交通事故の示談のタイミングは?交渉の際の注意点も解説!

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交通事故に遭って損害を被った場合には、事故の相手方に対して損害賠償請求をしますが、そのためには相手方任意保険会社と示談交渉をする必要があります。

交通事故の示談交渉は、いつのタイミングで始めるべきかがわからないことがあります。また、示談交渉について弁護士に相談したり依頼すべきタイミングも一般的にはあまり知られていません。さらに、示談交渉をする場合に注意すべき点も知っておく必要があります。これらのことを知らないと、適切に示談交渉を進めることが出来ずに受け取る損害賠償金が少なくなってしまうなどの不利益を被る可能性があります。

そこで今回は、交通事故の示談交渉のタイミングや注意点について解説します。

1. 交通事故の種類によって示談交渉のタイミングが異なる

交通事故に遭った場合、いつのタイミングで示談交渉をはじめるのかについて悩む人が多いです。やっかいごとは早く終わらせたいという気持ちから、交通事故後、すぐに相手方保険会社と示談交渉を始めたいと希望する人もたくさんいます。

しかし、交通事故後示談交渉を開始するタイミングは、その交通事故によって大きく異なります。急いで示談交渉をすると、受け取る損害賠償金が少なくなって不利益を受けることもあります。そこで、以下では交通事故の種類別に示談交渉をするタイミングを説明します。

(1)まずは病院を受診して傷害があるかどうかを確かめる

交通事故で示談交渉を開始するタイミングは、その交通事故が物損だけの事故か人身損害がある事故かによって大きく異なります。よって、まずは交通事故によって傷害を負ったかどうかを確認する必要があります。そのためには、交通事故後すぐに病院を受診しましょう。

交通事故に遭っても、すぐには傷みなどの自覚症状がないことがあります。ムチ打ちなどの場合には、数日たってから痛みが出てくるケースもあります。しかし、このような場合、事故後すぐに病院を受診していないと、相手方保険会社から「後から出た痛みは交通事故とは別の怪我によるものだ」と言われて賠償金を支払ってもらえなくなることがあります。

よって、交通事故に遭ったら、たとえ痛みなどの症状が全くなくてもすぐに医師の診察を受けることが大切なのです。傷害があればそのまま通院を継続しますし、傷害がなければ通院を継続する必要はありません。

(2)物損の場合

交通事故が起こっても、特に怪我もしておらず物損だけが発生するケースがあります。この場合には、交通事故後すぐに示談交渉をすることが可能です。車の修理代などの損害賠償金額を算定して、双方の過失割合を決定して互いの負担金額を確定します。示談交渉が成立すれば、その内容に従って損害賠償金の支払いを受けることができます。

人身損害が起こっている場合でも、物損部分については先に示談をしてしまうことが多いです。

(3)死亡事故の場合

交通事故によって被害者が死亡するケースがあります。このような死亡事故の場合にも、交通事故後すぐに示談交渉を開始することができます。

死亡すると、すぐに損害内容が確定するからです。死亡事故で請求出来る損害項目は、死亡慰謝料や葬儀費用、逸失利益などが主となります。これらの損害賠償金額と過失割合について示談交渉をすすめて、話し合いが成立すればその内容に従って支払いを受けることができます。

ただ、交通事故後すぐに示談交渉を開始出来るとは言っても、交通事故の次の日や3日後などから開始することは普通はありません。そのようなことは遺族の感情にも反しますし、常識にもそぐわないことです。

通常は、49日の法要が済んだ頃から示談交渉を開始することが多いです。

また、交通事故の損害賠償請求の時効は3年ですので、遺族がすぐに示談交渉を開始したくない場合には、しばらく時をおくことも可能です。

2.傷害事故の場合

交通事故の示談交渉のタイミングでよく問題になるのは、傷害事故の場合です。傷害事故の場合には、交通事故後すぐに示談交渉を開始することができませんし、すべきでもありません。以下でその理由を説明します。

(1)必ず症状固定まで通院を継続する

交通事故で傷害を負った場合には、事故後病院に通院を続けます。この通院は、傷害が完治するか、それ以上治療を続けても改善しない状態である症状固定をするまで継続する必要があります。

交通事故で傷害を負った場合、相手方に対して入通院慰謝料や治療費の請求ができます。これらの賠償金の金額は、入通院期間が長ければ長いほど高くなります。そして、入通院慰謝料や治療費は、症状が完治するか症状固定するまでの間の分を受け取ることができます。交通事故後は完治か症状固定まで通院を続けると、受け取れる全額の入通院慰謝料や治療費などを受け取ることができます。これに対して、途中で通院を放棄してしまうと、そのときまでの入通院慰謝料と治療費しか受け取ることができず、本来よりも受け取る損害賠償金の金額が少なくなってしまいます。

よって、交通事故後は必ず完治か症状固定するまでの間通院を継続する必要があります。

通院中は損害内容が確定しないので、示談交渉を開始することはできません。

(2)症状固定後示談交渉を開始する

交通事故で傷害を負った場合に相手方保険会社と示談交渉を開始するタイミングは、傷害が完治するか症状固定したときです。基本的に、この時点で損害の内容が確定するからです。

完治した場合であればそれまでの入通院慰謝料や治療費、雑費などを請求することになります。完治はせずに症状固定して後遺障害が残った場合には後遺障害の認定請求をして等級認定を受けることになります。

後遺障害の認定を受けることができたら、その等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することもできます。

後遺障害の認定請求をするためには、事故後6ヶ月以上通院を継続する必要があります。

このように、交通事故後の通院を終えて各損害費目や過失割合について相手型保険会社と交渉し、話し合いが成立したら、その内容に従って損害賠償金を受け取ることができます。

3.弁護士依頼のタイミングは?

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼することができます。弁護士に示談交渉を相談したり依頼するタイミングはいつが良いのかという問題がありますので、以下で具体的に見てみましょう。

(1)交通事故後いつでも相談可能

交通事故に遭った場合、いつ弁護士に相談するのが良いのでしょうか?これについては「いつでも良い」という回答になります。

交通事故直後に弁護士に相談してもかまいませんし、通院中に不安になった場合、相手方保険会社との示談交渉の開始後に相談してもかまいません。

弁護士に相談したからといって、すぐに示談交渉が開始するとは限らないからです。

たとえば、交通事故で傷害を負って今後通院が長引きそうな場合、今後の手続きの流れや示談交渉の見込みなどが心配になることがあります。このような場合、まずは今何をすべきかと言うことを弁護士にアドバイスしてもらうと大変心が楽になりますし、安心です。

交通事故直後に弁護士に相談に行くことも有益なのです。

また、交通事故後通院が長引いてきたときにも、不安になってくることがあります。このままいつまで通院を継続すれば良いのかがわからなくなることもあるでしょう。相手方保険会社から一切連絡がないので、どうなっているのか不安になることもあります。このような場合でも、自分の今の対処方法が正しいのかどうか、通院を継続していても良いのかなどについて弁護士に相談してアドバイスをもらうと安心です。

さらに、相手方保険会社との示談交渉が難航している場合にも弁護士相談は効果的です。自分の今の言い分や対処方法が正しいのかどうかや、今後の適切な対処方法についてアドバイスが受けられますし、場合によっては弁護士に示談交渉を依頼することも可能です。

(2)保険会社から治療費を打ち切られたタイミングで依頼する

弁護士に示談交渉を依頼するタイミングとしては、いくつか典型的な時点がありますので、以下でその例をご紹介します。

まずは、相手方保険会社から治療費の支払いを打ち切られたタイミングです。

交通事故後は傷害を負った場合、完治か症状固定するまで通院治療を継続します。この場合、途中で通院を打ち切ってはいけません。しかし、相手型保険会社からは、通院途中の段階で「そろそろ通院は終わって示談交渉したい」と言われるケースがあります。この場合、被害者がこれに従わず通院を続けていると、保険会社が通院治療費の支払を打ち切ってくることがあります。

被害者の通院期間が長引くと、入通院慰謝料や治療費などの金額が上がり、損害賠償金額が高くなります。よって、相手型保険会社にとっては、通院期間が長引くことはあまり好ましいことではありません。そこで、治療費支払いを打ち切って被害者にプレッシャーをかけ、通院治療を打ち切らせようとするのです。

このように、治療費を打ち切られてしまうと、被害者としてはとても不安になります。この先通院を続けていてはいけないのではないかと思って、相手方と示談してしまうこともあります。しかし、このような対応は本来不利益を被るものであり、不適切です。

そうではなく、弁護士に相談して示談交渉を依頼することが効果的です。弁護士に相談をすれば、完治か症状固定まで通院を継続するようにすすめてくれますし、相手方保険会社ともきちんと交渉をしてくれるので、安心して通院を継続出来ます。また、このことによって本来受け取れるとおりの正当な損害賠償金を受け取れるようになります。

(3)自分で交渉がスムーズにすすまないタイミングで依頼する

弁護士に示談交渉を依頼するタイミングとしては、相手方保険会社と自分で示談交渉をしているけれどもうまくいかないケースがあります。

たとえば損害金額の計算方法について意見が合わないこともありますし、過失相殺について争いが発生することもあります。このようなケースでは、自分で示談交渉をすすめても、なかなか解決につながりません。相手方保険会社に言いくるめられて、本来受け取れる金額より少ない賠償金しか受け取ることができない可能性もあります。

このように、相手型保険会社との示談交渉がうまくいかない場合にも弁護士に依頼すると効果的です。弁護士なら、しっかり交渉して有利な解決を導いてくれますし、保険会社に言いくるめられることもなく、本来の権利は精一杯主張することができます。

(4)訴訟を起こすタイミングで依頼する

交通事故事件を弁護士に依頼するタイミングとしては、訴訟を起こすタイミングも有効です。示談交渉は自分でできても訴訟までは素人が自分でするのは難しいです。そこで裁判のプロである弁護士に訴訟を任すと安心ですし、適切に訴訟をすすめてくれます。

(5)弁護士特約が便利

交通事故によって弁護士に相談したり示談交渉を依頼すると、弁護士費用がかかります。この場合、自動車保険の弁護士特約をつけていると役立ちます。弁護士特約とは、交通事故に関する弁護士費用がかかる場合、そのかかった費用を保険金から出してもらえる特約です。300万円を限度とするものなどが多いです。

弁護士特約をつけていると、交通事故に遭った場合に気軽に弁護士に相談したり示談交渉を依頼できるので、いざというときに大変心強いです。

4.示談交渉の注意点

交通事故後相手方保険会社と示談交渉する際、いくつか注意点がありますので、以下で説明します。

(1)保険会社から示談を急がされても妥協しない

交通事故によって傷害を負った場合、その症状が完治するか症状固定するまでの間は入通院を継続する必要があります。入通院を途中で打ち切ると、本来もらえるはずの入通院慰謝料や治療費などがもらえなくなりますし、後遺障害の認定も受けられないので後遺障害慰謝料、逸失利益の支払いも受けられなくなって大変不利益です。

しかし、相手方保険会社としては、このような高額な損害賠償金の支払いは避けたいと考えています。そこで、相手方保険会社が示談を急がせてくることが多いです。

通院期間が6ヶ月以上に及ぶと、「もう治療は終わり」「治療は6ヶ月まで」などと言って、病院への治療費の支払を打ち切ってプレッシャーをかけてくることもあります。

しかし、交通事故後の通院治療を6ヶ月に限るべきなどという決まりはありません。1年でも2年でも、症状固定をしないなら通院を継続する必要があります。

また、相手方保険会社から治療費の支払いを打ち切られたら、自分の健康保険を利用して通院治療を継続出来ます。自分が負担した治療費については、後に相手方保険会社と示談する際にまとめて請求できます。

このようなことがあるので、相手方保険会社が示談を急がせてきても、それに応じてはいけません。たとえ治療費を打ち切られても、妥協する必要はないのです。今治療費を自分で負担しても後でまとめて請求できるのですから同じことです。

よって、保険会社との示談交渉に際しては、相手から示談を急がされても決して妥協せず、完治か症状固定まで通院を継続してから示談交渉を開始することが大切です。

(2)事故の相手方が裁判のために急いでくることも

相手方が示談交渉を急がせてくるパターンとしては、保険会社側の事情ではなく相手方本人の事情によるケースがあります。それは、事故の相手方が刑事裁判になっているケースです。相手方に飲酒運転や危険運転があった場合などには、相手方が刑事裁判にかかることがあります。この場合、交通事故の被害者との間で示談交渉が成立していると、刑事裁判の結果が有利になることが多いです。たとえば、示談が成立していなければ実刑(刑務所に行くこと)になるケースでも、示談交渉が成立していれば執行猶予で済むこともあります。このようなことがあるので、相手方が刑事裁判になっている場合には、示談を急がせてくることがあります。

ただ、このような相手方の事情に振り回される必要はありません。通院は完治又は症状固定まで継続しないとこちらが損をするわけですから、相手方の刑事裁判のために早期に治療を打ち切って示談交渉する必要はないのです。

ただ、お見舞い金として相手方の提示金を受け取ること自体は問題ありません。損害賠償金の一時金として受け取ることも可能です。

重要なのは、「示談成立」としてしまわないことです。相手方からお金を受け取るとしても、それはあくまで一時金やお見舞い金であり、後日改めて示談交渉をしてまとめて損害賠償請求をすることを明確にしておく必要があります。

交通事故の示談交渉のタイミングまとめ

今回は、交通事故の示談交渉のタイミングについて解説しました。交通事故が物損や死亡事故なら事故後すぐに示談交渉を開始することができますが、傷害を負った場合には必ず完治か症状固定まで通院治療を継続する必要があります。

交通事故後はいつでも弁護士に相談依頼できますが、相手方保険会社から治療費を打ち切られたり争いが発生したときに依頼すると良いでしょう。

相手方保険会社から示談交渉を急がされたり、相手方本人の刑事裁判のために示談を迫られても、これに応じる必要はありません。

今回の記事を参考にして、きっちり通院をしてから示談交渉を開始し、適正な金額の損害賠償金を受け取れるようにしましょう。

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