自転車事故の慰謝料の相場と請求方法について

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現代社会で生活している以上、交通事故に遭うことを完全に避けることは出来ない。自分がどれだけ注意していても、相手方車両がぶつかってくることなどもある。

また、近年では自動車やバイクの交通事故だけでなく、自転車事故も大きな社会問題となっており、道路交通法も改正されて、自転車の運転に対する規制なども強まっている。

実際に、自転車事故によって高額な慰謝料が発生することもある。

ただ、自転車事故の場合の慰謝料の計算方法や請求方法などについては、自動車事故の場合と比べて一般によく知られていない。

そこで今回は、自転車事故の慰謝料について解説する。

目次

1、自転車事故の慰謝料も車の交通事故と同じ

2、自転車事故の慰謝料の種類は3つ

3、入通院慰謝料について

4、後遺障害慰謝料について

5、死亡慰謝料について

6、自転車事故の慰謝料の支払いが受けられない?

7、損害の計算や証明が難しくなることもある

8、過失相殺について

9、自転車保険への加入を検討する

1、自転車事故の慰謝料も車の交通事故と同じ

自転車は、非常に気軽に使える乗り物である。近くでも遠くでも気軽に乗っていくことができて、とても便利だ。子供でも高齢者でも、誰でも利用している。しかし、ふだん自転車に乗っている人でも、自転車事故についてさほど強く意識している人は少ないだろう。

自転車での交通事故(自転車事故)は意外と多い。自転車事故でも重傷を負うこともあるし、ときには死亡事故も起こる。自転車で相手方を転倒させて後遺障害が残った場合などには、相当高額な慰謝料の支払いが必要になることもある。

自転車での交通事故が起こった場合、慰謝料の計算方法や考え方は、どのようなものになっているのだろうか。

自転車事故の場合、自動車の交通事故とは違うのかについても知りたいところである。

この点、自転車による交通事故でも自動車やバイクの交通事故でも、慰謝料の考え方や計算方法そのものは変わらない。

自転車だから慰謝料が低くなるわけではないのである。よって、自転車事故の慰謝料を考える場合には、通常の自動車やバイクの交通事故の慰謝料の考え方を理解しておく必要がある。

2、自転車事故の慰謝料の種類は3つ

自転車事故の慰謝料も、通常の自動車の交通事故の慰謝料と同じになるということは理解できたが、それでは交通事故の慰謝料自体の考え方や計算方法は、具体的にどのようなものなのだろうか。

交通事故の慰謝料には、3種類がある。1つ目は入通院慰謝料、2つ目は後遺障害慰謝料、3つ目は死亡慰謝料である。

なお、交通事故の場合、物損には慰謝料は発生しない。どれほどの高級自転車であっても思い入れのある自転車であっても、自転車が壊れたこと自体については慰謝料請求することは出来ないので、注意する必要がある。

自転車事故の中でも人身損害が発生したケースにのみ、慰謝料が発生するのだ。

早速だが、自転車事故の慰謝料について、一つ一つ見ていくことにしよう。

1つ目の自転車事故の慰謝料である入通院慰謝料は、自転車事故によって傷害を負った被害者が治療のために入通院したことについての慰謝料である。2つ目の後遺障害慰謝料とは、自転車事故によって後遺障害が残った被害者に対すて支払われる慰謝料であり、3つ目の死亡慰謝料とは、自転車事故によって被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料のことである。

自転車事故の場合であっても、これらの慰謝料の種類や計算方法は自動車の交通事故の場合と変わらない。自転車事故だからと言って慰謝料の金額が減額されることはないので、たとえば重大な後遺障害が残った事故や、死亡事故の場合には数千万円以上の莫大な慰謝料が発生する可能性もある。

3、入通院慰謝料について

自転車事故の慰謝料の中でも、まず1つ目の入通院慰謝料とはいったいどのようなもので、どのように計算するのだろうか。

入通院慰謝料は、先ほどにも説明したとおり、自転車事故の被害者が傷害を負って病院などに入院や通院したことに対する慰謝料である。入通院の治療費(実費)とは別に支払われる。

入通院慰謝料の計算方法は、入通院にかかった日数によって異なる。交通事故の損害賠償額の計算基準には、いくつかの計算方法(基準)があるが、どの計算方法を使っても入通院にかかった日数が長くなればなるほど慰謝料の金額は高くなる。また、通院期間よりも入院期間の方が慰謝料の金額は高くなる。

たとえば裁判基準の計算方法を使った場合、入院1ヶ月通院1ヶ月の場合には入通院慰謝料は52万~77万円程度である。通院のみ2ヶ月なら慰謝料の金額は36万~72万円程度になる。通院6ヶ月なら慰謝料は89万~116万円程度、通院12ヶ月なら慰謝料は119万~154万円程度にもなる。

具体的には以下の表の通りだ。通常は以下の別表Iで計算することになる。むち打ちで他覚症状がないような場合には、別表Ⅱで計算することになる。

入院慰謝料

入院慰謝料2

自転車事故の場合には、軽傷であることも多く、入院はせず数日間通院するだけで済むこともある。このような場合には、入通院慰謝料の金額は1万~数万円程度になることが多いだろう。

このように、入通院慰謝料の金額は入通院日数がどれだけかかるかによって大きく異なる。

そして、その考え方は自転車事故でも同じであることを覚えておくと良いだろう。

4、後遺障害慰謝料について

次に、自転車事故の後遺障害慰謝料について見てみよう。後遺障害慰謝料とは、先にも説明したとおり、自転車事故によって被害者に後遺障害が残ったことに対する慰謝料である。

後遺障害とは、それ以上治療を続けても症状が改善しない状態(症状固定時)において、残った症状のことである。

後遺障害には、一般的に1級から14級の等級がある。1級が一番高い等級で、14級が一番低い等級である。

たとえば両目を失明したり、両手や両足を失った場合などは1級に認定される。自動車の交通事故でよくあるむち打ち症などは、一番軽い14級に分類される。

後遺障害慰謝料の金額は、もちろん1級が一番高額になる。後遺障害慰謝料の計算方法(基準)もいくつかあるが、裁判基準を採用した場合、1級の後遺障害慰謝料はだいたい2800万円程度である。これに対し、たとえば6級なら1180万円程度、14級なら110万円程度となっている。

具体的には以下の表の通りである。

後遺障害等級 後遺障害 自賠責基準 任意基準(推計) 裁判所基準
第1級 1.両眼が失明したもの 1,100万円 1,600万円 2,800万円
2.咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3.両上肢をひじ関節以上で失ったもの
4.両上肢の用を全廃したもの
5.両下肢をひざ関節以上で失ったもの
6.両下肢の用を全廃したもの
第2級 1.1眼が失明し,他眼の視力が0.02以下になったもの 958万円 1,300万円 2,370万円
2.両眼の視力が0.02以下になったもの
3.両上肢を手関節以上で失ったもの
4.両下肢を足関節以上で失ったもの
第3級 1.1眼が失明し,他眼の視力が0.06以下になったもの 829万円 1,100万円 1,990万円
2.咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの
4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの
5.両手の手指の全部を失ったもの
第4級 1.両眼の視力が0.06以下になったもの 712万円 9,00万円 1,670万円
2.咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3.両耳の聴力を全く失ったもの
4.1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5.1下肢をひざ関節以上で失ったもの
6.両手の手指の全部の用を廃したもの
7.両足をリスフラン関節以上で失ったもの
第5級 1.1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの 599万円 750万円 1,400万円
2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4.1上肢を手関節以上で失ったもの
5.1下肢を足関節以上で失ったもの
6.1上肢の用を全廃したもの
7.1下肢の用を全廃したもの
8.両足の足指の全部を失ったもの
第6級 1.両眼の視力が0.1以下になったもの 498万円 600万円 1,180万円
2.咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3.両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
4.1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5.脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6.1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
7.1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8.1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
第7級 1.1眼が失明し,他眼の視力が0.6以下になったもの 409万円 500万円 1,000万円
2.両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
3.1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
4.神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5.胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6.1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
7.1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8.1足をリスフラン関節以上で失ったもの
9.1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの
10.1下肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの
11.両足の足指の全部の用を廃したもの
12.女子の外貌に著しい醜状を残すもの
13.両側の睾丸を失ったもの
第8級 1.1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの 324万円 400万円 830万円
2.脊柱に運動障害を残すもの
3.1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
4.1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
5.1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
6.1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
7.1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
8.1上肢に偽関節を残すもの
9.1下肢に偽関節を残すもの
10.1足の足指の全部を失ったもの
第9級 1.両眼の視力が0.6以下になったもの 245万円 300万円 690万円
2.1眼の視力が0.06以下になったもの
3.両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5.鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの
6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7.両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
8.1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
9.1耳の聴力を全く失ったもの
10.神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11.胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12.1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
13.1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
14.1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
15.1足の足指の全部の用を廃したもの
16.生殖器に著しい障害を残すもの
第10級 1.1眼の視力が0.1以下になったもの 187万円 200万円 550万円
2.正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3.咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
4.14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
5.両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
6.1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
7.1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
8.1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
9.1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
10.1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
11.1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級 1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 135万円 150万円 420万円
2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3.1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4.10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
5.両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
6.1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7.脊柱に変形を残すもの
8.1手のひとさし指,なか指又はくすり指を失ったもの
9.1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
10.胸腹部臓器の機能に障害を残し,労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級 1.1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 93万円 100万円 290万円
2.1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3.7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
4.1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5.鎖骨,胸骨,ろく骨,けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6.1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7.1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8.長管骨に変形を残すもの
9.1手のこ指を失ったもの
10.1手のひとさし指,なか指又はくすり指の用を廃したもの
11.1足の第2の足指を失ったもの,第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12.1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13.局部に頑固な神経症状を残すもの
14.男子の外貌に著しい醜状を残すもの
15.女子の外貌に醜状を残すもの
第13級 1.1眼の視力が0.6以下になったもの 57万円 60万円 180万円
2.正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3.1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
4.両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5.5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
6.1手のこ指の用を廃したもの
7.1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
8.1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
9.1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
10.1足の第2の足指の用を廃したもの,第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
11.胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級 1.1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 32万円 40万円 110万円
2.3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
3.1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4.上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5.下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6.1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
7.1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
8.1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
9.局部に神経症状を残すもの
10.男子の外貌に醜状を残すもの

このように、後遺障害慰謝料の金額は、残った後遺障害の内容によって大きく異なる。よって、後遺障害慰謝料を決定するには、どのような後遺障害、どの程度の後遺障害が残ったかが大変重要になってくる。

また、後遺障害慰謝料は、当然後遺障害が残った場合にしか発生しない。自転車事故で軽傷の場合などには後遺障害が残らないケースも多く、そのような場合には後遺障害慰謝料は発生しないことにも注意が必要である。

そして、このことは、自動車の交通事故でも自転車の交通事故でも変わることはない。

5、死亡慰謝料について

自転車事故の慰謝料の種類には、死亡慰謝料もある。死亡慰謝料とは、先ほども説明したとおり自転車事故で被害者が死亡した場合に発生する慰謝料のことである。

当然のことであるが、死亡慰謝料の金額は高額になる。死亡慰謝料の計算方法についてもいくつか基準があるが、裁判基準(弁護士基準)を用いると、一家の大黒柱の人が死亡した場合には死亡慰謝料の金額は2800万円から3600万円程度、母親や配偶者の場合には2000万円から3200万円程度、子どもの場合には1800万円から2600万円程度となっており、死亡者がどのような人であったかによって金額が異なってくる面もある。

自転車事故によって被害者が死亡した場合にも、これらの死亡慰謝料の支払いが必要になる。計算方法は自動車事故の場合と変わらないので、ケースによっては非常に高額な慰謝料支払いが必要になる可能性もあることには注意が必要である。

6、自転車事故の慰謝料の支払いが受けられない?

自転車事故の慰謝料の計算方法や考え方も、基本的に自動車事故の慰謝料の計算方法や金額と変わらないことは理解できた。ただ、自転車事故の慰謝料を考える際に、自動車事故とは異なり注意しなければならない問題がある。

それは、自転車事故の場合には、自動車やバイクの事故の場合と異なり自賠責保険がなく、しかも任意保険にも加入していない人が多いと言うことである。

自動車を運転する場合には、法律によって自賠責(自動車損害賠償責任保険)への加入が義務づけられている。自賠責とは、交通事故の被害者に最低限の損害賠償を補償するための保険である。よって、自動車事故の交通事故にあった場合には、最低限自賠責保険からの賠償は受けられることになる。この場合、裁判基準よりも低い自賠責基準になるが、治療費などもまかなえるし、最低限の慰謝料も支払われるのである。自動車を運転する際には任意保険に加入していることも普通であるが、自動車事故の相手方が任意保険に加入している場合には、自賠責からの支払いでは足りない損害について、任意保険会社に支払いを求めることが出来る。この方法によって、交通事故の被害者は全額の交通事故慰謝料の支払いを受けることが出来るのである。

しかし、このように各種の保険で保障されている自動車事故の事案に対して、自転車事故の場合には、運転者が自賠責にも任意保険にも加入していないことが多い。自転車の場合には自賠責はないし、任意保険に加入している人の数もまだまだ少ないからである。

すると、自動車事故で、相手方無保険の車と交通事故を起こした場合と同じような結果になってくる。

具体的にどのようなことになるかというと、被害者は最低限の自賠責保険からの賠償も受けられないし、もちろん任意保険会社からの支払いも受けられないことになってしまう。

賠償金は、事故の相手方個人に請求するしかないのである。この場合、自転車事故の相手方が話のわかる人で、すんなり示談が出来る場合や、相手方に資力があってスムーズに支払いが受けられれば良いが、実際にはそのようなケースは少ない。

たとえば、自転車事故のうちでも軽傷や物損のみの事案で、数千円、数万円程度の支払いで済む場合には相手方と直接交渉して支払いを受けることも出来るだろう。これに対して、重大な後遺障害が残ったり死亡事故が起こって、数千万円を超える慰謝料が発生した自転車事故の場合などには、当然慰謝料の支払いが出来ない人が多くなってくる。自動車事故の場合であれば、保険会社から確実に支払いが受けられるが、自転車事故で保険に加入していないケースでは、個人から数千万円もの慰謝料を取り立てるのは困難になるのである。

たとえ裁判をしても、資力のない者から取り立てることは難しいので、結局被害者は慰謝料の支払いを受けられないままになってしまう可能性が高いのである。

このように、自転車事故の場合には、たとえ慰謝料が発生したとしても、相手方から慰謝料の支払いを受けられなくなる可能性が高まるということに注意が必要である。

7、損害の計算や証明が難しくなることもある

自転車事故の場合の慰謝料について、もう一つ自動車事故とは異なる注意点がある。

それは、自転車事故の場合には、損害賠償額の計算や証明が難しくなることがあることである。

たとえば自動車事故の場合には、自賠責や任意保険会社が対応するので、それなりに法律や損害賠償の計算方法に詳しい人(保険会社の従業員や専門家など)が担当して、正確に損害を認定したり計算することが出来る。損害賠償の示談交渉においても、法律や計算方法を熟知している人が行うので、無駄な争点でもめてトラブルになったりすることもない。

後遺障害の等級認定も、自賠責で行えるので、スムーズに手続きをすすめることが出来る。

しかし、これに対して自転車事故の場合にはそうはいかない。保険会社が関与しない以上、すべて事故の当事者である個人が対応しなければならない。

また、自動車損害賠償責任保険会社のように、事故状況や治療経過などをきちんと調査出来る環境にないので、実際の事故状況や治療経過について当事者間に争いがあっても、それを証明することが出来ない。そうなると、話し合いを続けても妥協点を見いだすことが難しくなる。

結局、自転車事故の場合には、自賠責や任意保険会社が関与せず、すべて当事者である個人どうしが自分で示談交渉をしなければならないことによってこれらの問題が起こってくる。

そして、素人が自分たちで損害賠償計算をして示談交渉するとなると、そもそも交通事故の損害賠償の計算方法からしてわからず、何をどのように請求して良いのか見当もつかないことが多い。

後遺障害の認定をしてくれる機関がないので、実際に後遺障害が発生しているのかや、発生しているとしても何級になるのかなどについても判断出来ないことになる。

さらに、事故の当事者同士が自分で対処することによって、感情的になってしまい、争点が多岐に及んで肝心の慰謝料などの損害賠償の話し合いが全く進まないこともある。

このように、自転車事故の場合には、素人の当事者が自分たちで話し合いをすすめるために、損害の計算や交渉が非常に困難になる可能性が高いという問題がある。

以上のように、自転車事故の場合には、保険会社の関与がないので、後遺障害の認定方法や損害の内容の証明、示談交渉の進め方においても困難を伴うことが多いことにも注意が必要である。

8、過失相殺について

自転車事故の慰謝料については、過失相殺の問題も重要である。

過失相殺とは、その交通事故の過失の度合いによって、損害賠償額を減額することである。自転車事故の場合であっても、どちらかが100%悪いということは通常少ないので、それぞれの過失割合を決定する必要がある。

過失相殺が行われると、その分請求出来る慰謝料の金額が減額されるので、どのような割合で過失相殺するかは重要である。

この点、自動車事故の場合には過失割合は、ケース別に細かく場合分けされていて、どのようなケースにだいたいどのくらいの過失割合になるかが予め定められている。

実際に事故が起こった場合には、この考え方に従ってあてはめてみれば、当該事故の場合にどのくらいの過失割合になるかがだいたいわかるのである。

しかし、自転車事故の場合には、過失割合に就いての考え方が固まっている状況ではない。どのようなケースでどのくらいの過失割合になるかということが綿密に決められておらず、個々のケースに応じて対応し、決定する必要性が出てくる。

このような過失割合の決定は、専門家でも難しいことがあるだろう。ましてや素人である個人同士が対応しなければならないことの多い自転車事故の場合には、なおさら過失割合の決定が困難になりがちだということは言うまでもない。

このように、自転車事故の場合には、そもそもケース別の過失割合の考え方についてはっきりとした定めがない上に、当事者どうしが自分たちで話し合ってこれを決めなければならないので、慰謝料支払いについての示談交渉が困難になることに注意が必要である。

9、自転車保険への加入を検討する

以上のように、自転車事故の場合には、自賠責保険や任意保険が対応しないため、素人である事故当事者が自分で対応せざるを得ない。このことが原因で、慰謝料請求においてもさまざまな困難をきたすおそれが高い。

また、自分が慰謝料を支払う側になった場合にも、保険がないと言うことは大変なことである。ときには数千万円にも及ぶ慰謝料の金額を、全額自己負担で支払わなければならないことになってしまう。支払いが出来ないなら、被害者から裁判をされて、預貯金や給料などから取り立てをされても文句は言えないのである。

このような自転車事故のリスクを可能な限り抑えるには、自転車保険への加入を検討することである。

自転車事故で対人賠償で限度額を無制限にしておけば、相手方への損害賠償や慰謝料の支払いについては保険会社が負担してくれる。また、損害賠償の計算方法や示談交渉においても、保険会社に入っていれば相手方と直接対峙せずに済むし、専門家が損害を計算してくれるので、損害賠償の計算方法がわからないなどということにもならない。

このように、自転車を運転する場合にも自転車保険に加入しておくことは重要である。

自転車事故の慰謝料問題のリスクを避けたいなら、保険会社への加入はほぼ必須と言えるだろう。

まとめ

今回は、自転車事故の慰謝料について特集した。

自転車事故の慰謝料も、その計算方法や考え方自体は通常の自動車事故やバイク事故の事案と変わらない。慰謝料の種類も同じであり、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、死亡慰謝料がある。慰謝料の金額も、自転車事故だからと言って減額されることはなく、ときには数千万円の支払いになることもある。

ただし、自転車事故ならではの注意点もある。自転車事故の場合には、自賠責保険がないので、最低限の賠償金の支払いすら受けられないことがある。また、任意保険にも加入していないことが多いので、慰謝料が発生しても、相手方に資力が無ければ支払いを受けることが困難になる。事故の当事者が素人どうしで示談交渉しなければならないので、示談交渉がスムーズにすすまず、後遺障害の認定や事故状況、治療経過などの証明などにも困難を伴う。過失割合の決定方法も確立されていないので問題になる可能性が高い。

このように、自転車事故の慰謝料には自動車事故にはない問題が多数含まれている。

自転車事故での慰謝料のリスクを最小限におさえるには、まずは自転車の保険に加入しておくことが最善の方法である。

自転車に乗ることがある方におかれては、是非とも参考にされたい。

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