交通事故で損害を負ってしまった場合の休業補償について

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毎年50万件以上発生する交通事故。いくら気をつけていても防げないこともある。

これをお読みの方にも、ご自身が、もしくは親族が交通事故に遭ってしまったという方もいらっしゃるのではないだろうか。交通事故に遭い、仕事を休まなければならなくなった場合、保険会社に対して休業補償を請求でき、生活費等に充てることができる。

今回は、休業補償について説明していきたい。ご参考になれば幸いだ。

目次

1、休業補償とは?休業損害との違いについて

2、休業補償がもらえる人もらえない人

3、休業補償の範囲は?

4、休業補償の計算方法

5、休業補償を請求する流れは?請求先と請求方法について

6、より多くの休業補償を獲得するためのポイント

1、休業補償とは?休業損害との違いについて

休業補償とは、簡単に言えば、交通事故で仕事を休んで収入が減少したことに対する補償のことである。

巷では、「休業損害」と「休業補償」を同じ意味に扱っている場合もあるが、厳密には休業損害と休業補償とは異なる。休業補償が仕事を休んだことに対して支払われるものであるのに対し、休業損害は交通事故で入通院したことに対して支払われるお金である。

具体的な違いとしては、補償の範囲につき、休業損害は休業補償よりもその対象範囲が狭いのである。

2、休業補償がもらえる人もらえない人

前述のように、休業補償とは、交通事故によって仕事を休んだ分の補償であるから、仕事をしていない人はたとえ交通事故に遭っても休業補償はもらえないことになる。具体的に貰える人ともらえない人は以下の通りだ。

(1)休業補償をもらえる人

休業補償をもらうことができるのは、例えば、

  • 実際に仕事をしている人(給与所得者や自営業者等)
  • 家事従事者

などである。

なお、主婦などの家事従事者は、家事をすることで収入を得ているわけではないが、家事も立派な労働であり、仮に交通事故によって家事ができなくなった場合には家族や家政婦など他の人に家事を代わってもらう必要が出てくる。そのため、家事従事者も休業補償の対象になるのである。

(2)休業補償をもらえない人

他方、仕事をして収入を得ていない人は、休業補償をもらうことができない。例えば、

  • 学生
  • 無職の人
  • 年金受給者
  • 生活保護受給者
  • 家賃収入などの権利収入で生活をしている人

などである。

ただし、交通事故時に学生や無職であったとしても、交通事故の前に内定をとっていて近々働くことが予定されていたり、または就職活動中で仕事をする可能性があったのであれば休業補償が認められることがある。

具体的には、以下のような事情があって、かつそのことをきちんと書面で証明できる場合である。

  • 仕事をしようと職を探していた場合
  • 就職先が既に決まっていたなど仕事をする可能性があった場合
  • 仕事をする能力(技術)があった場合

3、休業補償の範囲は?

休業補償は必ずしも全額請求できるとは限らない。

例えば、通勤中や勤務中に交通事故に遭った場合には、労災申請をすることができ、労災申請により6割の休業補償給付があった場合には、保険会社に対して請求できるのは残りの4割のみの請求に止まる。

また、もし通院や入院期間中に勤務先から給与が支払われていた場合には、交通事故で仕事を休んでも収入が減収していないのであるから、当然休業補償を請求することはできない。

4、休業補償の計算方法

休業補償の計算方法は、以下の3つがある。保険会社側と直接交渉する場合には、基本的に「(1)自賠責保険基準」で計算することになる。他方、弁護士に依頼した場合には「(2)弁護士基準・裁判基準」で計算することになる。金額としては、(3)弁護士基準・裁判基準が最も多く、次に(2)任意保険基準、(1)自賠責基準と続くことになる。

なお、基本的には、本人が保険会社と直接交渉するより弁護士に依頼した方が休業補償の金額が高くなる。

(1)自賠責保険基準

自賠責保険基準を用いた場合には、

休業補償=5,700円×休業日数

となる。

もっとも、例外的に1日の収入が5,700円を超えると認められた場合には、1万9,000円を限度として、その実額が1日あたりの金額として算定することができる。

なお、「休業日数」は、交通事故による負傷によって現実に仕事を休んだ日数のことであり、自賠責保険基準の場合でも、後述の裁判基準の場合でも同じである。

(2)任意保険基準

任意保険基準の場合には、各任意保険会社ごとに一定の限度額や基準が設けられている。

そのため、自賠責保険基準や裁判基準のような明確な計算式はないが、現実の収入に近い金額で支払いがなされるようである。

(3)弁護士基準・裁判基準

裁判基準を用いた場合には、

休業補償=1日あたりの基礎収入×休業日数

となる。

なお、裁判基準の場合には、現実の収入をもとに「基礎収入」(休業損害算定の基礎とすべき収入金額のこと)を算出することになる。その場合には、一般的には交通事故前の3ヶ月分の収入をもとに、1日あたりの基礎収入を算出することになる。

具体的には、雇用主に交通事故前3ヶ月間の給与額等を記載した休業損害証明書を作成してもらうことになる。

そして、雇用主に作成してもらった休業損害証明書をもとに、交通事故前3ヶ月分の合計収入を算出し、それを90で割って、1日あたりの基礎収入を算出することになる。

すなわち、

1日あたりの基礎収入=交通事故前3ヶ月分の収入÷90

という計算式になる。

また、休業日数も休業補償の計算に関わる。休業補償は前述の通り、交通事故が原因で仕事を休まざるを得なくなった日数のことである。この日数についても休業損害証明書に記載してもらうことになる。

5、休業補償を請求する流れは?請求先と請求方法について

休業損補償の請求方法は、法律では定められてはいないが、実務上、事故当時に収入があったことを証明するために下記のように請求するのが一般的である。

(1)給与所得者の場合

①提出方法

給与所得者の場合には、雇用主から自賠責保険に提出するための書式「休業損害証明書」に所定事項を記入してもらうことになる。そして、雇用主に記入してもらった休業損害証明書に、事故前年度の源泉徴収票または所得証明書を添付して、加害者または保険会社に提出することになる。

なお、今回はこちらで「休業損害証明書」の雛形を用意したので、ぜひダウンロードして活用してもらいたい。

休業損害証明書の雛形のダウンロードはこちら

②休業損害証明書の書き方

参考までに、休業損害証明書の書き方について説明しているソニー損保のホームページを紹介したい。

ソニー損保のホームページはこちら

(2)自営業者の場合

事故前年度の確定申告書を加害者または保険会社に提出することになる。

(3)家事従事者の場合

同居人との「続柄」が省略されていない住民票を加害者または保険会社に提出することになる。

6、より多くの休業補償を獲得するためのポイント

(1)有給休暇の場合でも休業補償がもらえる!

前述の通り、もし通院や入院期間中に勤務先から給与が支払われていた場合には、交通事故で仕事を休んでも収入が減収していないのであるから、休業補償を請求することは当然できない。

しかし、有給休暇を使って治療を行った場合には、本来なら自由に使えたはずの有給休暇を、やむをえずに怪我の治療のために使うことになってしまったのであるから、当然休業補償の対象として休業日数に加えることができる。

ぜひ、この点は覚えておいて欲しい。

(2)必ず医師の診断を受けること!

休業補償は、入院した場合はもちろん請求できるが、通院リハビリだけでも請求できる場合がある。

しかし、保険会社としてはできるだけ休業補償をしたくないと考えることから、医師の診断に基づいていなければなかなか休業補償を認めない傾向がある。医師の診断が無ければ、たとえ休業する必要が相当期間あったとしても保障してくれる期間が短くなってしまいかねない。

そのため、医師には診察時にしっかりと自分の症状を伝えて事故の影響で仕事を休んでいることとその理由となる症状を具体的に説明するようにしたい。そして、それらの事をカルテにきちんと記録してもらうようにしよう。

(3)弁護士に依頼する!

弁護士に依頼した場合には、前述の休業補償の計算式のうち、裁判基準を用いて損害の計算をすることになる。そのため、基本的には、本人が保険会社と直接交渉するより弁護士に依頼した方が休業損害の金額が高くなる。

この点で弁護士に依頼した方がより多くの休業補償を獲得できることにつながる。また、弁護士に依頼すれば面倒な手続きを全て弁護士に任せることができるので、その点も弁護士に依頼するメリットと言えるだろう。

まとめ

今回は交通事故に遭われてしまった場合の休業補償について説明してきたがいかがだっただろうか。交通事故に遭わないことが一番ではあるが、もし万が一遭ってしまった場合には、ご自身の生活もあるので、しっかりと休業補償を受けるようにしよう。今回の話が休業補償を受ける場合の一助になれば幸いだ。

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