、慰謝料150万円の支払いを命じた。

3)名古屋地裁判例の分析

名古屋地裁の判例は、「婚姻を継続し難い重大な事由」を認定した理由として、①長期にわたり妻と夫との間に性生活がなかったこと、②夫の同性愛関係を知った妻の衝撃の大きさをあげています。

まず、①についてですが、夫婦は互いに貞操義務を負っており、それゆえに貞操義務に反する不貞行為をしたことが離婚原因とされていることからすれば、正当な理由のない性交渉の拒否は、それ自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

したがって、①は、配偶者が同性愛者であった場合に限られるものではありません。

また、②については、本件では配偶者が単に同性愛の関係をもっただけではなく、いったん関係を解消した後に執拗に付きまとうなどして警察沙汰になったという特殊な事情があるため、妻が受ける精神的衝撃がいっそう大きなものとなったと考えられます。

このように考えると、名古屋地裁の判例は、配偶者が同性愛者であるのみをもって婚姻を継続し難い重大な事由にあたると判断したとまで評価することはできないのではないかと考えられます。

たとえば、①の理由付けからすれば、夫が同性愛者であることを妻に知られないようにするため、あるいは夫が両性愛者であったため、妻との性生活もあった場合、婚姻を継続し難い重大な事由には該当しないのかといった疑問が、②については1回かぎり、あるいは短期間で関係が終わり、その後特段のトラブルもないような場合でも妻の衝撃が大きいとして婚姻を継続し難い重大な事由になるのかといった疑問が生じるからです。

「婚姻を継続し難い重大な事由」は抽象的な規定ですから、個別の事案ごとに判断するほかなく、どのような事情がそれにあたるかは、判例の集積により明らかにされていくものです。

しかしながら、上記の名古屋地裁判例をのぞき、同性愛を離婚理由として扱った判例は知られていません。

判例は裁判所の判決であり、協議離婚や調停離婚で解決しなかった場合にのみ出されるものです。

この事件以外にも配偶者の同性愛を理由として離婚に至った夫婦はいると思われますが、同性愛は通常はプライバシーの中でも特に他人に知られたくない事柄でしょうから、同性愛を理由に配偶者から離婚を切り出された場合に、離婚訴訟まで至らずに何らかの解決に至ったのではないかと考えられます。

その結果、判例がほとんどないため、同性愛が離婚原因になるかについてはいまだ十分に明らかにされていないというのが実情です。

まとめ

同性愛を理由とする離婚について解説しましたが、参考になりましたでしょうか。

この問題に関しては判例が乏しいため、どのような事情があれば離婚できるのかの判断が難しいですし、新たな判例によって新たな基準が生み出されることもありえますので、常に最新の知識を身に着けていなければなりません。

配偶者の同性愛についてお悩みの方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談してはいかがでしょうか。

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詐欺被害にあった際の対処法と返金に強い弁護士の選び方 https://how2-inc.com/deceit-harm-attorney-9855 Fri, 08 Dec 2017 02:29:42 +0000 https://how2-inc.com/?p=9855 振り込め詐欺やオレオレ詐欺、投資詐欺など、詐欺被害は後を絶ちません。

このコラムをご覧いただいている方の中にも、家族や知り合い、またはご本人が詐欺の被害に遭ったという方もいるかもしれません。

詐欺被害に遭った場合には、ショックで誰に相談したらいいか分からない、また少しでも返金してほしいがどうしたらいいか分からないといったお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

実際、詐欺被害に遭うと、被害金を全額回収することはなかなか難しいのが実情です。

しかし、諦めてはいけません。

詐欺被害の対処方法や交渉に強い弁護士に相談することで、解決の道が見える場合もあります。

今回は、詐欺の被害に遭った場合の対処法や返金交渉に強い弁護士の選び方について解説したいと思います。

1.よくある詐欺被害の5つの事例

(1)振り込め詐欺、オレオレ詐欺

振り込め詐欺やオレオレ詐欺は、注意喚起が促されるようになって久しいですが、被害は一向に減りません。

以前は、若い男性が息子を名乗って電話をかけてくるケースが大半でしたが、最近は女性も加害者になって、娘を名乗るケースも増えています。

また、「劇場型詐欺」といって、子ども役、警察官役、弁護士役など、入れ代わり立ち代わり電話をしてきて、被害者に考える隙を与えないといった手口が増えています。

振り込め詐欺は、ほぼすべてのケースが組織化された集団で実行されていて、お金を受け取りに来た「受け子」や電話をかけていた「掛け子」などの下っ端が逮捕されても、被害金は姿を見せないトップが持って逃亡し、なかなか回収できないことも多いのです。

(2)投資詐欺

投資詐欺は、未公開株詐欺、不動産投資詐欺など、様々な種類があります。
中でも、上述のような「劇場型詐欺」で、複数の人が電話をかけてくるケースが多い特徴があります。

また、公的機関の職員を騙り「未公開株詐欺が流行っている」などと注意喚起を促しつつ「この会社は信用できる」などと信じ込ませることもあります。

また、一度支払うと、「あなたの口座が架空取引に利用されており、お金を振り込まなければ逮捕される」などと嘘の情報を騙って振り込ませるケースも横行しています。

(3)ワンクリック詐欺

ワンクリック詐欺は、アダルト詐欺ともよく関連する詐欺の種類で、消費者センターへの相談が例年1位になるほど巷にあふれています。

アダルトサイトなどを閲覧している最中に、突然「登録完了しました」等の表示が現れ、「1週間以内に10万円を振り込んでください」などと登録料を要求するのです。

しかし、実際のワンクリック詐欺は、ここから先の情報を得るところに主眼があります。

退会はこちらなどというフォームに個人情報を入力させたり、電話をかけさせるなどして情報を得た後に、入金しなければ裁判にするなどと脅して被害金を騙し取っていくのです。

本当に登録した場合はきちんと支払わなくてはいけませんが、身に覚えのない登録の架空請求については無視することが一番です。

(4)還付金詐欺

還付金詐欺は、主に高齢者を狙った詐欺の種類です。
保険料などが還付されるから受け取り手続きをしてほしいなどといってATMを操作させ、実際はお金を振り込ませるという手口です。

還付金がATMで振り込まれることは絶対にないので、騙されないように日頃から意識しておくことが一番です。

(5)携帯電話詐欺

最近増えている詐欺の類型で、融資を受ける条件として携帯電話を購入し、業者に送らせるというものです。

携帯電話を買う際には、自分でローンを組んで購入しますが、実際に融資金は振り込まれない上に、送った携帯電話が別の犯罪に使われることが多く、犯罪の片棒を担ぐ恐れもある類型です。

違法なヤミ金業者が「即融資可能」などとうたって、数社からスマホを購入させるケースが増加しています。

2.詐欺被害に遭った場合の対処の流れ

(1)警察に電話をする

詐欺被害に遭ったと気付いた場合には、まず警察に電話しましょう。
最寄りの警察の番号が分からない場合は、110番でも構いません。

また、劇場型詐欺では、犯人が警察を名乗って電話をしてくる場合もあります。

本物かどうかを確かめるためにも、お金のやり取りを巡って警察を名乗る電話があった場合は、まずは警察に電話して、その電話が本当かどうかを確認することが被害の防止につながります。

(2)銀行に電話をする

詐欺の被害に遭った場合、気付いた段階ですぐに振込み先の銀行に電話をしてください。
振り込んだ先の口座は、詐欺グループの口座です。

その口座への入金などの取引を停止し、口座を凍結してもらうことで、もし口座にお金が残っていた場合に、被害金の分配を受けることができます。

(3)情報をメモする

詐欺の被害に遭ったと気付いた場合、その時点で思い出せる情報をすべて記録しておきます。

具体的には、相手の口座番号、連絡が来た際の電話番号、受け取りに来た受け子がいた場合はその人相など、何でも構いません。

投資詐欺などで契約書があるようなケースでは、そういった書類などもそろえておきましょう。
これらは、のちに刑事事件化して詐欺を立証していく際に証拠として有効です。

(4)弁護士に相談する

詐欺被害に遭った場合には、弁護士に相談してください。
特に、詐欺をした側に実体がある場合、交渉することで返金を受けられる場合があります。

とはいえ、被害者が直接交渉しても相手にされないことが大半です。
しかし、弁護士が交渉することで、相手が裁判沙汰や刑事処分を恐れて返金に応じることがあります。

3.詐欺被害に遭った場合に注意すべき3つのこと

(1)とにかく急いで対応する

詐欺師は、プロ集団です。

詐欺をして成功すると、会社をたたんだり、電話を解約したり、お金を口座から降ろしたり、痕跡を残さずに消え失せ、また別の詐欺を働きます。

詐欺師の行方が分からないと、返金の交渉もできません。
また、詐欺師が財産を処分した後は、詐欺が立証できたとしても被害金の回収は困難です。

詐欺師が逃げる前、財産を処分する前に、対応をする必要があるのです。
詐欺の被害に遭った場合には、一刻も早く警察・銀行への連絡と、弁護士への相談を行いましょう。

(2)弁護士の選び方に気を付ける

上記のように、詐欺被害に遭った場合は弁護士に相談することで、被害金の返金交渉により、お金が少しでも取り返せる場合があります。

しかし、インターネットで「詐欺 弁護士」と探しても、大半が詐欺をした人を弁護士する側のことが大半です。

また、弁護士に相談できたとしても、詐欺の立証が難しいことを理由に受任を断られるなど、詐欺被害者の味方になる弁護士を探すのが困難なケースもありえます。

詐欺被害者の味方になってくれる弁護士を探す場合は「詐欺 被害者 相談」など、被害というキーワードを入れて探し、まずは相談をしてみましょう。

実際に依頼する場合は、弁護士の料金体系をきちんと確認して依頼するようにしましょう

(3)詐欺の二次被害に気を付ける

最近の詐欺は非常に巧妙です。
詐欺の被害に遭った人を助けるふりをして近づいてきた人が、実は詐欺グループの仲間ということが少なくないのです。

特に、公務員や警察、弁護士を騙ってさらにお金を騙し取ったり、解決金名目で高額のお金を要求するケースもあります。

公務員や警察は直接その当局に連絡をして、名乗ってきた相手が実在するかどうか確かめましょう。

弁護士の場合は、インターネットで弁護士名や登録番号を調べることができるので、その場で検索してみるなどして、成りすましによる二次被害を防ぐようにして下さい。

4.振り込め詐欺被害に遭った場合に知っておくべき救済方法とは

(1)振り込め詐欺救済法とは

詐欺の中でも、振り込め詐欺の被害に遭った場合、「振り込め詐欺救済法」という法律で救済を受けられる可能性があります。

振り込め詐欺救済法とは、詐欺犯人の口座にお金が残っていた場合に、そのお金を「被害回復分配金」として被害者で分け合う手続きについて定めた法律です。

ただ、救済の対象になるかどうかは、次の点に注意が必要です。

  • 詐欺師が口座からお金を出すなど、残高が1000円未満の場合は使えない
  • 詐欺の被害金を現金を渡したり、宅急便で送った場合は使えない
  • 支払いの申請期間内に申請しなかった場合は使えない

(2)振り込め詐欺救済法の手続き

振り込め詐欺救済法で被害金の返金を受ける場合の手続きは、大まかに3段階に分けることができます。

①取引停止

警察と、銀行などの記入期間に詐欺被害を申告して、預金口座の取引を停止してもらいます。

②消滅手続

詐欺の振込先口座など、「犯罪に利用された口座」に認定されると、消滅手続に向けた公告が行われます。

これは、口座の持ち主である詐欺師が、口座に関する権利を失うための手続き(権利の消滅)を目指すための手続きです。

ご自身が振り込んだ口座が犯罪利用口座として登録されているかどうか、預金保険機構のホームページなどで調べましょう。

③支払い手続き

一定期間が過ぎ、詐欺師が権利を失った口座について、期限内に「被害回復分配金支払申請書」「免許証などの本人確認書類」「振り込みした資料」の3つの書類を振込先の金融機関に提出して申請します。

これにより支払額が確定すると、口座に残っていたお金が被害者に支払われ、被害金全額の回収が難しい場合であっても、少しでも返金される手続きになっています。

(3)振り込め詐欺救済法以外の救済方法とは

上記のように、振り込め詐欺救済法では、口座に一定のお金が残っている場合や、被害金を振り込んだ場合に利用できる制度です。

しかし、これに当てはまらない被害者の場合は、諦めるしかないかというとそうではありません。

「被害回復給付金支給制度」という制度が定める要件を満たせば、刑事裁判で財産犯の被害者と認定された人やその相続人などに、被害金を上限として、犯人から没収した金額から還付してくれるという制度があるのです。

裁判で、詐欺師から犯罪で得た財産が剥奪されると、被害金が給付資金となるので、被害者は給付申請を検察官に対して行います。

検察官がこれを確認して、給付金を受け取る資格があると認定されると、裁定書の謄本がどき、手続き終了後に被害回復給付金が支給される流れになっています。

いずれにしても、犯罪の立証などが必要になってくるので、まずは詐欺被害に強い弁護士に相談して、最も適した手続きを取るように進めましょう。

5.詐欺被害の対応に強い弁護士の選び方

(1)弁護士の検索方法

上記でもお話ししましたが、「詐欺事件に強い弁護士」というと、詐欺をした犯人側を弁護する活動をしている弁護士が大半です。

詐欺被害で返金交渉を依頼する場合は「詐欺 被害 弁護士」などのキーワードで検索するなどして、被害者側の立場で活動してくれる弁護士を選びましょう。

ホームページに、詐欺被害の事例が載っている、詳しく解説しているところなどを探して、被害相談や返金対応に応じてくれるか確認することがおすすめです。

また、実際に弁護士が動いてくれるか、実績があるかどうかなどは、まずは法律相談に行って確認をしてから選ぶとよいでしょう。

(2)弁護団を探す

大規模な詐欺事件の場合、弁護団が結成されることがあります。
弁護団とは、弁護士が被害者救済のために任意で結成する団体のことです。

弁護団に頼むと、返金交渉を一括で行ってくれるので、被害者側のやり取りも安心だったり、弁護費用も安く済む場合もあります。

ご自身の事件で弁護団が結成されているかどうかは、新聞などに相談窓口が掲載されることもあるので、新聞やネットで検索をしたり、弁護士会に問い合わせてみるとよいでしょう。

まとめ

いかがでしたか?

詐欺の種類の多さや、救済されるのが難しいことも多いこと、弁護士を頼むと有利に進むケースがあることに驚いた方もいるかもしれません。

詐欺の被害に遭って、返金を受けることができるかどうかは、時間との勝負です。

もし、万が一詐欺被害に遭ったと思われた場合は、一刻も早く、詐欺の被害の交渉や返金対応に強い弁護士を探して相談してもらえれば、返金の可能性に少しでも繋げることができるのではないでしょうか。

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黙秘権とは何か?利用する際のメリットとデメリットを詳しく解説 https://how2-inc.com/right-to-keep-silence-9839 Wed, 06 Dec 2017 03:40:05 +0000 https://how2-inc.com/?p=9839 「黙秘権」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

最近ニュースになっている事件でも、「犯行の理由については黙秘している」などという報道がされているのを耳にした方もいるかもしれません。

黙秘権は、憲法や刑事訴訟法という法律で定められた権利のひとつです。

刑事事件に巻き込まれたり、容疑をかけられた場合に、警察などの取調べに沈黙したり、自分に不利益な供述を強要されないと定められています。

しかし、黙秘権を使うと、印象が悪くなるのではないか、逆に容疑が深まるのではないかなど、心配になる方も少なくありません。

実際、誤った黙秘権の利用の仕方をすると、かえって不利益になるデメリットが生じる可能性もあります。

今回は、黙秘権を使う場合のメリット、デメリットを含め、黙秘権とは何かについてお話しします。

1.黙秘権とは何か?


黙秘権とは、犯罪の容疑をかけられた被疑者や被告人が、話したくないことを話さず沈黙してよいという権利のことを言います。

黙秘権は法律で認められた権利で、憲法でも「何人も自己に不利益な供述を強要されない」として規定され、人権のひとつとして保障されています。

また、刑事訴訟法という法律では、警察の取調べを受ける際に、「取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」と、黙秘権について告げることが義務づけられています。

刑事裁判の手続きの中でも同様で、「終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる」と規定されています。

つまり、黙秘権とは、犯罪の容疑をかけられた被疑者にも、また刑事裁判にかけられることが決まった被告人にも認められている、喋りたくないことはしゃべらなくてよい、沈黙を続けて良いという権利なのです。

2.氏名は黙秘権の対象外!?黙秘権が使える内容を確認

(1)氏名を黙秘できるか

上記のように、刑事手続きでは黙秘権が保障されているので、自分にとって不利になるかどうかを問わず、言いたくないことは一切喋らなくても構いません。

ただ、黙秘権が使える範囲については、注意をしなければならないでしょう。

黙秘権は、「自分に不利益となる供述をしなくても良い」という憲法でも保障されている権利を現実に守るために作られたものです。

そのため、喋ったからと言って通常不利益にならないと考えられる、自分の名前などについては、黙秘権の対象外となるとされています。

つまり、黙秘権は、自分が刑事事件の責任を負う可能性がある内容について及び、黙秘権を利用できるので、注意してください。

(2)一部黙秘と完全黙秘の違いとは

黙秘権は、部分的に利用する「一部黙秘」と、全ての内容について沈黙を通す「完全黙秘」の2種類があります。

一部黙秘は、自分に不利なことについてだけ黙秘して、その他の内容は話すというものです。

完全黙秘は、自分に不利かどうかを問わず、全ての内容について話さないというものです。

黙秘権を利用する場合は、一部黙秘でも完全黙秘でも、どちらを使っても構いません。

ただ、どのような黙秘をするのが良いのかは、事件の性質や捜査の進捗状況などによっても変わります。

その後の刑事手続きへの影響を防ぐためにも、心配な場合は一度、弁護士に相談することがおすすめです。

3.黙秘権を使うタイミングと効果的な使い方とは

(1)黙秘権を使うタイミング

黙秘権は、いつでも、どのタイミングでも利用することができます。
取調べをする前には、警察官や検察官が黙秘権があることを告知することになっています。

しかし、告知される前であっても黙秘権は利用することができます。
黙秘したい場合には、取調べが始まったら直ちに黙秘権を行使できるのです。

また、警察官などが黙秘権を告知しない場合には法律違反にあたるので、弁護士を通じて抗議するなど、対応を検討しましょう。

(2)黙秘権の使い方

黙秘権を利用するには、「黙秘権を行使します」と言い、後は沈黙していれば構いません。

また、実際に沈黙するだけではなく、供述調書への署名を拒否するという方法もあります。
警察の取調べを受けると、そのやり取りの内容を文章にまとめた、「供述調書」という書面が作成されます。

取調べの最後に供述調書が読み上げられ、本人が内容を確認して署名することで、供述調書の内容が事実であるとされる仕組みです。

本人が署名した供述調書は、刑事裁判で証拠として使われますが、署名がなければ証拠になりません。
そこで、供述調書への署名を拒否することで、黙秘権を利用したのと同じ効果が得られます。

また、警察では、供述調書以外に「上申書」として、自分がやったことなど事件について書くように言われることがあります。

上申書は供述調書と異なり、署名しなくても証拠になるので、黙秘権を使いたい場合は、上申書の作成を拒否したほうが良いでしょう。

また、必要に応じて「刑事事件で作成される供述調書とは?作成方法や注意点を解説!」も併せてご参照ください。

4.黙秘権を利用するメリット・デメリットとは

(1)黙秘権を利用する3つのメリット

黙秘権を利用するメリットは、大きく分けて3つあると言えます。

①不利益な話をしなくて済む

一つは、なんといっても、自分にとって不利になる話をしなくてもよいということです。

取調べで自分に不利益になることを話した場合でも、供述調書に署名すれば、その内容は証拠として裁判で利用されます。

あとから撤回したいと思っても、警察官に脅されて供述した等の理由がない限り、言ったことを取り消すことはできません。
そのため、そもそも不利益な話自体をしなくて良いという黙秘権は有効に利用できるのです。

②黙秘権を利用してもそれが理由で悪く扱われない

二つ目は、黙秘権を利用しても、それを理由に不利益は被らないということです。

黙秘しても不利益を受けない、という「不利益」には、次の3つの内容が含まれます。

  • 黙秘権を利用したことを理由に、刑罰などのペナルティを受けない
  • 黙秘権を利用したことで、不利益な判決を下されない
  • 黙秘権を侵害して得た自白などの供述は、裁判で証拠として使うことはできない

このため、黙秘権を使ったら罪が重くなることを心配する人は多いと思いますが、黙秘権を使ったことを理由に罪や刑罰が重くなることはないので安心してください。

③違法な取り調べを防ぐことができる

三つ目は、黙秘権があることで、横暴な取り調べを防ぐ効果が期待できるということです。
日本では、以前「自白は証拠の女王」と言われ、刑事手続きの中で重視されていました。

そのため、捜査機関は、脅したり、時には暴力を振るったりして、何が何でも自白を撮ろうとしたのです。

現在では、取調べの可視化が進むなど、違法な取り調べには厳しい目が向けられていますが、それでも「認めなければ釈放されない」などと脅したりする取調べは後を絶ちません。

しかし、上述のように黙秘権を侵害して得た供述は証拠で使えないことから、横暴な取り調べを防ぐことができるというメリットもあります。

(2)黙秘権を使う3つのデメリットとは

黙秘権は、使い方によってはデメリットを生じることもあります。
メリットと同様、デメリットも大きく分けて3つ考えられます。

①反省していないと思われる

まず第一に、反省していないと捉えられるおそれがあることです。
黙秘権を使っても、それが理由に不利益を受けることはありません。

しかし、素直に罪を認めて反省してれば、情状で有利に考慮してもらえる可能性がありますが、黙秘権を利用して罪を認めないことで、心証を悪くするというデメリットがあることも事実です。

特に、実務では、完全黙秘をしていると悪性格と判断されてマイナスに働くことが多いので、利用する際には注意が必要です。

②黙秘権を利用することが無意味な場合がある

二つめは、他の証拠が揃っている場合は、黙秘権を利用しても無意味な場合があることです。

物証や目撃証言、被害者の証言などの客観的な証拠が揃っているのに、無暗に黙秘をしていると心証を悪くする可能性が高まることは避けられません。

③取調べが長期化する恐れがある

三つ目は、黙秘権を利用することで、取調べが長びく恐れがあることです。
客観的な証拠などから、犯罪を行ったことが明らかな場合、素直に罪を認めて反省すればスムーズに手続きが進みます。

また、犯罪が軽微で、本人も反省しており、被害者にも謝罪を尽くして示談もまとまっているような場合では、容疑を認めていても不起訴処分で前科がつくことを避けられる場合もあります。

しかし、黙秘権を利用すると、本人の供述を埋めるだけの捜査をしなければいけなくなるので、取調べが長期化し、逮捕から勾留に続く身柄の拘束時間も長引くというデメリットがあります。

5.黙秘権を正しく使うために取るべき方法とは


上記のように、黙秘権を利用するには、メリットとデメリットがあります。

せっかく、自分に不利な供述をしなくて済んだのに、かえって反省をしていないと捉えられて量刑でマイナスに判断されては、意味がありません。

ただ、黙秘権は、憲法でも保障された人権であることに変わりはありません。
黙秘権を正しく使い、最大限の効果を得るために取るべき方法、それは弁護士を呼ぶことです。

弁護士を呼び、捜査状況などを把握した上で黙秘権の使い方についてアドバイスを受けることで、黙秘権の利用によるデメリットを避けることができます。

逮捕されたら弁護士を呼べないのではないかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。

刑事事件を扱う事務所の多くが、初回接見と言って、着手金などが必要になる本契約とは別に、一定の料金で留置場まで出向くサービスを行っています。

警察の担当者に頼んで、思い当たる事務所に初回接見を直接頼むか、家族に連絡をしてもらい初回接見を頼むよう伝えてもらいましょう。

また、頼める身内や、思い当たる弁護士がいない場合は、日本弁護士連合会や核と土府県の弁護士会などが行っている当番弁護士を利用するのも一つの方法です。

当番弁護士は、逮捕後に、1回に限り無料で弁護士を派遣してもらえる制度です。

当番弁護士は名簿順で選べないので、なかには刑事弁護の経験が浅い当番弁護士にあたることもあるようですが、まずは専門家のアドバイスを受ける点では有効です。

まとめ

黙秘権は、新聞やニュースで目にする言葉ですが、実際の使い方には注意が必要なことを、今回初めて知ったという方もいらっしゃるかと思います。

黙秘権は、大切な権利である反面、使い方を間違えると心証を悪くしてかえってマイナスの結果を招いてしまう恐れがあります。

黙秘権を利用する場合は、弁護士を呼んで相談して、適切な使い方のアドバイスを受けながら進めることが何よりも大切です。

刑事事件に巻き込まれないのが一番ではありますが、普段から刑事事件に強い弁護士を探しておくなどしておくと、いざというときに安心かもしれません。

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家族が酔っ払って傷害事件を起こしてしまった!対処法と弁護士ができることとは? https://how2-inc.com/to-get-drunk-injury-case-9830 Mon, 04 Dec 2017 08:54:09 +0000 https://how2-inc.com/?p=9830 夫が酔っ払って喧嘩をして傷害事件で逮捕されたらしい…

傷害事件を起こして逮捕された息子に、警察署で面会できない…

等々、家族を逮捕したと警察から連絡が来ても、対処法が分からず不安になった経験をされた方もいるのではないでしょうか。

また、警察から連絡が来てすぐに会いに行こうとしたけれど、逮捕直後は面会できないと言われた家族の方もいるかもしれません。

ご自分や家族は大丈夫だと考えていても、いつ傷害事件に巻き込まれるか分かりません。

傷害事件に巻き込まれたり、家族が傷害事件で逮捕された場合には、できるだけ早く対応することが重要です。

今回は、家族が酔って傷害事件を起こした場合の逮捕の流れや、対処方法についてご説明しますので、万が一のときに役立ててください。

1.傷害事件で逮捕されるケースとは


今回は、傷害事件がテーマですが、どういう犯罪で、どのくらいの罪になるのでしょうか。

傷害罪は、次のように刑法で定められています。

(1)傷害

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害とは、「人の生理的機能に障害を加えること」をいいます。
具体的には、殴る蹴る、ナイフで切りつけるなどしてケガをさせた行為はもちろん、暴行によってPTSDを引き起こすような行為も含まれます。

一般的に、酔っ払った上で問題になる傷害のケースとしては、喧嘩して相手を殴るなどしてケガをさせたような場合が多いでしょう。

殴ったけれどケガをさせなかった場合は、暴行罪にとどまります。
暴行罪は、次のように刑法で定められた犯罪です。

(2)暴行

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

つまり、暴行して傷害の結果を相手に負わせたかどうかが傷害事件と暴行事件の違いになります。

酔っ払った場合の典型例でいうと、殴るなどして相手にケガをさせた場合は傷害罪、殴ったけれどケガはしなかった場合に暴行罪が成立するということになるのです。

両者は似ていますが、ケガの有無によって、刑罰が大きく変わるので注意が必要です。

2.傷害事件で逮捕された場合の手続きの流れとは


酔っ払って上記のような傷害事件を起こして逮捕されたら、どうなるのでしょうか。
逮捕されたら前科がつくと思っている方もいますが、そのようなことはありません。

ここでは、逮捕からの手続きの流れを見ていきましょうと思います。

(1)逮捕

酔っ払って傷害事件を起こして逮捕されると、警察署内の留置場に入れられ、警察署内の取調室で警察官による取調べを受けることになります。

逮捕から48時間以内に身柄が検察庁に送られ(送検)、検察官との面談を受けます。
そして、送検から24時間以内、逮捕から72時間以内に、釈放されるか引き続き拘束されるかが決められます。

逮捕から最長72時間の拘束期間のことを逮捕期間といい、この間は家族も面会することはできません。
この間に面会できるのは弁護士だけです。

なお、逮捕された人を含め、犯罪の容疑をかけられた人のことを「被疑者」と言います。
よくテレビでは「容疑者」などといいますが、これはマスコミ用語です。

(2)勾留

勾留とは、逮捕に続く拘束のことをいい、法律で原則10日間、最長10日間延長することができると決められています。

つまり、一度逮捕されると、途中で釈放されない限りは、逮捕された日から最長で23日間、留置場で生活しなければならなくなるのです。

勾留期間中は、逮捕期間と同じように留置場で生活し、取調室に都度出向いて取調べに応じなければいけません。
逮捕と異なり、勾留期間中は、家族を含む一般の人も面会をすることができるのが原則です。

ただ、面会を許すと証拠隠滅をする恐れがあるなどと判断されると一般人との面会ができなくなることもあります(接見禁止処分)。

酔っ払って傷害事件を起こしたケースでは、家や仕事がある、初犯で反省もしている等の事情があれば勾留されずに釈放されるケースも少なくありません。

しかし、余罪や同種前科があったり、相手のケガが重く釈放すると証拠隠滅を図る恐れがあると考えられる場合等は、勾留されて会社に戻れないということもあります。

(3)処分決定

勾留中の10~20日の間に、検察官が今回の事件をどうするか処分を決定します。
処分には、起訴(公判請求)、略式起訴、不起訴処分の3つの異なる内容があります。

①起訴(公判請求)

事件を刑事裁判にかけることを起訴といいます。
その中でも、裁判官と検察官、弁護士が裁判所の法廷に立って行う刑事裁判を公判請求といいます。

②略式起訴

略式起訴は、罰金を払って事件を終了させる手続のことをいいます。

罰金を払えば釈放されるので、早く社会復帰できるというメリットは特に会社員の方にとっては大きいものがありますが、裁判で反論することができないので、無実を主張したいような場合は公判で争わなければいけません。

また、略式起訴とはいえ、罰金刑を払うと前科がつくので注意が必要です。
酔っ払って傷害事件を起こした場合、略式起訴で罰金刑を払って終了するケースが比較的多くみられます。

なお、公判請求でも、略式裁判でも、検察官が事件を起訴すると、いわゆる犯人の呼び名は「被疑者」から「被告人」に変わります。

③不起訴処分

不起訴とは、検察官が事件を起訴しないと決める処分を言います。
起訴されないということは、有罪の判決が下らないので、前科がつくことはありません。

酔っ払って起こした傷害事件で不起訴処分を獲得するためには、相手のケガの程度にも依りますが、謝罪と賠償を尽くして相手に示談に応じてもらうことが有効です。

(4)保釈

保釈とは、起訴された後に認められる、釈放手続きのひとつです。
逮捕直後に保釈してほしいという人がいますが、これは間違いです。

保釈で釈放してもらうためには、裁判所に保釈を請求して認めてもらい、保釈金を裁判所に納める必要があります。

保釈金は、勝手に引越しをしないなどの保釈条件に違反することなく、保釈期間を無事に過ごせば返金してもらえます。

(5)裁判

検察官が事件を起訴してから、だいたい1か月~2か月後くらいに、刑事裁判が開かれることになります。

裁判は、本人確認、起訴状朗読、黙秘権の告知、罪状認否等の冒頭陳述から始まり、証拠調べ手続、検察官の論告求刑、弁護人による弁論、被告人自身による最終陳述を経て、最後に裁判官が判決を言い渡して終了します。

(6)控訴・上告

裁判官が下した判決に不満がある場合は、再度の裁判をしてもらうことができます。
第一審の判決が納得できないときは控訴審に、二回目の控訴審の判決が納得できないときは上告を行います。

3.酔っ払って傷害事件を起こして逮捕された場合に行うべき3つの対応とは


ご家族が傷害事件を起こして逮捕された場合、気になるのは、前科がつくのか、早く釈放されるのか、被害者にどう謝って許してもらったらいいか、ということではないでしょうか。

ここでは、前科がつくことを避け、早期の釈放と示談を目指すために、ぜひ行ってほしい 3つの対処法を紹介します。

(1)弁護士を頼んで被害者と示談する

傷害事件は、相手がいる犯罪類型です。

このようなケースの場合、被害者に謝罪と賠償を尽くして示談をしてもらうことが、その後の刑事手続きの中で大きな意味を持ってきます。

傷害罪は親告罪(示談をして告訴の取り下げを得られれば起訴されない犯罪)ではないので、示談しても絶対に不起訴になるとは限りません。

ただし、被害者と示談をして許してもらえれば、不起訴処分にしてもらえる可能性が格段に高くなるのです。

また、示談することで、刑事処分を軽くしてもらうことが期待できると同時に、後になって民事上の損害賠償を請求されるなどのトラブルを防止することができます。

ただ、ご自身で直接交渉しようとすると、相手から高額な示談金を請求されて話がこじれたり、無理に示談に応じさせようとしたなどと強要罪が問題になるケースもあります。

そこで示談をする際には、間に弁護士を入れて、適切な内容で、効果的な内容の示談をすることをおすすめします。

酔っ払って傷害事件に発展したようなケースでは、事件の前後の記憶があいまいだったり、喧嘩の理由が相手にあったり、正当防衛だという言い分があることもあるかもしれません。

しかし、相手が実際にケガをして被害届が出されたり、逮捕されている以上は、ぜひ示談は検討に入れて対策を進めるべきポイントです。

(2)弁護士を接見に呼ぶ

警察は、逮捕された被疑者=犯人という前提で捜査を行います。
延々続く取調べに疲れ切ってやってもいないのに罪を認めたり、諦めて供述調書に署名することは避けなければいけません。

このような事態に対応するためには、少しでも早く弁護士を呼んで、接見に来てもらうことが有効です。
弁護士は、逮捕直後でも、警察官の立会いなく1対1で面会することができます。

そのため、取調べ対応のアドバイスを受けたり、黙秘権の適切な使い方を教えてもらうことができるのです。

弁護士事務所では、着手金などを払う本契約をする前に、一度留置場に面会をする「初回接見」をしてくれるところも多いので、是非利用してみてください。

また、弁護士を探せない場合は、都道府県の弁護士会に電話をして、最初の一度限り無料で派遣できる当番弁護士を依頼することも有効です。

(3)弁護士を依頼して釈放に向けた交渉を進める

これまで見てきたように、刑事事件の手続きにはいくつかのタイムリミットがあります。

すなわち、逮捕から48時間以内に事件を受け取った検察官が、それから24時間以内に勾留するかを決め、裁判官も認めると、10日間の勾留が続くことになります。

逮捕期間で釈放されれば、会社にばれずに職場復帰することも可能ですが、さすがに10日を超える勾留となると、会社に事情を知られずに済ませることは困難です。

そこで、弁護士を依頼して、検察官・裁判官と交渉してもらうことで、できるだけ早い釈放を目指すことをおすすめします。

具体的には、家族のサポートがあること、会社で普段まじめに仕事をしていること、事件を反省していること、示談ができていること、といった事情をあげて、逃亡したり証拠隠滅の危険がないことを主張していきます。

こうした活動は、家族などの一般の人が行うのは困難です。
最善のタイミングで、最も効果を出すために、刑事弁護の経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

まとめ

今回は、酒に酔って傷害事件を起こした場合の対処方法についてお話ししましたが、如何だったでしょうか。

傷害事件では示談をすることが有効ですが、自分で示談をしようとすると、かえってトラブルになる可能性があることに驚いた方もいるかもしれません。

酒に酔っての傷害事件は、ご自身や家族が飲みすぎて起こしてしまう可能性もあれば、酔った人に絡まれて巻き込まれて発生すると言ったケースも考えられます。

つまり、絶対に自分は合わないとは言えないトラブルなのです。

万が一、酔っ払って傷害事件に巻き込まれ逮捕された場合には、少しでもはやく弁護士に相談をして、釈放や示談に向けた対策を検討して実行に移すことが重要になります。

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