時効援用とは?借金を長期間返していなければ返済が不要になる?

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長期にわたって借金返済をしていないケースでは、借金返済が不要になることがあります。
それは、借金に時効が完成するからです。
借金の時効はどのような場合に成立するのでしょうか?

借金の種類によっても時効の期間が異なるので、正しく知っておく必要があります。
また、借金の時効が完成しても何も手続きをしなければ借金の消滅を主張することはできません。

そのためには援用という手続きが必要になります。
時効援用とはどのような手続きで、どのような方法で行うのかを知っておかないと、時効が成立しても借金の消滅を主張することができずに返済してしまうおそれもあります。

そこで今回は、借金の時効援用について解説します。

1.借金の時効とは

借金をしている場合には、通常毎月一回など定期的に返済しているものですが、返済が苦しくなって返済しなくなってしまうことがあります。

借金返済を滞納すると借入先の業者や個人などから督促が来るので、通常は支払を再開することが多いですが、中には督促を無視し続けて支払をしないケースがあります。

夜逃げをして借入先に連絡先を知らせなかった場合や、個人間の借金で貸し主が放置した場合などには、借金の督促が来ないケースもあります。
このようにして、借金を長期間支払っていない場合、借金の返済をしなくて良くなる可能性があります。それは、借金に時効が成立するからです。

この場合の時効は消滅時効です。
消滅時効とは、ある権利について一定期間行使しない場合に、その権利が消滅してしまうことです。

もともと権利があったとしても、長期間請求していないという状態が優先されてしまうのです。
借金も債権という権利の1種なので、貸し主が長期間請求していない場合消滅時効にかかってしまいます。

よって、お金を借りている場合、一定の長期間にわたって貸し主に一切返済をしていない場合には時効が完成して借金返済義務がなくなり、返済をしなくてよくなります。

反面、貸し主からしてみると、長期間お金の返済請求をしなければ、借金を返してもらう権利がなくなってしまうことになります。
借金の時効は、借主にとっては有利な制度ですが、貸し主にとっては大きな不利益を受ける可能性のある制度なので、注意が必要です。

2.借金の時効期間は借金によって異なる

借金は長期間返済していない場合、時効によって消滅しますが、具体的に何年くらい返済をしていなければ時効にかかるのでしょうか?
借金の時効期間を抑えておく必要があります。

(1)借金の時効による時効期間の違い

借金の時効期間は借金の種類によって異なります。

借金する場合、借入先はいろいろありますが、借金の時効期間は誰から借りたお金かということで変わってきます。

具体的には、消費者金融やクレジットカード会社、銀行などの場合には借金の時効期間は5年です。
この場合、最終返済日から5年が経過すると、借金は時効にかかって返済の必要はなくなります。

これに対して信用金庫や公庫、信用保証協会などからの借入金については、時効期間は10年になります。
よって、最終返済日から10年が経過しないと借金はなくなりません。

借入先が個人である場合などにも借金の時効期間は10年になります。

(2)商事債権と民事債権

時効期間にこのような違いが発生するのは、借金の種類が商事債権か民事債権かという違いによります。

商事債権とは、商人からの借入であったり、商業目的の借入のケースです。
この場合、早めに取引などをする必要があるので時効期間は短くなり、5年となります。

民事債権とは、商人ではない一般人同士の借入であり、目的も商業目的ではないケースです。
この場合は取引を急ぐ必要も無いので時効期間が長くなり、10年となります。

上記の債権者の中でも、消費者金融やクレジットカード会社、銀行などは営利目的の企業なので、これらからの借入金は商人からの借入となります。
よって、商事債権となって時効期間が5年になります。

これに対して信用金庫や公庫、個人などの人は営利目的を持たないので商人とはなりません。
よって、これらの機関や人からの借入金は一般民事債権となって、時効期間が10年になります。

さらに、借金が個人からのものであってもその借金の目的が商業目的である場合にもその借金は商事債権となって、時効期間が5年になります。

たとえば、個人事業者が事業目的のために信用金庫から借入をするケースや、個人から借り入れる場合には、その借金の目的が商業目的であることによって借金が商事債権となります。
この場合は、貸し主が信用金庫や個人であっても借金の時効期間が5年になるので注意が必要です。

3.時効には中断がある

借金しても返済しなくなってから5年または10年すれば時効が完成して返済が不要になります。
しかし、時効期間が経過したからと言って、必ずしも借金がなくなるとは限りません。

借金の時効には中断という制度があるからです。
時効の中断とは、その事由が起こると借金の時効の進行が中断してしまい、またはじめから時効期間の計算が開始されてしまうことです。

わかりやすいように例を挙げます。

たとえば消費者金融から借金をして、3年返済をしていない状態が続いていたけれどもその時点で中断事由が発生したとします。
すると、その時点からまたあらたに5年(または10年)が経過しないと借金の時効が完成しなくなります。

借金を長期にわたって返済していない場合でも、借入先から時効の中断をされると借金の時効は完成しません。

次に、借金の時効中断事由を具体的に見てみましょう。

時効中断事由として代表的なものは貸し主からの請求であり、効力が大きな請求方法は裁判上の請求です。
また、内容証明郵便によって請求をした場合にも借金の時効完成を6ヶ月延ばすことができます。

債務者(借り入れ人)が借金の存在を認めてしまった場合にも借金の時効は中断します。
たとえば借りた人が貸し主に対して、「借金を支払います」という内容の念書を書いたり、借金の一部を支払ってしまった場合などには借金の時効中断事由となって時効期間はまた0からのカウントになります。

4.裁判されたら時効が10年延びる

借金の時効中断事由としてもっとも典型的な例が債権者からの請求ですが、中でも裁判上の請求は効果が大きいです。

借金返済を長期にわたってしていなくても、時効の進行中に債権者が裁判を起こしてきたら、時効は中断してしまいます。
この場合、判決が出ると借金の時効は判決確定時からさらに10年間延長されてしまいます。

消費者金融やクレジットカード会社などからの借金の時効期間はもともと5年ですが、裁判が起こって判決が確定すると、そこからの時効期間は10年になります。

そして、10年以内にまた裁判を起こして判決が出ると、その判決確定時からさらに10年間時効が延長されます。
このように、10年ごとに裁判を繰り返すことによって時効の延長をし続けると、時効は永遠に完成しないことになります。
このことは、個人からの借入の場合でも同じです。

人にお金を貸している場合で長期間返済してもらっていない場合などには、借主に対して借金返済の裁判を起こせば時効期間を10年延ばすことができます。
その後は10年ごとに裁判を繰り返せば、借金返済請求ができなくなることを防ぐことができます。

このように、裁判上の請求をすると時効を中断させて時効完成を防げるので、借金を長期間返済していないからと言って時効により返済を免れることは難しくなることが多いです。

5.時効が完成したら援用が必要

(1)時効援用とは

借金を長期間(5年または10年)返済せず、その間借入先から特に裁判などもされなかった場合には、時効が完成して借金返済義務がなくなります。
ただ、この場合何も手続きをしないのに自動的に借金返済義務がなくなることはありません。

借金の時効を主張して返済義務がなくなったと言うためには、時効援用という手続きをしなければなりません。
時効の援用とは、「借金の時効の利益を受けます」という意思表示のことです。

せっかく借金の時効が完成しても、時効の援用をしなければ返済義務が正式になくならないので、債権者に対して「借金は返済しない」と言えなくなるおそれがあります。

(2)時効援用ができる人

時効の援用ができる人は、消滅時効の援用ができるのは、「時効により利益を受ける者」であり、借金の消滅時効を援用するのは、通常はお金を借りた本人です。
ただ、借主以外の人が時効援用できるケースもあります。

たとえば、借金の連帯保証人になっている人は、自分が負担している連帯保証債務の分だけではなく、主債務(借り入れた本人の分の債務)についても時効援用ができます。

連帯保証人の債務は主債務が消滅すると一緒に消滅するので、連帯保証人が主債務の時効を援用すると、自動的に自分が負担する連帯保証債務も一緒に消滅するので結果的に連帯保証人は借金返済をする必要が無くなります。

6.時効援用の方法

(1)援用の方法に決まりはない

借金の時効が完成したら、時効援用をする必要があります。

ここで、時効援用をする場合、具体的にどのような方法で手続きすれば良いのかという問題があります。

時効援用をするための手続きとして法律上の定めがあるわけではありません。
よって、債権者に対して「時効を援用します」という内容の通知をすれば、どのような形でも時効援用通知として有効になります。

たとえば貸し主に対して口頭で「時効を援用します。」と伝えた場合でも時効援用としては有効なのです。

(2)内容証明郵便で時効援用する

時効援用はどのような方法でも有効ですが、時効援用をしたかどうかということが後から問題になることがとても多いです。

借り主は「すでに時効援用したから借金はなくなっている」と主張しますが、これに対して貸し主は「時効援用の通知は受けていない」と言って借金がまだ存続していることを主張するのです。

こうなってくると、借主は、時効援用をした証拠がなければ有効な時効援用があったことを主張することができなくなってしまいます。
そこで、時効援用をする場合には、争いようのないはっきりとした証拠が残る方法で手続きする必要があります。
具体的には、配達証明つきの内容証明郵便という郵便を使って時効援用通知を送ります。

内容証明郵便とは、相手に送ったものとまったく同じ内容の文書(控え)が差し出し人の手元と郵便局に残るタイプの郵便です。
相手に送ったのと同じ内容の控えがあるので、後から相手方によって「そのような内容は知らない」と言われるおそれがなくなります。

配達証明とは、いつ相手方にその郵便が配達されたかを郵便局が証明してくれるサービスです。
この配達証明があることによって、相手方から「そのような郵便は受け取っていない」と言われるおそれがなくなります。

このように、内容証明郵便(配達証明つき)で通知を送ると、債権者に対して確実に時効援用をしたという証拠が残ります。
このことにより、債権者から「時効の援用通知は受け取っていない」と言われるおそれがなくなるので安心です。

(3)内容証明郵便を利用する方法

内容証明郵便を送りたい場合には、内容証明郵便を取り扱っている郵便局に行って発送する必要があります。
どのような郵便局でも取り扱っているわけではないので、事前に内容証明郵便の取り扱いがあるかどうかを確認してから郵便局に行きましょう。
内容証明郵便を郵便局から発送する場合には、まったく同じ内容の文書を3通用意していく必要があります。

最近ではインターネット上からでも電子内容証明郵便を送るサービスを利用することもできますので、日中は仕事などがあって郵便局に行くことが難しい場合などには利用すると便利です。

さらに、内容証明郵便には決まった書式があります。定型書式から外れると、郵便局で発送してもらうことができないので注意が必要です。
また、内容証明郵便を発送する際には,枚数によって数千円の料金がかかります。

内容証明郵便で時効援用通知を送る場合には「●●の債権については、最終の返済日である平成●年●月●日からすでに5年が経過しており、消滅時効が完成しています。
そこで、私は本債権について時効の援用をします。」などの内容が記載されていればOKです。

この場合重要なのは、債権(借金内容)の特定と、時効の援用をするという意思表示です。
借金を特定するためには、誰が誰から(契約当事者)いつ(借金したとき)いくら借りたのかなどによって特定します。
業者からの借入の場合などには、契約番号などを記載しても良いでしょう。

7.時効完成後に返済すると時効援用出来なくなる!

借金の時効が完成したら、時効援用すると借金返済の必要が無くなります。
しかし、時効完成後、援用前に借金の存在を認めたり返済してしまうと、時効援用する権利がなくなってしまいます。
このように借り主が時効完成後に借金を認めたり、借金の一部や全部を支払った場合などには、債権者は「もう借り主は時効援用をしないのだな」と考えるので、その信頼を保護する必要があるということからその後の援用が許されなくなります。

この場合、借金の全部ではなく一部の返済であっても、時効援用が完全にできなくなってしまうので注意が必要です。
極端な話、100万円借りている中で1円返しただけの場合であっても、もはや時効援用はできなくなってしまうのです。

借金の時効完成後に貸し主から連絡があり「1000円だけでも返してほしい」と頼まれて、「それくらいならいいか」などと考えてついつい返済してしまうと、もはや時効援用が認められなくなり借金の全額の返済が必要になってしまいます。

借金の時効が完成したら、その後は一部であっても絶対に返済はしないことと、できるだけ速やかに内容証明郵便(配達証明つき)で時効援用通知を送ることが非常に重要です。

まとめ

今回は、借金の時効と時効援用手続きについて解説しました。
借金を長期間返済していない場合には、時効が完成して返済義務がなくなることがあります。
借金の時効期間は貸し主によって異なりますし、その借金の目的によっても異なります。

借金の時効には中断があり、時効の進行途中に裁判を起こされると、判決確定時からあらためて10年の時効期間の経過が必要になってしまいます。

また、時効が完成したら、時効援用という手続きをとる必要があります。
時効援用とは「時効の利益を受けます」という意思表示のことですが、確実に証拠を残すため、内容証明郵便(配達証明つき)を利用して時効援用通知を送ることが重要です。

また、時効が完成してもその後に債務の存在を認めたり借金の一部や全部を支払うと、もはや時効援用ができなくなってしまいます。
時効が完成したら、速やかに内容証明郵便で時効援用通知を送ることが大切です。

今回の記事を参考にして、借金の時効が完成したら、賢く時効援用をしましょう。

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