交通事故の自覚症状、他覚症状とは?その重要性とポイントを解説!

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交通事故に遭うと怪我をすることがあります。

その場合には入通院慰謝料が請求できますし、怪我が酷い場合には、後遺障害が残ることもあります。

交通事故による怪我の症状には、自覚症状と他覚症状があります。

交通事故後すぐに自覚症状がないこともありますし、自覚症状があっても他覚症状が認められないこともあります。

自覚症状と他覚症状とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

自覚症状がない場合にも通院すべきなのかや、他覚症状がない場合にも後遺障害の認定請求ができるかどうかなども押さえておく必要があります。

これらのことを正しく知っておかないと、交通事故後に適切な対処ができずに損をしてしまうおそれがあるので、今回は交通事故の傷害にもとづく自覚症状と他覚症状について解説します。

※この記事は2017年5月18日に加筆・修正しました。

1.交通事故の傷害には自覚症状と他覚症状がある

交通事故に遭った場合には、傷害を負うことが多いです。
傷害の内容はさまざまですが、実は傷害による症状には種類があります。

それは、自覚症状と他覚症状です。

自覚症状と他覚症状は、交通事故にもとづいて相手方に慰謝料などの損害賠償請求をする際に非常に重要になります。

まずは、自覚症状と他覚症状がそれぞれどのようなものなのかについて、見てみましょう。

(1)自覚症状とは

自覚症状とは、受傷者が自分で自覚している症状のことです。

典型的には痛みがありますが、これ以外にも手足がしびれたり、めまいや吐き気がしたり、関節に違和感があるなどの症状もあります。

これらは、すべて受傷者本人の主観や感覚にもとづくものであり、客観的に証明できるものではありません。

ただ、自覚症状がある場合には、受傷者自身は身体に問題があることを把握しやすいです。
自覚症状があるにもかかわらず、自分が怪我をしたことに気づかない人はあまりいないでしょう。

このように、自覚症状とは受傷者が自分で感じることができる症状であり、客観的には証明できない症状のことです。

(2)他覚症状とは

怪我や病気の症状として、他覚症状という種類の症状もあります。

他覚症状とは、医学的に客観的に捉えることができる症状のことです。

例えば下記のような症状です。

  • 身体がむくんでいる場合や骨折している場合
  • 皮膚の温度が異常に高くなっている場合
  • 筋力や握力が低下していたり、腱反射が弱くなっている場合
  • 筋電図に異常が出ていたり、軟部組織が損傷を受けた場合
  • 筋骨が萎縮してしまったり、指などの可動域が狭くなってしまっている場合

などがあります。

これらの症状は、すべて医師などの第三者が客観的に検査をして知ることができます。

たとえば、骨折している場合、患者が「骨折している」と訴えようが訴えまいが、画像診断をすれば骨折していることは明らかにわかります。

患者が骨折していることに気づいていなくても、骨折は客観的にとらえることができるのです。
このように、患者の主観にもとづかず、客観的に第三者がとらえることができる症状が他覚症状です。

他覚症状は、交通事故後の後遺障害認定請求の際に特に問題になることが多いです。
後遺障害認定の際には、基本的には他覚症状がないと等級認定が受けられないからです。

2.交通事故後すぐに自覚症状がない場合

交通事故の自覚症状が問題になるのは、事故直後の受傷による通院に関してです。
具体的にどのような問題なのか、以下で解説します。

(1)事故直後は自覚症状がないことがある

交通事故に遭って怪我をすると、事故直後は痛みや違和感などを感じないことがあります。
つまり、交通事故後特に自覚症状がない場合の問題です。

一般的に、通常は怪我をしたらその部分に痛みを感じると考えられていますので、事故直後に全身を見た感じで特に怪我をしている様子もなく、痛みも出ていない場合には、病院に行かない人がいます。

ところが、交通事故の傷害の場合には、事故直後には自覚症状が出ないことがよくあります。
交通事故に遭うと、ただでさえ興奮状態になるので痛みを感じにくくなります。

捻挫などの怪我をしていても、全く痛みを感じず自覚症状が出ないことはよくありますし、中には骨折をしていても気づかない人もいます。

交通事故の傷害で多いムチ打ちなどのケースでは、事故後2~3日が経過してから痛みなどの具体的な症状が出てくることが多いです。

さらに恐ろしいのは、脳内出血が起こっているケースです。
この場合、事故直後受傷した段階では自覚症状が出ない場合があります。

しかし、病院に行かずに放置していると、脳内に血液が溜まってしまい、やがて死に至りますので大変危険です。

このように、交通事故後には実際には傷害を負っているにもかかわらず自覚症状が出ないケースが結構多いです。

そこで、自覚症状が出ていなくても、交通事故直後には必ず病院を受診することが重要です。
そこで重大な他覚的所見が発見されて、脳内出血などの重大な症状が判明する可能性もあります。

病院に行かないと命にもかかわることになるので、大変重要な問題です。

(2)病院を受診しないと損害賠償が受けられなくなる

脳内出血のような命にかかわる問題以外にも、事故直後に病院を受診する必要性があります。

それは、交通事故にもとづく損害賠償請求権にかかわる問題です。

交通事故で傷害を負った場合、病院に入通院をすると入通院慰謝料が請求できますし、症状に応じて後遺障害認定を受けることによって後遺障害慰謝料などを請求できます。

ところが、交通事故後すぐに病院を受診しないと、これらの損害賠償請求ができなくなるおそれがあります。

たとえば交通事故直後には自覚症状がでないムチ打ちの傷害を負った場合、すぐに病院を受診せず、数日経って痛みが出てきてから病院を受診したとします。

すると、相手型保険会社からは「その症状は、交通事故とは無関係な別の原因によるものだ」と言われて賠償金を支払ってもらえなくなります。

交通事故後病院へ行くまでのタイムラグがあるので、その間に別原因で受傷した可能性があると言われてしまうのです。

ムチ打ちによる症状はかなり厳しいものです。
通院やリハビリも必要になりますし、通院期間も長くなります。

場合によっては後遺障害14級に認定されて、後遺障害慰謝料なども受け取ることができる症状です。

ところが、交通事故後すぐに病院を受診しなかったために、これらの損害賠償金がまったく受け取れなくなってしまうおそれがあります。

こうなると、ムチ打ちによる傷害での通院費用もすべて自己負担になってしまいますし、入通院慰謝料も受け取ることができません。

休業損害なども請求出来ませんし、後遺障害の認定も受けられないので後遺障害慰謝料も請求できず、逸失利益の請求もできません。

このように交通事故後自覚症状がないからといって病院を受診しないと、後になって必要な賠償請求ができずに大変な不利益を受ける可能性があります。

そこで、交通事故後は、自覚症状がまったくなくても、とにかく1度、すぐに病院を受診することが重要です。

3.後遺障害認定の場合に問題になる他覚症状

交通事故にもとづく傷害の症状には、他覚症状もあります。
他覚症状が問題になるのは、主に後遺障害認定請求の場面です。

具体的にどのような形で問題になるのか、以下で見てみましょう。

(1)後遺障害認定のために他覚症状が必要

交通事故で傷害を負って、その症状が完治しない場合には後遺障害の認定を受けて、後遺障害慰謝料などの請求をすることができます。

しかし、後遺障害の認定を受けるためには、基本的に他覚症状が必要になります。

たとえば事故後入通院を続けて症状固定したとして、その時点で自分では痛みなどが残っているとしても、客観的に症状が残っていなければ、後遺障害の認定を受けることが難しくなります。

後遺障害認定の際に重要視されるのは、レントゲンやMRIなどの画像診断結果です。
画像において他覚的所見があれば、その内容に応じた後遺障害が認定されることになりやすいです。

反対に、画像において特に他覚的所見がなければ、いかに強い自覚症状があっても後遺障害が認定されないことが多いです。

患者がいかに強く痛みやしびれなどの症状を訴えても、それを画像などで客観的に感知することができない限りは、後遺障害が認められません。

このことによって、交通事故被害者が大きな不満を持つことも多いです。

このように、後遺障害認定の過程で他覚症状が重視されるのは、等級認定手続きに客観性を保つためです。

自覚症状をもとにして後遺障害を認定してしまうと、同じ傷害で同じように不自由を感じているにもかかわらず、痛みなどを強く訴える人ばかりが後遺障害の認定を受けられることになって、不公平になります。

また、本当は痛みが出ていないのに嘘をついたり大げさに症状を誇張することによって、保険金をだまし取ろうとする人が出てくる恐れがあります。

このような問題を防止して、適正に後遺障害の等級認定をすすめていくために、後遺障害認定手続きでは他覚症状が重視されるのです。

そして、その中でももっとも信頼性の高いのが画像診断です。

指の可動域などを調べる場合には、患者に指を動かしてもらって検査する方法などもありますが、この場合、患者がわざと指を動かしづらそうにすると、実際にはどのくらい指が動くのかと言うことを100%証明することができません。

これに対して画像診断は嘘をつけないので、信頼性が高いとみなされます。

(2)画像診断ができない場合の対処方法

交通事故後の傷害において、画像診断による他覚症状が見られない場合には、まったく後遺障害の認定請求ができないのでしょうか?

実は、必ずしもそういうわけではありません。
以下に、画像で他覚症状が証明できなかった場合の後遺障害認定請求の方法を説明します。

① 再度検査方法を確認する

後遺障害認定請求をして、画像によって他覚症状が見当たらないという理由で後遺障害が認定されなかった場合、まずはその検査方法を再確認することが必要です。

提出した画像診断方法は、本当にその症状の証明のために適切な方法だったのかという問題があります。

ひと言で画像診断と言っても、その手法はいろいろあります。
不適切な手法での検査を行った場合、本来明らかにできるはずの他覚症状が映らないケースもあります。

そこで、画像によって他覚症状が認められなかった場合、医師と相談をして、他の検査方法を検討してみることが効果的です。

より適切な手法の検査によって他覚症状が認められれば、その画像診断結果をもとにして後遺障害認定請求(異議申し立て)をすることができます。

そして、その診断結果にもとづいて後遺障害の等級認定を受けることができるでしょう。

② 画像以外でも他覚症状の証明方法がある

後遺障害の等級認定を行う場合、他覚症状の証明方法として画像が重視されることが多いです。

よって、後遺障害の等級認定手続きを行う際、レントゲン画像やMRI画像を提出して、それにもとづいた調査を受けて、画像に特に異常がなければ認定が認められないことになりがちです。

しかし、後遺障害の証明方法は画像に限られるわけではありません。

他覚症状さえ証明できれば良いわけですから、画像診断がなくても、他の検査方法で他覚症状が証明できれば後遺障害の認定が受けられる可能性はあります。

たとえば神経学的な検査や理学的な検査、臨床検査などの他の検査方法でも他覚症状が判断できることがあります。

画像では異常が証明できない場合には、これらの別の検査方法について、医師に相談してみると良いでしょう。

③ 後遺障害14級は他覚症状が不要

後遺障害の等級認定手続きにおいては、他覚症状の証明が重要ですが、後遺障害14級の場合、必ずしも他覚症状が必要にはなりません。

後遺障害の14級に該当する場合としては、ムチ打ちなどの症状による神経症状が典型的です。

ムチ打ちの場合には、MRIやレントゲン画像によっても異常が認められないことが普通なので、そのことが原因で後遺障害の認定請求が却下されることが多いです。

しかし、そもそも後遺障害14級は、他覚症状が不要な等級ですし、必ずしも画像によって異常が発見される必要はないのです。

実際に、他覚的所見がなくてもムチ打ちで後遺障害14級の認定を受けたケースはあります。

よって、ムチ打ちが原因で後遺障害の認定請求をする場合には、画像診断に顕著な異常が見られなくても諦めることはありません。

この場合、受傷後の治療状況や症状の経過などを総合的に判断して、症状を医師や後遺障害認定機関に認めてもらえるかが重要になります。

症状を誇張しても認めてもらえることはありませんが、医師とよく相談して、将来においても回復ができない症状(後遺障害)であると認めてもらえるよう、後遺障害診断書をわかりやすく書いてもらうなどの対処をしましょう。

まとめ

今回は、交通事故の自覚症状と他覚症状を解説しました。

自覚症状とは、痛みなど受傷者が自分で主観的に認識できる症状のことです。
他覚症状とは、骨折やむくみ、体温の異常など、医師などの第三者が客観的に捉えることができる症状のことです。

交通事故後は自覚症状がなくてもすぐに病院を受診しましょう。

他覚症状は後遺障害認定請求の際に特に問題になります。
画像診断で他覚的所見がない場合にも、必ずしも後遺障害認定をあきらめる必要はありません。

交通事故の自覚症状と他覚症状について正しく理解して、交通事故後には適切に対応して不利益を被らないようにしましょう。

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