妊娠中に離婚したら-考えておくべき慰謝料請求、親権と養育費の問題とは?

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「妊娠中に夫が不倫したので離婚したい…」

「離婚したいが妊娠中なので、養育費や親権を取れるか心配だ…」

年間推計22万5000組を超える夫婦が離婚している昨今(「平成27年人口動態統計の年間推計」厚生労働省)、妻が妊娠中に離婚に至るケースも少なくありません。

夫や妻の浮気や不倫、借金の発覚など、妊娠中でも離婚せざるを得ない状態になる夫婦もいれば、些細なことから不満が募り離婚に至るという夫婦もいらっしゃるでしょう。

離婚するとなると、夫婦の財産分与や、不貞行為がある場合などの慰謝料請求など、解決しなければならない多くの問題があります。それに加えて、妻が妊娠中の場合であれば、特に妻にとって大きな問題になるのが、生まれてくる子どもの「親権」や「養育費」の問題ではないでしょうか。離婚と出産の時期によっては、子どもの親権があるのに、子どもと苗字が別だったり、戸籍が別々になるという事態も生じるので注意が必要です。

そこで今回は、妻が妊娠中に離婚する場合に留意すべき問題点について説明していきます。ご参考になれば幸いです。

目次

目次

1.妊娠中に離婚を考えているなら-押さえておくべき離婚の流れとは?

2.妊娠中に離婚した-親権の行方と、養育費請求の注意点とは?

3.子どもが戸籍に入れない!?妊娠中に離婚した場合の子どもの戸籍と姓の関係とは?

1.妊娠中だが離婚を考えているなら-押さえておくべき離婚手続きの流れとは

まずは離婚の手続きの流れについて説明していきます。

(1)離婚する意思が決まったら-離婚手続きの流れとは

離婚する際には、慰謝料や財産分与など多くの決めなければならない事項があります。

特に妊娠中に離婚する場合には、生まれてくる子どものためにも、金銭的な取り決めに加えて養育費について決めておかなければならなりません。離婚した後々トラブルにならないために、以下のような離婚の流れに沿って、ポイントを押さえておくようにしましょう。

①離婚の合意

離婚は、役所に離婚届が受理されれば成立します。

もっとも、協議離婚の場合はあくまで夫婦が離婚に合意していることが必要です。夫婦一人の希望だけでは離婚できないのです。

もし、離婚の合意ができない場合は、家庭裁判所で専門家を介して調停を行い(調停離婚)、調停がまとまらなければ家庭裁判所による審判を行うことになります(審判離婚)。

調停離婚や審判離婚が難しい場合、最終的には家庭裁判所に離婚の訴えを提起して離婚をすることになります(裁判離婚)。なお、裁判離婚できるのは法律で決められた場合に限られます。そのように離婚できる原因を法定離婚事由といいます。

法定離婚事由について詳しくは「相手が離婚に反対していても離婚できる?法定離婚事由について」の記事をご参照下さい。

②金銭・子どもについての取り決め

離婚の合意をしたら、次は金銭と子どもに関する取り決めをすることになります。

金銭面については、以下の項目について、そもそも支払うのか、支払うとしたらいくら支払うのかを決めておく必要があります。

  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 年金分割

などです。

妊娠中に離婚する場合、生まれた子どもの親権は原則として母親が取得することになります。その他の養育費や面接交渉権について決めておくようにしましょう。

合意した内容は、離婚協議書として公正証書にしておくとよいでしょう。

なお、年金分割を請求する際は、合意内容の書類の持参か公正証書の提示が必要になります。強制執行付の公正証書にしておけば、もし養育費の支払いが滞った場合にも安心です。

③離婚届の提出

離婚は、離婚届が役所で受領されると効力が生じる。旧姓に戻らず引き続き結婚時の姓を利用したい場合、離婚の日から3ヶ月以内に役所に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出することが必要となります。

(2)裁判離婚は自由にできない-離婚できる場合とは

離婚は、夫婦が合意すれば自由にできる。

それは妻が妊娠中の場合でも同様です。ただし、夫婦で合意できず、離婚裁判をする場合には、法律で決められた以下の離婚原因のどれかに当てはまる必要があります。逆に言えば、離婚原因があれば、相手の同意がなくても離婚が認められる可能性があります。

このような離婚原因を法定離婚事由と言います。詳しくは以下の通りです。

①不貞行為がある場合(民法770条1項1号)

不貞とは、浮気や不倫のことであるが、裁判では肉体関係に至った場合が不貞行為とされています。単に食事に行ったりするだけでは、法律上は不貞行為にあたりません。

②悪意の遺棄をされた場合(民法770条1項2号)

悪意の遺棄とは、配偶者が正当な理由なく同居義務・協力義務等を行わないことを言います。裁判で悪意の遺棄とされた例では、夫が自宅に半身不随の妻を置き去りにしたまま生活費も渡さず長期間別居したケースがあります。

③相手の生死が3年以上不明の場合(民法770条1項3号)

生死が不明とは、生存か死亡かも証明できない場合を言い、単に行方不明なだけでは認められません。

④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合(民法770条1項4号)

精神病を理由とする離婚は、実務ではほぼ認められません。裁判でも、夫婦の一方が不治の精神病というだけで離婚理由を認めるべきではないとしたケースがあります。

⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合(民法770条1項5号)

婚姻関係が破綻して回復の見込みがない場合を言います。別居期間や、虐待の有無、性格・性の不一致、浪費など、夫婦双方の意思や共同生活を回復する可能性などを、裁判所が具体的事情から判断います。

法定離婚事由について詳しくは「相手が離婚に反対していても離婚できる?法定離婚事由について」の記事をご参照下さい。

2.妊娠中に離婚した-親権の行方と、養育費請求の注意点とは?

妊娠中の離婚でもっとも気になるのが、誰が親権を持つのか、ということではないでしょうか?

ここでは、妊娠中の離婚の親権と養育費について説明していきます。

(1)母親が親権をとりやすい、妊娠中に離婚した場合の親子関係とは

①妊娠中の子供の親権は?

妻が夫の子どもを妊娠中に離婚した場合、生まれた子どもの親権は母親が取得します。

②既に生まれている子供の親権は?

一方、妊娠中の子ども以外に未成年の子どもがいる場合は、その子どもについて父母のどちらかを親権者と決めなければならなりません(民法819条)。話し合いがまとまらなければ、調停・審判という手続きに移り、最終的には裁判所が関与して強制的に決定します。親権者が決まらないと離婚届は受理されないので、夫婦できちんと話し合うことが必要です。

親権者を決める際、子どもの利益の観点から様々な事情が考慮されます。

しかし実務では、母性優先の原則や、現状維持の原則などが重視されます。

「親権争いは母親が強い」とよく言われるように、特に子どもが幼い場合は、母親が親権をとりやすいのが実情です。

(2)親権と監護権の違いとは

親権と類似した意味の言葉として「監護権」というものがあります。ここでは親権と監護権についてそれぞれ説明していきます。

①親権とは

そもそも親権とは、未成年者の子どもを監護・養育して財産を管理し、その子どもの代理人として法律行為をする権利や義務のことを言います。権利といっても、実際は子どもの成長のために親が果たすべき義務がその内容と言えるでしょう。

親権の内容は、「財産管理権」と「身上監護権」に分けられます。

  • 財産管理権

財産管理権とは、子どもの財産を管理し、財産上の行為の代理人となる権利のことを言います。

例:包括的な財産の管理権、子どもの法律行為に対する同意権 

  • 身上監護権

一方、身上監護権とは、子どもを保護監督し、子どもの精神的な成長のために教育する権利のことを言います。

例:身分行為の代理権、居所指定権、懲戒権、職業許可権

②監護権とは

監護権とは、親権の「身上監護権」に注目し、親が子どもを監護・教育する権利義務を抽出したものです。子どもの近くで世話や教育をする親の権利義務といえるでしょう。

監護権は、親権者が行使するのが原則です。

「財産管理は父親が最適だが、子どもの世話は母親の方がよい」とか「父親が親権者だが、仕事で不在がちで子どもの世話ができない」等の事情がある場合は、親権者と監護権者が別になることもあります。 

(3)親権と養育費は別問題、監護権のない親に請求できる養育費とは

監護権のある側は相手方に対して養育費を請求できます。ここでは、養育費について説明していきます。

①養育費とは

養育費は、離婚した夫婦の子どもが、社会的に自立するまでに必要な生活費のことです。衣食住のための費用や教育費、医療費、娯楽費などのすべての費用が養育費に含まれます。

②養育費を請求できる期間は?

親の養育費の支払義務、扶養義務は、子供が成人するまで続きます。離婚によって、夫婦間の法律的な婚姻関係が解消されても、親子の関係は続くからです。

つまり、養育費は基本的に子供が成人するまで請求できます。

③養育費を請求できるのは?

養育費を請求できるのは、子どもを監護する親、つまりそばにいて子どもの世話をする親です。そして請求する相手は、子どもを監護していない親となります。養育費の請求に親権や姓は関係なく、監護権を有していれば、もう一方の親に請求できるのが原則です。

④養育費請求するなら、押さえておくべき親子関係

養育費を請求する前提として、妊娠中に離婚し、その後生まれてきた子どもの親子関係を考えておく必要があります。

離婚後300日以内に生まれた子どもについては、別れた夫(元夫)に父性の推定が及びます。つまりこの期間内は、元夫が生まれた子どもの父親とされます。仮に、妻が夫以外の男性との間に授かった子どもでも、離婚後300日以内に出生届けを出せば元夫の子どもとして戸籍に載るし、元夫は親権がなくても子どもの父親と認められます。

とすると、親には子どもの扶養義務があるので、母親は、親権者でない父親に養育費を請求できます。

では、離婚から300日を超えて生まれた子どもについてはどうなるのでしょうか。

この場合、別れた夫に養育費を請求するためには、前提として、子どもが夫の子どもであるということを認めさせなければならなりません。そのため、前提として、前夫に認知をしてもらう必要があります。

もし別れた夫が、認知に応じない場合には、認知の訴え等の法的手続をとることが必要となります。

3.子どもが戸籍に入れない!?妊娠中に離婚した場合の子どもの戸籍と姓の関係とは?

最後に、妊娠中に離婚した子供の戸籍と姓について説明していきます。

(1)母親と同じ姓にならないこともある、子どもの姓の仕組みとは

妻が夫の子どもを妊娠中に離婚した場合、子どもの親権は母親が取得するのだから、子どもと母親の苗字は一緒になる、と思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、親権と姓や戸籍の問題は別なのです。

母親と子どもの姓は、子どもが生まれた日によって違いが生じます。具体的には、養育費の場合と同様、離婚から300日以内に生まれたかどうかが分かれ目になるのです。

具体的には以下の通りです。

①離婚から300日以内に生まれた子どもの苗字

離婚から300日以内に生まれた子どもの姓は、結婚当時の夫婦の姓になります。

母親が結婚中に夫の姓を名乗っていた場合には、離婚すると届け出をしない限り旧姓に自動的に戻りmzす。そのため、母親が旧姓に戻っている場合は、子どもと母親の姓が違うという事態が生じるのです。

離婚した母親と子どもの姓が違うと、幼稚園・保育園の申し込みなどで生活しにくい事態が生じるかもしれません。その場合は、母親は、家庭裁判所の許可を得て、市町村役場に届け出て、子どもの姓を自分と同じ旧姓に変更することができます。

②離婚から300日を超えて生まれた子どもの苗字

離婚から300日を過ぎて生まれた子どもは、母親の姓となります。

(2)子どもの親権はあるのに戸籍は夫!?離婚と戸籍の関係とは

妊娠中に離婚した場合、子どもの出生が離婚から300日以内かどうかという点は、戸籍にも影響します。

①子どもが離婚から300日以内に生まれた場合の戸籍は

子どもが離婚から300日以内に生まれた場合、その子どもは結婚していた時の戸籍に入ります。具体的には、結婚当時、戸籍の筆頭者が夫の場合、生まれた子どもは夫の戸籍に入ることになります。

一方で離婚した妻は、結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作ることになる。そのため、親権は母親として元妻が持ちつつ、母親と子どもの姓が異なるという上記のような事態が生じるのです。

しかし、母親の中には、気持ちの面でも、将来子どもが戸籍謄本を取る場合に備える点でも、子どもを自分の戸籍に入れたいと思う人も多いでしょう。

子どもを母親の戸籍に入れたいという場合には、少々複雑な手続きが必要になります。具体的には、まず自分を筆頭者とする戸籍を作り、その上で、子どもの「氏の変更許可」を家庭裁判所に申し立てて変更許可を得ることになります。

最後に、市区町村の役所に、先の変更許可審判書と一緒に子どもの入籍届を提出し、ようやく自分の戸籍に子どもを入れることができるのです。

②子どもが離婚から300日を超えて生まれた場合の戸籍は

離婚から300日を超えて生まれた子供は、母親の戸籍に入ることになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

妊娠中に離婚し、その後子どもが生まれた場合に、養育費・姓・戸籍等、様々な場面で300日以内という時期が関わることに驚かれた方もいるのではないでしょうか。

妊娠中に離婚する場合は、夫婦関係の解消だけでなく、子どもの将来を考えて、様々な対応を考えておく必要があります。もし、さらなる疑問点がある場合は、慎重を期すためにも、まずは専門家に相談してみるとよいでしょう。

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