遺産相続問題はどの士業や専門家に相談するのか?ケースごとに解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
shutterstock_290950952

遺産相続の際には、いろいろな問題に対処する必要があります。

遺言書が出てきたらまずは検認をしなければなりませんし、遺産があったら相続人が集まって遺産分割協議をしないといけません。

不動産の相続登記も必要ですし、相続税が課税されるケースでは相続税の申告納税が必要です。

自分が遺産を残す立場の場合、遺言書を書きたいけれどどうして良いかわからないこともあるでしょう。

こういった遺産相続にまつわる悩みがあって自分では適切に対処できない場合、専門家に相談すると便利ですが、専門家にはいろいろな種類があるので、誰に何を相談して良いか判断できないことがあります。

そこで今回は、遺産相続問題を誰に相談すべきか、ケースごとに解説します。

1.遺言書を残したい場合

遺産相続に関わる問題として、まずは遺言書作成のケースです。
遺言書を残しておくと、死後の相続トラブルを効果的に避けることができます。

しかし、遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言などの種類があり、自分ではどの遺言方式を選択して良いかわからないことがあります。

また、公正証書遺言を作成するとしても、その手続きが分からないこともありますし、具体的にどのような内容の遺言書を作成して良いかわからないこともあるでしょう。

こういった遺言書にまつわる相談については弁護士に相談すると良いでしょう。

弁護士は法律のプロなので、遺言書の作成方法にも詳しいですし、将来トラブルが起こりにくい内容の遺言を考えてアドバイスをしてくれます。

弁護士に遺言書作成を依頼することもできますし、その場合、公正証書遺言を作成する際の申込や書類収集等のサポートもしてくれます。

2.遺言執行者を頼みたい場合

遺言をするときには、遺言執行者を定めておくと便利です。
遺言執行者とは、遺言書の内容を適切に実現すべき業務を行う人のことです。

たとえば、遺言によって特定の人への遺贈や相続の指定をしている場合、遺言執行者は受贈者や相続人に対して預貯金を渡したり、不動産の相続登記、寄付行為ができます。

また、認知や相続人の廃除や取消などの遺言執行者にしかできない業務もあり、これらを遺言によって行いたい場合には、遺言執行者を定めておかなければなりません。

遺言執行者は、遺言書によって指定することができますが、このとき、弁護士を指定しておくことをおすすめします。

遺言執行者を共同相続人から選ぶこともできますが、そうなると、相続人らの間で争いが起こることもあるので、公正な第三者的立場から手続きができる専門家を選んだ方が良いのです。

また、遺言執行の場面ではトラブルも起こりがちなので、専門家の中でもトラブル解決に慣れている弁護士が適任です。

以上のことから、遺言執行者を選任したい場合には、弁護士に相談することがおすすめです。

3.遺産分割協議を頼みたい場合

相続人らの間で遺産分割協議を行っているとき、お互いの意見が合わずにトラブルになることが多いです。

たとえば、不動産がある場合には誰が取得すべきかもめてしまうことが多いですし、誰が取得するかが決まっても、支払う代償金の金額が問題になることがあります。

被相続人の生前に高額な生前贈与を受けた相続人がいたら特別受益も問題になりますし、被相続人を介護してきた相続人がいれば寄与分も問題になります。

遺産分割協議がトラブルになってしまった場合には、弁護士に相談すべきです。

このようなとき、相続人の代理人となって遺産分割協議を進めることができる専門家は弁護士だけですし、弁護士が代理人なら遺産分割協議が整わず、家庭裁判所で遺産分割調停や審判が行われることになっても安心です。

また、遺産分割協議が整ったら、遺産分割協議書を作成してくれるので、その手間も省けます。

相続人同士がもめていても、双方が弁護士を立てて遺産分割協議を進めることにより、法的な観点から適切に話し合いをすすめて遺産分割協議をまとめることができるケースも多いです。

以上のようなことから、遺産分割協議を頼みたい場合には、弁護士が適任です。

4.遺産分割協議書を書いて欲しい場合

自分たちでもめることなく遺産分割協議を終えたけれども、遺産分割協議書の正しい作り方がわからない、ということがあります。

今はネットなどで情報が溢れていますが、それでも本当に合っているか自信がないので、専門家に頼みたいケースは多いです。

このように、遺産分割自体は整っているけれども、遺産分割協議書の作成だけを依頼したい場合には、行政書士が役立ちます。行政書士の場合、比較的安値で書面作成をしてくれます。

ただ、行政書士にはトラブル解決能力が無いので、行政書士に依頼する場合には、遺産分割の話合い事態は完全に決着がついていることが必要です。

また、遺産分割協議書の作成は、弁護士や司法書士でもしてくれるので、他の問題で弁護士や司法書士に相談しているなら、あえて行政書士に遺産分割協議書の作成だけを依頼する必要はありません。

5.相続放棄や限定承認したい場合

被相続人に借金などの負債があったようなケースでは、相続放棄や限定承認などの手続きをとる必要があります。

相続放棄とは、プラス分の資産もマイナス分の負債も一切合切を相続しないという相続の手続きであり、限定承認とは、遺産の内容を差し引きして、プラスになる場合にプラス部分だけを相続するという相続方法です。

これらの手続きをする際には、家庭裁判所に申述をする必要があります。

さほど難しくない手続きなので自分でもできますが、わからない場合には裁判手続きのプロである弁護士に相談すると良いでしょう。

相続放棄や限定承認には期限がありますが、弁護士に依頼したら、確実に期限内に相続放棄や限定承認の必要な手続きをすべて行ってくれるので、助かります(ただし、期限内に間に合うように早めに相談することが重要です)。

6.不動産登記をしたい場合

相続が起こった場合、遺産の中に不動産が含まれていることが多いですが、こういった場合には、不動産の相続登記をする必要があります。

不動産の相続登記とは、被相続人名義から相続人名義に不動産の名義を書き換えることです。

相続登記をする場合には、相続調査を行うための戸籍謄本類の収集を行い、相続人全員分の印鑑登録証明書などの必要書類を取得した上で、管轄の法務局に行って登記申請書を提出しなければなりません。

このような相続登記の手続きは自分ですることもできますが、かなり煩雑なので専門家に依頼した方が良いでしょう。

不動産登記のプロは司法書士なので、不動産の相続登記をしたい場合には司法書士に相談しましょう。

司法書士に依頼すると、めんどうな戸籍謄本類の収集や必要書類の作成、登記申請などをすべて代行してくれますし、無事に登記が完了したら、登記識別情報(権利証)を渡してくれます。

自分ではほとんど何もしなくて良いので、大変助かります。

7.相続調査をしたい場合

相続手続きを進める際、相続調査が必要になることがあります。

遺産分割協議の前提として相続人調査が必要になることもありますし、不動産登記や預貯金払い戻しのために相続人調査が必要になるケースもあります。

裁判手続きでも、やはり戸籍謄本類の収集が必要です。

このような戸籍謄本類の収集はとても面倒なので、相続人が自分でやりたくないと感じることが多く、専門家に依頼したいケースがあります。

この場合、たいていの専門家が相続調査を引き受けてくれるので、事案に応じて依頼することをおすすめします。

たとえば、遺産分割協議の方法を弁護士に相談しているなら、そのまま同じ弁護士に対して相続人調査を依頼すると良いでしょう。

不動産登記を司法書士に相談しているなら、そのまま司法書士に相続人調査を依頼すると良いですし、ついでに預貯金の払い戻し手続きなども依頼することも可能です。

特に現段階では誰のお世話になる予定もなく、遺産分割協議書だけ行政書士に依頼しようかな、と考えているような場合には、行政書士に戸籍謄本集めも依頼するなどの方法もあります。

相続調査のように、どのような専門家にでも依頼できる業務については、ケースに応じて依頼する人を選択することが重要です。

8.相続税の申告納税を頼みたい場合

相続が起こったときには、相続税の申告納税が必要になるケースがあります。

相続税には基礎控除があるので、基礎控除までの遺産額なら相続税は課税されませんが、それを超える評価額の遺産があると、相続税の支払いが必要になるからです。

相続税を計算するとき、特に遺産の中に不動産がある場合などには、評価方法が難しいことが多いです。

不動産評価にはいろいろな特例が認められているので、適切に特例を適用すると、かなり大幅に不動産の相続税評価を下げることができるので、相続税が減らせることもあります。

しかし、自分で相続税申告をすると、そのような評価減のことを知らないので、気づかないまま高額な相続税を支払うことにもなりがちです。

そこで、相続税の申告や納税をする際には、専門家に相談することをおすすめしますが、この場合に相談できる専門家は税理士です。

税金の申告業務は税理士の独占業務になっているので、他の士業に依頼することはできません。

税理士にも得意不得意があるので、相続税申告を相談する場合、できれば相続税についての問題を数多く取り扱っている税理士を探して相談すると良いでしょう。

9.生前贈与対策を相談したい場合

相続税を節税したい場合、生前贈与を利用する方法が役立ちます。

生前贈与をすると贈与税がかかってしまうのですが、贈与税にはいろいろな税金控除の制度があるので、それらを上手に利用すると効果的に贈与税を節税することができるからです。

ただ、素人ではどのような贈与税の特例制度を利用できるのかが分からないことが多いので、専門家に相談することをおすすめします。

このとき相談できる専門家は、税理士です。税理士は税金問題の専門家なので、効果的な生前贈与による贈与税節税方法にも詳しいからです。

そこで、生前贈与を利用した相続税対策を知りたい場合には、税理士に相談しましょう。

10.事業承継の相談をしたい場合

事業経営をしている場合には、事業承継の方法をどのように進めていったら良いのか迷うことが多いです。

事業承継する場合、会社内部の業務が滞留しないようにスムーズに進める必要がありますし、承継者が経営者の子どもの場合などには、承継者にならない他の子どもなどの相続人との間で争いが起こらないように遺産相続の方法についても注意しておく必要があります。

さらに、高額な相続税が課税されると負担が大きくなるので、相続税対策も必要です。
こういった事業承継の相談内容は、いくつかの士業にまたがることが多いです。

たとえば、遺言や相続トラブル対策については弁護士に相談すべきですし、相続税対策については税理士に相談すべきだからです。

そこで、事業承継をしたい場合には、まずは事業承継に積極的に取り組んでいる弁護士や税理士に相談してみて、そこから状況に応じて他士業にも相談の幅を広げることをおすすめします。

11.相続のワンストップサービスとは?

相続問題が起こるとき、いくつかの士業にまたがって問題が発生することが多いです。

前述したように、事業承継を行う場合には弁護士や税理士に相談しなければなりませんし、土地の相続があれば司法書士にもお世話になる必要があります。

事業承継の事例ではなくても、遺産分割協議を終えた後不動産の相続登記をして、相続税の申告納税をしたい、というパターンは珍しいものではありません。

このようなときには、まずは弁護士に遺産分割協議の相談をして、不動産登記手続きを司法書士に相談して、相続税の申告納税は税理士に相談する、という流れになります。

このように、個別の問題を別々の士業に相談依頼することは、非常に面倒で手間がかかりますので、一度でサービスを受けることができたら助かります。

この点、1人の専門家からすべてのサービスを受けることは難しいですが、士業同士が提携している場合にはワンストップサービスを受けることができます。

たとえば、相続問題に強い弁護士の場合、司法書士や税理士と提携していたり、同じ事務所内やフロア内に税理士や司法書士がいたりして、弁護士に依頼すると提携している士業によりワンストップサービスが受けられることがあります。

その場合、わざわざ自分で司法書士や税理士を探して相談依頼する必要がなくなり、とても助かります。

相続問題を依頼する場合には、他士業と提携していてワンストップサービスを受けられる弁護士などに相談することが、非常に役立つことがあります。

今後、相続問題を専門家に相談してみようと考えている方がいたら、是非とも参考にしてみて下さい。

まとめ

今回は、相続問題を相談する専門家の選び方について解説しました。

ひと言で相続問題とは言ってもその内容はさまざまです。
遺言書作成や遺産分割協議、相続放棄や相続調査、不動産登記、相続税の問題など様々です。

それぞれ相談できる専門家が違うので、ケースによって適切な専門家を選ばなければなりません。

ただ、各場面においていちいち別の専門家を探して依頼することは大変面倒で手間もかかるので、できれば相続問題のワンストップサービスを受けられると便利です。

最近の弁護士や税理士などは、他士業と提携していて、相続問題のワンストップサービスを提供している事務所が増えており、このような専門家を利用すると、個別に専門家を探して依頼する手間が省けて助かります。

今後相続問題を専門家に相談したいと考えている場合には、是非ともワンストップサービスを提供してくれる弁護士などを探してみることをおすすめします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

Twitter・RSSでもご購読できます。